2026年6月2日、SEC(米証券取引委員会)は 2026年度から2030年度までの戦略計画案を公表した。この計画では、ポール・S・アトキンス委員長の下で進められる大規模な規制改革の中心に、デジタル資産が位置付けられている。
この計画案は、2026年7月2日まで一般からの意見(パブリックコメント)を募集しており、SECによれば、同機関を本来の3つの中核的使命へと立ち返らせるための方向性を示すものになるという。その3つの使命とは、投資家の保護、公正かつ効率的な市場の維持、資本形成の促進だ。
アトキンス委員長は、今回の発表について「SECにとって新たな時代の幕開け」と表現し、過去数年間における規制当局の「行き過ぎた介入」とみなしているものを是正することを目的としていると説明した。
この計画は、イノベーションと資本形成を支援するための規制政策の刷新、規制当局による拡張的解釈や積極的介入ではなく、すでに確立された法的違反への対応に執行活動の重点を移すこと、テクノロジーの活用と組織改革を通じて組織内部の運営を最適化すること、という3つの目標を柱として構成されている。
さらにアトキンス委員長は、SECは1934年の証券取引法で議会が定めた本来の責務から「けっして逸脱することはない」と述べた。
JUST IN: 🇺🇸 SEC highlights digital assets in its “Strategic Plan” for the next 5 years 👀
“crypto asset technologies have the potential to revolutionize America’s financial infrastructure” 🐂 pic.twitter.com/K7JVhzaHjl
— Bitcoin Magazine (@BitcoinMagazine) June 3, 2026
SECが暗号資産に言及
おそらくこの計画のなかでもっとも重要な部分は、ブロックチェーンおよび暗号資産の取り扱いに関する内容だろう。文書には「暗号資産技術は、アメリカの金融インフラに革命をもたらし、新たな選択肢、効率性の向上、コスト削減、透明性の向上、リスク軽減を実現することで、すべてのアメリカ国民に利益をもたらす可能性を秘めている」と記されている。
SECはこれを注意喚起や留保事項としてではなく、イノベーターに法的確実性を提供しながら投資家保護を維持する、より明確で一貫性のある規制枠組みを構築するための根拠として位置付けている。
計画の目標1.1では、SECが「合理的で、一貫性があり、原則に基づいたアプローチを通じて、デジタル資産および分散型台帳技術(DLT)のための確固たる規制基盤を提供する」ことを求めている。
これには、デジタル資産に適用される証券法の範囲を明確化すること、トークン化された資産の発行を通じて法令に準拠した資金調達を可能にすること、文書中で「オンチェーン金融インフラ」と称された仕組みをサポートすることが含まれる。
また、この計画では、SECと米商品先物取引委員会(CFTC)の間で問題となってきた管轄権の重複についても解決へ向けた方針が示されている。この問題は暗号資産業界にとって長年にわたる争点のひとつだった。
デジタル資産以外の分野では、この計画は、中小企業や創業初期にある企業の資金調達を妨げる障壁の排除にも焦点を当てている。具体的には、「Regulation A」の近代化、シェルフ登録手続きの簡素化、情報開示要件の複雑さの軽減などが提案されている。これにより、起業家が公開市場と未公開市場の双方から、より少ない規制上の障害で資金調達できるようにすることを目指している。
執行に関しては、SECは、近年とりわけ暗号資産企業に対してとられてきたと批判されている、いわゆる「執行による規制」から方針転換する姿勢を示している。
この新たな計画では、SECの職員に対して「詐欺および不正な市場操作」への対応に重点を置くよう指示している。そして、規制当局の権限を場当たり的な措置によって拡大するのではなく、執行活動の成功は、訴訟件数や制裁金総額の多さではなく、抑止効果と市場の透明性によって評価されるべきだと明記している。
技術刷新を視野に
計画の3つ目の目標はSECの内部運営に関するもので、数十年前から使用されてきたEDGARファイリングシステム(上場企業や投資ファンドなどが提出する財務報告書や各種開示資料を管理・公開する電子開示システム)の近代化と、機関全体にわたる人工知能(AI)の導入に重点を置いている。文書では、AIとブロックチェーンが「監督機能を改善し、コストを削減し、SEC内部における新たな効率性の向上を実現する可能性がある」と指摘している。
SECは年間約207兆ドルにのぼる米国株式取引を監督しており、さらにEDGARシステム上には約19テラバイトの開示データを保管している。計画案はこうしたシステムについて、「大幅なアップグレードが必要である」と認めている。