11月4日(米国時間)、ストラテジー社の変動金利型永久優先株式「Stretch(STRC)」は、5月以来となる100ドルに達し、額面価格を回復した。同社はこの額面価格を維持するために、20億ドルを超える自社株買いと、5カ月にわたる配当利回りの引き上げを行なってきた。
6月、STRCは一時80ドルを下回り、ターゲットとなる額面価格を大幅に割り込んでいた。100ドルへの回復によって、ストラテジーが新株発行を再開すると表明していた株価水準に戻ったことになる。同社にとって、この新株発行の仕組みが、ビットコイン購入資金を調達する手段となっている。マイケル・セイラー会長は、株価を100ドル以上に維持すること、その価格水準に戻るまでは配当率を12%に据え置くことを約束していた。
この1週間で、ふたつの変更が実施された。10月28日、ストラテジーの株主はSTRCおよびほか3種類の優先株式について、99.3%の賛成票によって日次配当を承認した。これによって、株価の変動要因となっていた月2回の配当落ちによる価格下落が解消された。
最初の日次配当は11月2日に支払われた。また、ストラテジーが10月29日に提出した届出書によると、11月の配当率を年率換算で12%、つまり一株当たり月額1ドルに設定している。
11月4日、ビットコイン価格が8万ドルを突破したことを受け、ストラテジー(MSTR)の株価も7%を超える上昇となった。
Stretch (STRC)とは、 何か? なぜ、 価格が 下落したのか?
Stretchは「変動金利型シリーズA永久ストレッチ優先株式」の名称で、2025年7月に当初配当率9%、発行価格90ドルで上場した。セイラー氏はこの優先株式を、同社の「iPhone誕生のような画期的瞬間」と呼んだ。その仕組みは、フィードバック・ループ(循環的な調整メカニズム)になっている。ストラテジーは株価を100ドル近辺に維持するために、毎月配当率を調整し、株価が額面価格を上回れば新株を発行し、その調達資金でビットコインを購入する。
Stretchは世界最大の取引可能な優先株式となり、時価総額は80億ドルを超えた。ストラテジーのCEOであるフォン・リー氏によれば、保有者の約80%は個人投資家だという。
しかし、2026年に入ってこの循環的な仕組みが機能しなくなった。STRCは1月下旬に額面価格を下回る水準で推移し始め、ストラテジーは2月に配当率を11.25%、3月に11.5%、そして夏までに12%へと引き上げた。それでも、ビットコイン価格が6万5000ドル近辺まで下落するなか、STRCの株価は下落を続けた。株価が89ドルまで下がったことで、ATM(市場価格連動型の新株発行)プログラムは停止状態となり、同社にとってもっとも低コストの資金調達手段が絶たれることとなった。
5月下旬には、ストラテジーはStretchの配当支払いを賄うため、約250万ドル相当の32 BTCを売却した。これは、同社にとって2022年以来初のビットコイン売却だった。この出来事を受けて、一部の批判者から「死のスパイラル」に陥る可能性が指摘されたが、BenchmarkとTD Cowenのアナリストたちはこの見方に対して異議を唱えた。
この状況を打開するために採られたのが、自社株買いだった。ストラテジーは10月19日の週にビットコインの購入を一時停止し、STRCの買い戻しだけで2億490万ドルを投じた。これは、株価のディスカウントが始まって以来、同社が買い戻した約22億5000万ドル相当の株式の一部に当たる。
100ドルを下回る価格で一株を買い戻すたびに、市場に流通する株式数が減少すると同時に、配当金の支払総額も減少した。
トレジャリーを 支える 余裕は わずか
今回の回復が重要なのは、その背後にある財務状況を考えれば明らかだ。先週、ストラテジーは811 BTCを追加購入し、現在84万9327 BTCを保有している。平均取得価格は約7万5446ドルだ。11月4日時点でビットコイン価格が7万8300ドル近辺にあることから、この保有ポジションは取得原価を約4%上回っている。
ストラテジーは第3四半期の営業利益として209億1000万ドルを計上したと発表したが、そのほぼすべてが未実現利益によるものだった。一方で、年初来のBTCイールドはマイナスとなっており、CFOも退任を控えている。
優先株式の積み上がりは、いずれにしても支払期限が到来する債務となっている。STRC、STRF、STRK、STRDという4種類の優先株式が抱える年間配当金の総額は数億ドルにのぼる。また、今四半期に売却された5552 BTCの売却益は、これらの配当金と自社株買いの資金に充てられた。Stretchの株価が額面価格にあれば、ストラテジーはビットコインを売却することなく、新規優先株式の発行によって、こうした債務を支払うことができる。しかし、Stretchの株価が89ドルでは、それは叶わない。
今後の焦点は、同社が100ドルでATMプログラムを再開するかどうか、そして、市場の買い手がその新株を吸収できるかどうかだ。





