11月4日(米国時間)、米国の大手上場ビットコイン・マイニング企業2社が第3四半期決算を発表した。両社ともこの機会に、自ら蓄積するために築いてきた資産であるビットコインを売却していることを改めて明らかにした。
Riot Platforms社(RIOT)は今年に入って、2万264 BTCを約15億ドルで売却し、Hut 8社(HUT)は7月以降、自社株買いに充てる2億5000万ドルを調達するために3102 BTCを売却した。
ビットコイン売却の目的は両社で異なる。Riotは売却益をデータセンターの建設費用に充てる一方、Hut 8は自社株買いを行なっている。Riotは9月末時点で2418 BTCを保有しており、四半期末の価格である1 BTC当たり8万3554ドルで換算すると、その価値は約2億200万ドルに相当する。同社は年初時点では1万8005 BTCを保有していた。
Hut 8は9月末時点で、親会社と、過半数株式を保有する子会社のAmerican Bitcoin社を合わせて約1万6787 BTCを保有していたと報告。その価値は約14億ドルで、うち6億9740万ドル相当がHut 8自身に帰属するものだった。その後10月に実施した売却によって、親会社の持ち分は減少した。
Riot:ビットコイン保有資産を 建設予算に 転換
Riotのビットコイン売却は、今年を通じて着実に続いている。同社は第1四半期に3778 BTCを販売した。これは同四半期のマイニング量の約2.5倍に相当する。その後、第2四半期には4300 BTC、第3四半期にはさらに1万2186 BTCを売却。売却益は、データセンター関連の建設工事と、2億ドルのCoinbase信用枠の全額返済に充てられた。この返済によって、担保として差し入れていたビットコインはすべて返還された。同社は2026年に株式による資金調達を行なっていない。
今回の決算発表で、その売却の理由が明らかになった。Riotは、テキサス州コーシカナにある同社のキャンパス全体について、「Frontier AI Lab」という匿名企業と15年間のトリプルネットリース契約を締結した。対象となるのは、重要なIT設備の容量が910 MWに及ぶ施設で、当初契約期間における契約価値は約280億ドル、年間平均賃料は18億ドルとなる。
AMD(Advanced Micro Devices)社との契約、および同社と以前に締結したロックデールのインフラと電力リース契約を合わせると、Riotが発電設備のリース契約を結んだ容量は約1151 MW、契約総額は約380億ドルに達する。Riotの発表によると、CEOのジェイソン・レス氏は、設備がフル稼働した場合の年間純営業利益は20億ドルを超えるとの見通しを示している。
この契約構造によって、Riotの資金負担は抑えられている。設備投資額は1 MW当たり約600万ドルで、一般的なTier 3データセンター建設費の半分程度に相当する。このうちRiotが負担するのは、敷地造成や電力インフラ整備のための200万ドルで、残りはテナント側がカバーする。なお、このテナント負担分は、各フェーズの引き渡しが完了した後に、ノンリコース(遡及請求権を伴わない)・プロジェクトローンによって返済される仕組みとなっている。施設の引き渡しは、2027年9月から2028年7月にかけて行なわれる予定だ。
その一方で、マイニング事業も継続している。Riotは第3四半期に1637 BTCをマイニングし、減価償却前の平均コストは1 BTC当たり3万9265ドルだった。しかし、ビットコインの平均価格が前年同期の11万4361ドルから7万855ドルに下落したため、マイニング収益は28%減の1億1600万ドルとなった。
総収益は前年同期とほぼ同水準の1億8140万ドルだった。データセンター事業とエンジニアリング事業の収益が、マイニング収益の減少分を補ったかたちだ。
Hut 8:ビットコインを 売却し、 自社株を 買い戻す
Hut 8によるビットコインの売却資金は、外部委託先(コントラクター)ではなく、株主へと還元された。同社は第3四半期中に約954 BTCを7480万ドルで売却、さらに10月には約2148 BTCを1億7540万ドルで売却した。これらの売却で得た総額2億5000万ドルを投じて、330万株の自社株買いを行なった。
11月2日、Hut 8の取締役会は自社株買いの承認枠を10億ドルに引き上げた。CEOのアッシャー・ジェヌート氏は株主について、「当社のバランスシート上のビットコインを資金源とする自社株買いによって、成長を続けるプラットフォームに対する保有比率がいまや高まっている」と述べた。
同社によると、データセンター事業の資金調達に、こうしたビットコインの財務資産を充てる必要はないという。Hut 8は10億7000万ドルの優先担保付きリボルビング信用枠を確保している。これは四半期末時点では未使用だった。また、同社の二大フラッグシップ・AIデータセンター・キャンパスであるRiver BendとBeacon Pointについては、親会社による株式出資や遡及請求権付きの借入を必要とせず、プロジェクト単位で資金調達できると見込んでいる。
Beacon Pointのテナントは、2件目となる352 MWのリース契約を締結し、契約容量を2倍に拡大した。これにより、同キャンパス全体の契約総額は約196億ドル、同社の全施設を合わせた契約総額は266億ドルに達した。
Hut 8はまた、米連邦倒産法第11章(Chapter 11)に基づく手続きを経て、最大230 MWの電力供給能力をもつテキサス州西部の通電済み施設2カ所を、最大1億8000万ドルで買収することにも合意した。
第3四半期の純利益1億8950万ドルは、主としてデジタル資産の評価益4億1380万ドル(そのほとんどは未実現利益)に支えられていた。従来型のクラウド事業を売却し、マイニング事業をAmerican Bitcoin社へ移管したことで、売上高は前年同期の8350万ドルから7110万ドルに減少した。 American Bitcoinはトランプ・ファミリーが後ろ盾となっている事業で、Hut 8が過半数の株式を保有している。なお、ビットコインの時価評価損益を除外した調整後EBITDAは3300万ドルだった。
本稿執筆時点で、Hut 8の株価は17%急落した一方、Riotの株価は約13%上昇した。


