ウォール街の巨人が、ついに「傍観者」であることをやめた。
米金融大手モルガン・スタンレーが米国証券取引委員会(SEC)に対し、現物ビットコインETF(上場投資信託)の承認を求めて申請を行った。この動きが画期的なのは、これが単なる仲介業務ではなく、米銀大手がついに「自社商品」としてETF組成に踏み切った事実にある。
「Morgan Stanley Bitcoin Trust」と名付けられたこのファンドは、先物やデリバティブ商品による間接的なエクスポージャーには頼らない。信託報酬控除後のビットコイン価格に完全連動する設計であり、現物を直接保有することで純粋な価値を追う。
資産運用会社から「銀行」へ広がる波
この動きにより、モルガン・スタンレーはブラックロックやフィデリティといった資産運用大手の列に加わることになる。2024年初頭の承認以降、現物ETF市場は爆発的な成長を遂げ、その運用資産残高は今や1,200億ドル(約18兆円)を突破。ビットコインの時価総額全体においても、無視できない巨大なプレゼンスを放つに至った。
これまで米銀大手は、規制の不透明さや厳格なリスク管理を盾に、暗号資産への関与をカストディ(保管)やブローカレッジ(仲介)業務に限定してきた。だが、潮目は明らかに変わりつつある。
連邦政府機関によるデジタル資産への関与に関する指針が明確化されたことで、その堅牢な扉が開かれようとしているのだ。昨年12月には通貨監督庁(OCC)が銀行による暗号資産取引の仲介を事実上容認する姿勢を示し、SECも上場基準の調整を進めている。伝統的金融(TradFi)とデジタル市場を隔てていた「壁」は、今や崩れ去る寸前だ。
手数料ビジネスの「内製化」
提案された信託は、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントがスポンサーとなり運用を担う。基準価額(NAV)は主要な現物取引所の動向に基づき毎日算出され、機関投資家などの指定参加者(AP)による大口の現金または現物での設定・償還に対応する。
モルガン・スタンレーにとって、これは極めて合理的なビジネス判断だ。同社は昨年10月、ウェルスマネジメント部門において全顧客に対し暗号資産投資へのアクセスを解禁している。しかし、他社商品を右から左へ流すだけでは、莫大な信託報酬をみすみす競合他社(ブラックロックら)へ献上することになる。
自社ブランドのETFを提供し、顧客ポートフォリオに直接組み込むことができれば、その手数料収益をグループ内に留保できる。ブラックロックのビットコインETF(IBIT)が、初年度にして同社のトップ収益源の一つへと成長した事実は、銀行界の競争意識を刺激するには十分すぎたのだろう。
揺るがない「王座」
なお、同社はソラナ(Solana)に関連するファンドの申請書類も提出しているが、機関投資家の需要の核心がビットコインにあることは疑いようがない。
米国の暗号資産ETF市場において、資金の大部分は依然としてビットコイン製品に集中しており、他のトークンに連動するファンドへの流入は限定的だ。多様なアルトコインが市場に溢れようとも、機関投資家が見据える「本命」は、いつだってビットコインなのだ。
