ビットコインの機関保有は過去1年で急増しており、すでに総供給量の約8%が主要な組織の手中にある。そして、その割合はいまもなお増え続けている。ETF(上場投資信託)や上場企業、さらに国家までが、ビットコインの大規模なポジションを確保し始めている。この状況は投資家に重要な問いを投げかける。機関による存在感の拡大は、ビットコインにとってよいことなのだろうか? そして、より多くのBTCが、コールドウォレット、企業の財務資産、ETFにロックアップされるにつれ、オンチェーンデータ(ブロックチェーン上で確認できる取引情報)の信頼性は失われてゆくのだろうか? この分析では、実際の数値を掘り下げて資本の流れをたどりながら、ビットコインの分散型という理念が本当に脅かされているのか、それとも単に進化しているだけなのかを探ってゆく。
新しいクジラ
まずは、上場企業の財務資産テーブルからみてみよう。ストラテジー社やメタプラネット社などを含む主要企業は計70万BTC以上を蓄積している。ビットコインの総供給量が2100万枚にハードキャップ(上限設定)されていることを踏まえると、これは将来存在しうる全BTCの約3.33%に相当する。供給上限に到達するのはわれわれの生きている間ではないが、その意味するところは明白だ。機関投資家たちは長期的な賭けに出ているのだ。

企業による直接保有に加えて、EFT累積フロー(BTC)チャートからもわかるように、現在ETFも市場のかなりの割合を掌握している。本稿の執筆時点において、ビットコイン現物ETFは約96万5000 BTCを保有しており、総供給量の5%弱に相当する。この数字は多少の変動はあるものの、日々の市場動向に依然として大きな影響力をもっている。
企業の財務資産とETF保有分を合算すると、その数は167万BTC以上に上り、理論上の総供給量のおよそ8%に達する。しかし、話はこれだけでは終わらない。

ウォール街やシリコンバレーを越えて、一部の政府もいまやビットコインの領域に積極的に参入している。戦略的ビットコイン準備金のような取り組みを通じて、国家レベルで購入・保有されているビットコインは、合計で約54万2000 BTCに達している。これを先述の機関・ETF保有分に加えると、機関、ETF、政府が保有するビットコインの総量は220万BTC超になる。計算上の数字では、これは総供給量2100万BTCのおよそ10.14%に相当する。
忘れられたサトシと失われた供給量
とはいえ、2100万BTCのすべてが実際にアクセス可能なわけではない。「10年以上HODLウェーブ」データ(10年以上移動していないコインの割合を示す指標)に基づく推計によると、事実上340万BTC以上が永久に失われた可能性が高いとされている。これには、サトシ・ナカモトのウォレット、初期マイニング時代に生成されたコイン、忘れられた秘密フレーズ、そして埋め立て地に捨てられたUSBメモリなどが含まれる。

現在約1980万BTCが流通しており、そのうち約17.15%が失われたと推定すると、実質的な供給量はおよそ1645万BTCとなる。これを前提にすると計算式は大きく変わる。より現実的な供給量を基準にすると、機関によって保有されているBTCの割合は約13.44%にまで上昇する。つまり、市場に流通しているBTCの約7.4枚に1枚は、すでに機関、ETF、あるいは国家にロックアップされていることになる。
機関はビットコインを支配しているのか?
では、ビットコインは企業に支配されつつあるのだろうか? 現時点ではそうとは言えない。
しかし、特に価格変動において機関の影響力が増していることは明らかだ。S&P500とビットコインの相関チャート(S&P 500 vs Bitcoin Correlation)をみると、ビットコインとS&P500やナスダックのような伝統的な株式指数との相関性が顕著に強まっていることがわかる。大規模な組織の市場参入によって、ビットコインは「リスクオン資産(リスクを取ってリターンを狙う局面で買われる資産)」としてみなされる傾向が強まっており、従来型市場の投資家心理と連動して価格が上下しやすくなっている。

強気相場においては、これはプラスに働く可能性がある。世界的な流動性が拡大し、リスク資産が好調なとき、年金基金、ヘッジファンド、政府系ファンドがポートフォリオのごく一部をビットコインに割り当てるだけでも、かつてないほど大きな資金流入が期待できるようになった。しかし、それにはトレードオフも存在する。機関による採用が進めば進むほど、ビットコインはマクロ経済の動向により敏感になっていく。中央銀行の政策、債券利回り、株式市場のボラティリティなどが、これまで以上にビットコイン価格に影響を与えるようになる。
こうした変化がありながらも、ビットコインの85%以上は機関の手に渡っていない。個人投資家が依然として供給量の圧倒的多数を保有している。また、ETFや企業の財務が多額のビットコインをコールドウォレットに保管しているとはいえ、市場全体は広範に分散された状態を保っている。批判的な声のなかには、オンチェーンデータの有用性が低下しているという意見もある。なぜなら、これほど多くのBTCがETFや休眠ウォレットにロックされているのであれば、ウォレットアクティビティから正確な結論を導き出すことができるのか疑問だというのだ。この懸念は理解できるが、新しい問題ではない。
適応の必要性
歴史的にみても、ビットコインの取引活動の多くはオンチェーンではなく、Coinbase(コインベース)やBinance(バイナンス)、かつて存在したFTXのような中央集権型取引所で行なわれてきた。これらの取引はオンチェーン上に明確なかたちで現れることはほとんどなかったが、それでも価格や市場構造に大きな影響を与えていた。今日、われわれは同様の状況に直面しているが、当時よりも優れた分析ツールを手にしている。ETFの資金フロー、企業の財務報告書、国家による購入履歴は、開示規制の対象となっており、あやしい取引所と違って、これらの機関投資家は自らの保有状況を公表する義務があるため、アナリストたちは豊富なデータをもとに動向を追跡できる。
さらに、オンチェーン分析は静的なものではない。MVRV-Zスコア(時価総額と実現時価総額の乖離度を測る指標)のようなツールも進化している。例えば、完全な歴史的データではなく、直近2年間のMVRV-Zスコア移動平均(2YR Rolling Average)に焦点を絞ることで、失われたコインや休眠供給による歪みを排除し、現在の市場動向をより正確にとらえることが可能となっている。

結論
まとめると、ビットコインへの機関投資家の関心はかつてないほど高まっている。ETF、企業の財務資産、国家保有分を合わせると、すでに220万BTC以上が「押さえられて」おり、その数字はいまも増え続けている。この資本の流入は、市場の弱気局面において、ビットコイン価格を安定させる効果をもたらしたことは間違いない。しかし、安定性と引き換えに、ビットコインは伝統的な金融システムとの結び付きを強めつつある。株式市場や広範な経済センチメント(投資家心理)との相関性が高まっているのだ。
とはいえ、このことがビットコインの分散性やオンチェーン分析の意義を脅かすわけではない。むしろ、より多くのBTCが識別可能な機関に保有されることで、資金の流れを追跡する精度は一段と高まっている。個人投資家の存在感は依然として圧倒的であり、分析ツールも市場の進化に合わせてよりスマートかつ柔軟になってきている。分散型というビットコインの理念は失われていない。ただ、成熟しつつあるだけだ。そして、資産の進化に合わせてわれわれの分析手法も進化させてゆけば、これから訪れるどのような局面にも十分に対応できるだろう。
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免責事項:本記事は情報提供のみを目的としており、金融アドバイスを意図するものではありません。投資を行なう前に必ずご自身でリサーチを行なってください。
