長らく停滞していた暗号資産市場の構造改革法案が、新たな勢いを伴って米国の議会を通過しつつある。Coinbase社の最高経営責任者は、この法案が米国の金融システムを根本的に変革する可能性があると述べている。
Coinbaseのブライアン・アームストロングCEOは5月13日、同社がCLARITY法案(デジタル資産市場明確化法案)を支持することを表明した。彼はこの法案を、暗号資産業界の要求と伝統的な銀行業界の利益とのバランスをとった「真の妥協案」であると語り、交渉開始以来、自身が見てきたなかでもっとも完成度の高い内容になっていると示唆した。
この発言は、上院銀行委員会が5月14日にCLARITY法案のマークアップ(条文審査)を実施する準備を進めているなか、「Fox News」を通じて報じられた。今回の採決は、数カ月にわたる手続き上の遅延と2度のマークアップ中止を経て、上院において同法案に対して行なわれる初の正式な委員会採決となる。
委員会委員長のティム・スコット氏は、2026年6月または7月に上院本会議で全面採決を行なう目標を設定している。一方、ホワイトハウスは7月4日までの大統領署名を目標に掲げている。
JUST IN: Coinbase CEO Brian Armstrong tells Fox Business there was a compromise on the Bitcoin & crypto market structure bill, clearing the way for it to pass the Senate 🚀
“It’s in the best place we’ve seen so far…We’re ready to support a markup later this week.” 👀 pic.twitter.com/U88UfywifU
— Bitcoin Magazine (@BitcoinMagazine) May 13, 2026
“立法マラソン”が進行中
CLARITY法案(正式名称:「Digital Asset Market Clarity Act of 2025(H.R. 3633)」)は、2025年7月17日に下院において超党派による294票対134票の賛成多数で可決された。下院の共和党議員216名全員が賛成し、さらに78名の民主党議員が党派を超えて支持に回った。
しかしその後、この法案は上院銀行委員会に留め置かれたままとなった。背景には、2度にわたるマークアップの中止、ステーブルコインに関する交渉の長期化、暗号資産企業とウォール街の銀行との間で激化するロビー活動合戦が存在していた。
この法案の核心は、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の間に規制上の境界線を引く点にある。
法案の下では、CFTCがデジタル商品の現物市場およびキャッシュ市場に対する専属管轄権をもつ一方、SECは投資契約資産およびプライマリーマーケットでの資金調達に対する権限を維持する。また、ステーブルコインは両委員会が共同で監督する別カテゴリーとして位置付けられる。
上院版の法案は、下院を通過した条文をさらに拡張した内容となっている。上院版は全9編構成に拡大されており、分散型金融(DeFi)の保護、不正金融に関する対策、暗号資産顧客向けの破産保護措置、顧客資金を管理しないかたちでコードを公開するソフトウェア開発者のためのセーフハーバーを設けるブロックチェーン規制確実性法案などが盛り込まれている。
ステーブルコインをめぐる対立
この法案においてもっとも激しく争われた条項は、ステーブルコインの利回りに関する部分だった。銀行側は、暗号資産プラットフォームがステーブルコイン残高に対して報酬を支払うことを認めれば、従来型の銀行口座からの預金流出を引き起こし、融資業務を脅かすことになると警告した。一方、Coinbaseをはじめとする暗号資産企業側は、利回りに対する規制は銀行に競争上の優位性を与えることになり、アメリカ国民から新たな金融ツールを奪うことになると主張した。
この対立は、トム・ティリス上院議員(共和党/ノースカロライナ州)とアンジェラ・アルソブルックス上院議員(民主党/メリーランド州)が仲介した妥協案によって決着へ向かった。法案第404条の最終条項では、ステーブルコインの発行体および関連するデジタル資産サービス提供者は、その利回りが銀行の預金利息と機能的または経済的に同等である場合、残高に対して利回りを支払うことが禁止されている。
一方で、決済時キャッシュバック、取引に基づくインセンティブ、商取引に紐づく報酬など「活動に基づく報酬」は引き続き認可される。つまり、ステーブルコインの保有者が何も行動を起こさない場合は、リターンは発生しない。
妥協案の文書が公開された後、アームストロング氏は支持を表明。Coinbaseの最高政策責任者であるファリヤール・シルザード氏は「業界は重要なものを確保した」と述べた。
「Fox News」に出演したアームストロング氏は、ティリス上院議員、アルソブルックス上院議員、そして両陣営のスタッフが双方を交渉のテーブルに着かせるために尽力したことを称賛し、「アルソブルックス議員とティリス議員、そして彼らのスタッフには最大の敬意を払わなければならない。彼らはこの件に関して不眠不休で取り組んでくれた」と語った。
アームストロング氏はさらに、金融業界がデジタル資産の統合に向けて急速に進んでいると指摘。
「私は各地を回って多くの銀行のCEOと話をしているが、彼らの多くはこれを事業拡大の機会として積極的にとらえている。彼らは可能な限り迅速にステーブルコインの導入を進めている」と語った。
2026年4月には、暗号資産イノベーション評議会(Crypto Council for Innovation)やブロックチェーン協会(Blockchain Association)を含む100以上の暗号資産関連企業や業界団体が、上院銀行委員会に書簡を送付し、法案の審議を進めるよう強く求めるとともに、さらなる審議の遅延はイノベーションと資本をアメリカ国外へ流出させる危険があると警告した。
さらに、スコット・ベッセント財務長官もこの主張を後押しし、上院委員会に対して、この法案はドルの世界基軸通貨としての地位を守るうえで不可欠であると述べた。
もっとも、14日のマークアップは最終到達点ではない。仮に銀行委員会が法案を承認したとしても、その後に、2026年1月に上院農業委員会で12対11の党派別投票で可決された法案との統合が必要となる。
さらに上院本会議での可決には60票が必要となるため、民主党の支持は事実上必須条件となる。そして、現在も続く最大の争点は、ドナルド・トランプ大統領とその家族の暗号資産保有に対する倫理条項をめぐる対立である。