アイダホ州の退職夫婦が、Bitcoin Depot Inc.を相手取った連邦集団訴訟を提起した。同社のATMネットワークが詐欺師の資金回収経路として機能し、老後の蓄え7万6,000ドルを5日間で失ったと訴えている。
Lacey et al. v. Bitcoin Depot Inc., et al.(事件番号:1:26-cv-00288-DKG)の原告、カレンとロバート・レイシー夫妻によると、詐欺師たちはNortonカスタマーサポートおよびFBI捜査官を装い、「夫婦の口座が児童ポルノおよび違法賭博の捜査対象になっている」と告げた。
詐欺師はその後、2025年8月9日から13日にかけて、Bitcoin Depot ATMへの現金入金を夫婦に指示した。信憑性をさらに高めるため、詐欺師たちはレイシー夫妻のスマートフォンに「FBI」と表示されるワイヤレスネットワークを意図的に出現させた。このネットワークは入金後も数か月にわたって夫妻の端末に表示され続けた。
2026年5月11日にアイダホ連邦地裁に提出された43ページの訴状は、Bitcoin Depotが「明確な警告サイン」があったにもかかわらず各取引を「有効な介入なしに処理した」と主張する。警告サインとして挙げられているのは、初回利用者が見知らぬ相手との通話中に大口の現金入金を繰り返したことだ。
訴状はさらに、同社が1取引あたり最大50%の手数料を徴収していること、また防止策として画面貼り付けの警告シールに頼っており「効果のないことは実証済み」だと指摘する。
息子が連邦犯罪として被害届を提出した後、Bitcoin Depotは1,000ドルの小切手を2枚発行した。訴状によれば、この金額は同社が徴収した手数料にも満たない。詐欺被害に遭った当時は退職していたカレン・レイシーは、現在病院の夜勤シフトに就いて再び働いている。
訴状はBitcoin Depot自身のSEC提出書類も引用しており、そこには同社サービスが「詐欺などの不正行為に利用される可能性がある」こと、そしてリスク管理体制が「不十分になる可能性がある」と記載されている。
連邦取引委員会(FTC)のデータによると、ビットコインATM詐欺の被害額は2020年から2023年の間に約10倍に増加し、被害者1人あたりの中央値損失は1万ドルに達した。2025年にはFBIが、年間で1万人超の被害者から計3億3,300万ドルがビットコインATM詐欺で失われたと報告している。
経営破綻と業務停止
この訴訟は、Bitcoin Depotの経営崩壊と同時進行している。同社は2026年5月18日に任意の第11章(チャプター11)破産申請を行い、北米全土に設置していた9,000台超のATMネットワークを全面停止した。同社は2026年3月に自社ウォレットから360万ドル相当のビットコインが盗まれたことを開示しており、2026年第1四半期の収益は前年同期比49.2%減を記録していた。
原告側は、陪審員裁判・差止命令・補償的損害賠償および懲罰的損害賠償・支払い済み手数料の返還・弁護士費用を求めている。