Home市場北米最大のビットコインATM事業者 Bitcoin Depot が破綻 全9,200台を停止

北米最大のビットコインATM事業者 Bitcoin Depot が破綻 全9,200台を停止

規制強化と収益悪化が重なり Chapter 11 を申請。ビットコイン需要の後退ではなく、事業モデル側の問題が大きかった可能性がある。

ビットコインATMの運営会社として北米最大手だった Bitcoin Depot(NASDAQ: BTM)が、2026年5月18日に Chapter 11(連邦破産法第11章)を申請した。運営中だった9,200台超のキオスクは即日すべて停止され、資産売却・清算の手続きへ移行する。

今回の破綻は、BTC価格動向そのものよりも、事業モデル側の問題が大きかった可能性がある。Bitcoin Depot が直面していたのは、州レベルでの規制強化・複数の法的訴訟・急速な収益悪化という、事業モデル固有の問題だった。

何が起きたか——Bitcoin Depot、9,200台のキオスクを停止し清算へ

Bitcoin Depot は2016年創業、アトランタを拠点とするフィンテック企業。コンビニやガソリンスタンドの店頭に設置したキオスクを通じ、現金とビットコインの相互交換サービスを展開してきた。最盛期には北米最大のBTMネットワークを保有し、2023年にSPAC合併を経てNASDAQに上場している(ティッカー:BTM)。

2026年5月18日、同社はテキサス州南部地区連邦破産裁判所に Chapter 11 を自主申請。全キオスクを即日オフライン化し、事業を終了した上で資産の秩序ある売却手続きへ移行すると発表した。株価は発表直後に約75%下落した。

財務の悪化は直近で急加速していた。2026年Q1の売上高は前年同期比49%減の約8,350万ドル。粗利益は同85%超の減少で450万ドルまで落ちこみ、純損益は前年同期の1,220万ドルの黒字から950万ドルの赤字へ転落していた。

CEO の Alex Holmes は破綻の理由について「各州の規制要件が急激に厳しくなり、現在のビジネスモデルは持続不能な状況になった」と声明で述べた。インディアナ州は2026年3月に米国で初めてビットコインATMキオスクを禁止。テネシー州・ミネソタ州が追随し、コネチカット州は営業ライセンスを停止している。さらに、マサチューセッツ州とアイオワ州の司法長官は、同社が暗号資産を利用した詐欺の仲介に関与したとして提訴しており、2025年Q4には2,000万ドルを超える法的判決が確定していた。

なぜ潰れたのか——収益悪化と規制コストの同時進行

Bitcoin Depot のビジネスモデルは、現金とBTCの即時交換に業界平均で10%を超えるとされる手数料率を上乗せするという構造が基本だった。物理機器の購入・リース、設置場所の賃料、現金管理コスト、そして年々強化されるAML/KYCコンプライアンスへの対応が、固定費として重くのしかかる構造でもあった。

この収益モデルを直撃したのが、ATMを悪用した詐欺問題の深刻化だ。FTCやFBIは数年前から高齢者を標的にした暗号資産ATM詐欺を問題視してきた。2025年のBitcoin ATM関連詐欺被害額は3億8,900万ドルに達したとされ、前年比約58%増という数字が報告されている。この流れを受け、州司法長官や議会が規制強化に動いた。

マサチューセッツ州とアイオワ州の司法長官による訴訟は、詐欺仲介への関与の疑いに加え、不当な手数料表示も問題視するものだった。2025年Q4だけで2,000万ドルを超える法的判決が確定し、州レベルでの営業禁止・ライセンス停止がその後の財務をさらに圧迫した。

収益悪化のペースが急激だったのは、売上減少とコスト増が同時に進行したためとみられる。規制対応費の増加と、規制による稼働台数・取引量の縮小が互いに加速し合う形で財務を悪化させた。

BTCへのアクセス手段——同じ時期に起きていたこと

Bitcoin Depot の事業が縮小していた時期、ビットコインへのアクセス手段として別のルートが拡大していたことは記録しておきたい。

2024年1月に米国で承認された現物ビットコインETFは、2025年末時点でBlackRockのIBITだけで運用資産残高が約670億ドルに達したとされる。機関投資家・個人投資家の双方が、証券口座経由でBTCエクスポージャーを持てる環境が整いつつあった。同時期には、Coinbase・Cash App などのアプリ型取引所が手数料の大幅な引き下げを進め、スマートフォンからのBTC購入ハードルが下がっている。

ただし、これらの変化がBitcoin ATM需要の減少を「直接引き起こした」と断言できるデータは現時点では確認されていない。ATM利用者層——銀行口座を持たない層・現金主体の層——と、ETFやアプリの主要利用者層が完全に重複しているわけではない可能性もある。他の主要ATM事業者が同様の圧力に直面しているかどうかも、現時点では確認が取れていない。ETFやアプリの成長と、ATM事業の縮小が「同じ時期に起きていた」という事実の記録にとどめる。

日本市場との接点

Bitcoin Depot は日本に拠点を持たず、今回の破綻が日本市場に直接影響を与える場面はない。

日本のビットコインアクセス環境は、金融庁の規制枠組みのもと、主に認可を受けた暗号資産交換業者を経由する形で整備されてきた。北米で普及したATM型モデルは、日本では規制上の制約もあり実質的に定着しなかった。結果として、日本のビットコインアクセスは取引所・アプリ中心で推移しており、今回問題となった事業モデルとは異なる経路を歩んできた、という整理はできる。

北米でのアクセスインフラの変化が日本のBTCアクセスインフラのあり方にどう関わるかは、引き続き注視が必要な論点のひとつだ。

Bitcoin Depot の Chapter 11 申請は、北米最大だったBTMネットワークの終わりとして記録される。規制強化と収益悪化が重なったこの破綻は、ビットコイン需要そのものの動向とは切り離して読む必要がある。

BTCへのアクセス手段の構成が変わりつつある可能性を、この出来事が示唆しているとは言えるかもしれない。ただ、それが構造的な変化なのか個社の問題にとどまるのかは、他の事業者や規制の動向を見ながら判断されるべき問いとして残る。

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  • Bitcoin Magazine Japan

    Bitcoin Magazine Japan編集部。2012年創刊のBitcoin Magazineの日本版として、ビットコインをめぐる国内外のニュース、市場、政策、テクノロジーを取材・発信する。海外版の翻訳記事に加え、日本独自の解説や分析を通じて、変化するビットコインの現在地を伝えている。

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