6月8日(米国時間)、ビットコインは2024年10月以来初めて6万ドルを下回り、一時5万9099ドルまで下落した。これは、過去最高値の約12万6000ドルから50%以上の下落を意味する。
しかし、Coinbase社の機関投資家向け戦略責任者であるジョン・ダゴスティーノ氏によれば、市場でもっとも経験豊富なプレイヤーたちは、この下落を恐れるどころか、むしろ歓迎しているという。
8日朝に放送されたCNBCの番組「Squawk Box」に出演したダゴスティーノ氏は、自身が定期的に話をしている機関投資家たちは、今回の価格調整をパニックになる理由ではなく、割安な価格で買い増しできる機会ととらえていると語った。
「私は中東から飛行機で到着したばかりだが、UAEのファミリーオフィスや、この資産クラスの購入に力を入れている政府および政府系ファンドは割安な価格で購入できることに満足しているようだ」と、ダゴスティーノ氏は説明した。
彼の発言は、この下落局面においても機関投資家による買いが継続していることを示す最近のデータとも一致している。
アブダビのMubadala Investment Companyは運用資産総額3300億ドルの政府系ファンドだが、2026年3月31日時点でブラックロック社のiシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)を1470万株保有していると報告した。これは前四半期比で16%の増加となり、ビットコインが史上最高値から約40%下落したにもかかわらず、同ファンドは4四半期連続で保有量を増やしていることになる。
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「1000億ドルに上るビットコインETFへのエクスポージャー」
ビットコインが大幅に下落しているにもかかわらず、ダゴスティーノ氏は個人投資家の強い信念を示す証拠として、ある注目すべき数字を挙げた。ビットコインETF(上場投資信託)が、ビットコイン価格がピーク時からほぼ50%下落した後でも、依然として約1000億ドル相当のエクスポージャーを維持しているという事実だ。
「価格はピーク時からほぼ50%下落したが、個人投資家の関心はわずか15%程度しか低下していない。つまり、個人投資家も機関投資家も、ビットコインを長期的に保有したい資産として考えているということだ」と、ダゴスティーノ氏は指摘した。
また、ブラックロックのiシェアーズ・ビットコイン・トラストだけでも、今年初めの時点で約519億ドルの運用資産残高(AUM)を保有しており、これは米国の現物ビットコインETF全体の資産残高のおよそ45%に相当する。
いくつかの下落要因
ビットコインの「冬」の背景にある要因について問われた際、ダゴスティーノ氏は「Squawk Box」司会者が挙げたリストに概ね同意した。リストには、以下のような要因が含まれていた。リスク回避のセンチメントにより、投資家がより流動性の高い資産へ資金を移していること。金利が高止まりし、法定通貨価値の希薄化を前提とした投資理論を弱めていること。暗号資産をめぐる規制の明確化が依然として立法上“宙ぶらりん”の状態にあること。そして、ストラテジー社のマイケル・セイラー氏が長年掲げてきた「絶対に売らない」という方針を破り、保有するビットコインの一部を売却したこと。
セイラー氏のストラテジーは、5月26日から31日にかけて32 BTCを約250万ドルで売却した。この売却枚数は同社が保有する84万3000 BTC超の総保有量のわずか0.004%に過ぎなかったが、市場心理を大きく揺るがす出来事となった。その結果、ビットコイン価格は7万2000ドルを下回る水準まで急落し、その後もさらなる下落が続いた。
また、ダゴスティーノ氏は、米国とイランの100日間に及ぶ戦争やホルムズ海峡の封鎖も、世界中のリスク資産に圧力をかけるマクロ経済上の重しになっていると指摘。一方で、原油価格が1バレル100ドルを下回る水準で意外にも落ち着いて推移していることにも言及した。これは、複雑なマクロ経済環境における価格変動が必ずしも直感通りには動かないことを示しているという。
立法面については、ダゴスティーノ氏は米国議会で審議中の複数の法案に言及し、それらがビットコインやデジタル資産全般を支える制度的インフラを強化するだろうと語った。そのひとつであるデジタル資産市場明確化法、通称「CLARITY法」は、2026年5月14日に上院銀行委員会を15対9の賛成多数で通過し、包括的な暗号資産規制の枠組みとして初めて上院本会議に提出された。
さらに、暗号資産への課税を扱う別の法案である「PARITY法」も超党派の支持を得て、独立した立法手続きのなかで進められている。
機関投資家レベルではパニックは起きていない
レバレッジ取引を行なっている投資家が、価格下落によってマージンコール(追証)や強制清算に直面するリスクについて問われた際、ダゴスティーノ氏は、現在の価格水準付近で「極めて過剰なレバレッジ」をかけている主要な機関投資家は把握していないと語った。彼によれば、より大きなリスクは、極端なレバレッジを提供する海外の暗号資産取引所を利用する個人投資家が抱えているという。
「機関投資家サイドに、現時点でパニックになっている様子は見当たらない。むしろ、彼らは、自分たちが12万5000ドルのときに気に入っていた資産、10万ドルのときにも好んでいた資産、そして、いまでは6万5000ドルになってさらに魅力的だと感じている資産に投資するために、新たな資金をもっとも安く調達する方法を考えているようだ」と、ダゴスティーノ氏は説明した。
8日には、ストラテジーがこの見解を裏付けるかのように、約1億100万ドルで1550 BTCを追加購入したことを明らかにした。これは、わずか数日前に1 BTC当たり7万7135ドルで32 BTCを売却した後、今度は1 BTC当たり約6万5000ドルの水準で押し目買いを行なったことを意味する。