6月15日月曜日(米国時間)、米国とイランの和平合意によって、市場におけるもっとも根強いマクロ経済上の懸念材料のひとつが解消されたことを受け、ビットコイン価格は2週間ぶりの高値まで上昇した。市場関係者が今週の真の試金石として注目する、連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長による初の連邦公開市場委員会(FOMC)会合を前に、暗号資産関連株も急騰した。
イランがホルムズ海峡再開に関する覚書を承認したことを受けて、ビットコイン価格は24時間で4%上昇し、6万7000ドル付近で取引された。価格は週末の薄商いのなかで6万4000ドルのレジスタンスラインを突破し、その後、月曜日のニューヨーク市場の取引開始に向けて値固めを行なった。
しかし、Nansen AI社のリサーチアナリストであるニコライ・ソンダーガード氏は、このニュースによる値動きを過度に解釈しないよう注意を促している。
ソンダーガード氏は「Bitcoin Magazine」に対して、「停戦のニュースを受け、流動性の低い週末の市場ではビットコインは6万6000ドルまで上昇した。しかし、今年すでに二度も痛い目にあっているトレーダーたちは、まだ完全には資金を再投入していない。4月の合意は崩壊し、6月9日には米国の攻撃によって二度目の停戦も破られ、そのたびにビットコインは安心感からの上昇分をすべて失った。市場は日曜日のニュースの見出しではなく、6月19日にスイスで予定されている出来事を本当の判断基準としてとらえている」と語った。
ストラテジーが再び買い増し
ストラテジー社(MSTR)は6月15日に提出した最新の8-K報告書の中で、6月8日から14日にかけて、ATM(市場価格連動型)株式発行プログラムを通じて調達した約1億ドルで1587 BTCを取得し、ビットコインの総保有量が84万6842 BTCに達したことを明らかにした。
この発表を受けて同社の株価は9%超上昇し、日中の出来高は1684万株に達した。
一方、ヴィヴェック・ラマスワミ氏が会長を務めるビットコイン・トレジャリー企業のStrive社(ASST)は、株価が16%近く上昇し17.50ドルとなった。これは、4月初旬に記録した3カ月ぶりの安値9ドルからの回復が続いていることを示している。また、Coinbase社、Robinhood社、Circle社といった他の暗号資産関連銘柄も、いずれも5%を超える上昇を記録した。
この暗号資産関連株の上昇は、DoubleZero社の共同創設者であるオースティン・フェデラ氏が現場で感じている状況を反映している。
フェデラ氏は、「機関投資家は暗号資産を大いに気に入っている。銀行家やスーツを着たビジネスマンたちがこれほど興奮しているのを見たことがない。彼らと話していると、いま現在が弱気相場だとはとても思えない」と明かしている。
ビットコインの価格構造をめぐる議論
ビットコイン価格は上昇しているものの、Bitfinexのアナリストは、この安堵感からの上昇を本格的な需要と勘違いすることに危険性を感じている。同取引所のアナリストチームは「Bitcoin Magazine」に対して、「この値動きが示しているのは、売り枯れがマクロ経済の環境の改善とちょうど同じタイミングで起きているということで、真の需要回復とは異なる状況だ。その後に続く価格の変動は、それぞれまったく異なるものになる。短期的な回復が見られるとはいえ、本格的な上昇トレンドが形成されるまでには、強気派が乗り越えなければならない大きなハードルがあると考えている」と指摘した。
さらに、Bitfinexは持続的な買い需要が形成されるための条件について、「相関性の高い資産が上昇基調にあること、大規模なロスカットによって資金調達率と未決済建玉がリセットされること、現物市場での売り圧力が枯渇し、マクロ経済環境が改善することなど、複数の要因が重なって一時的な底打ちが起きていると、私たちは考えている。しかし、ビットコインが持続的な現物の買い需要を獲得するためには、ETF(上場投資信託)とDAT(デジタル資産トレジャリー)企業という現物買いの“二大主体”が再び買い越しに転じる必要がある」と説明した。
ETFのデータは、強弱入り混じった相反するシグナルを示している。現物ビットコインETFは、6月12日までの期間に5週連続の純流出を記録し、その総額は約18億ドルに達した。しかし、6月12日にはその流れが止まり、8585万ドルの純流入を記録。この純流入を主導したのはブラックロック社のIBITで、その流入額は5769万ドルだった。また、フィデリティ社のFBTCも純流入に貢献した。
もっとも、一日だけのプラス流入によってビットコイン価格の反転が確定するわけではない。しかし、機関投資家の買い手が再び市場に戻り始めている可能性を示す最初の兆候と言える。
FRBの金利政策が今後の注目要因
地政学的な安定材料を受けての上昇局面にはあるものの、ソンダーガード氏もBitfinexのアナリストも、今週の市場を左右する決定的な要因はFOMCであると指摘している。6月16日から17日にかけて開催される今回のFOMCは、ケビン・ウォーシュ氏がFRB議長として初めて開く会合となる。4月のインフレ率は3.8%であり、利下げはもはや議論の中心ではなくなっている。一部のFRB当局者は年内後半の利上げの可能性にすら言及し始めている。
市場では、FRBが政策金利を3.50~3.75%で据え置くとの見方が広がっている。しかし、更新されるドットプロット(政策金利見通し)とウォーシュ議長による初の記者会見は、委員会がどちらの方向に傾いているのか、そして、結果としてビットコイン価格にどのような影響を与えるかを示す重要な手がかりとなる。
Bitfinexは、米国とイランの和平合意を単独の材料ではなく、市場に影響を伝える「伝達メカニズム」としてとらえ、「停戦が続けば、原油価格は下落し、エネルギー主導のインフレ要因は弱まるだろう。実質利回りやインフレ期待も低下し、安全資産としてのドルの需要も後退する。この一連の流れこそが、金(ゴールド)とビットコインにとって短期的にもっとも明確な追い風となるだろう」 と見込んでいる。
しかし、彼らはもっとも重要なのはタイミングだと指摘。「この合意は、ケビン・ウォーシュ氏が議長を務める最初のFOMC会合の前日に成立する。供給正常化への信頼できる見通しが示されれば、FRBは5月のインフレ率上昇を一時的なものとみなして、政策金利を据え置く根拠を得る。そうなれば、目標を上回るインフレ指標が出たからといって、直ちに利上げに踏み切る必要はなくなる」と説明している。
暗号資産市場の強気派にとって、強気シナリオが成立するためには、停戦が維持されること、ウォーシュ議長が中立からハト派寄りのシグナルを発すること、ETFへの資金流入が連続してプラスとなること、が必要となる。しかし、これらの結果はいずれも保証されているわけではない。
まさにこうした理由から、Bitfinexが指摘したように、現在のビットコイン価格は、「このふたつの重要な価格水準の間にある調整局面にとどまっており、ここで強固なサポート基盤を確立するか、あるいはさらに大きな下落局面へと陥るかを迫られている」状況にあると言えるだろう。