Home記事Covenants、CTV、そして開発者にとってすべてを易しくするために

Covenants、CTV、そして開発者にとってすべてを易しくするために

Stuはオープンソースの開発者。ZBDでの勤務にはじまり、CTVツールのプロトタイプ開発を経て、現在はChar Networkに寄与している。

開発者:Stu(スチュウ)
使用言語:Rust(ラスト)
プロジェクト:CTVプロトタイプ、Char Network
勤務歴:ZBD

ビットコインと出会う以前、StuはWindowsのシステム管理者およびITサポートとしての日々を過ごしていた。彼の業務内容は、単調な保守作業、システムの再設定、パスワードを忘れたユーザーのためのリセット対応など、長時間椅子に座って退屈な作業に従事するというものだった。

何かしら注意を必要とする問題が実際に起きることは極めてまれであり、そのため、Stuはほとんどの時間を「何か起きないだろうか」と願いながら過ごしていた。

Stuはその膨大なヒマな時間をReddit(アメリカの掲示板型SNS)のスレッドを閲覧してやり過ごしていた。しかし、これは結果的に悪いことではなかった。というのも、彼が2017年頃にビットコインの世界に引き込まれるきっかけとなったのが、まさにこの時期だったからだ。

当時の多くのビットコイナー、あるいはビットコイナーになる寸前の人々と同様に、StuもICO(Initial Coin Offering:新規仮想通貨公開)やアルトコインの熱狂に巻き込まれた。そして、これもまた多くの人々と同様に、無名で信頼性に欠けるプロジェクトへの投資で経済的な損失を被ることになった。

そして必然的に、ビットコインという重力に引き寄せられるようにして、Stuは「ラビットホール(ウサギの穴)」へと落ちていった(ビットコインにのめり込む過程の比喩的表現)。

数年間ビットコインについてより深く学んだ後、Stuはある種の熱狂状態に入る。2021年の強気相場がピークに達したころ、それまでの職を辞して、ビットコイン分野で働くチャンスを探し始めた。当時はプログラミング言語のRust(ラスト)がさまざまなビットコイン関連プロジェクトやライブラリで使われるようになっており、Stuはビットコインに関与するべくRustの学習を始めた。

2022年の末、Stuの就職活動は終わりを迎える。彼はMichael Tildwell(マイケル・ティルドウェル)に雇われ、ZBDという企業に参加する。この企業はライトニングネットワーク(ビットコインの即時・低手数料決済を可能にするレイヤー2技術)を使って、ビットコイン決済をビデオゲームに統合する取り組みを行なっていた。

 

ZBDでの勤務

StuはZBDでDevOps(開発と運用を統合する職種)として働いていたが、空いた時間にはRustを使ったプロトタイプのプロジェクトに取り組み続けていた。

「自分のサイドプロジェクトのほとんどは、その時点で関心をもっていたことに関係している。ZBDで働いていた時期は、ビットコインを使ったゲームをつくり始めていた」と、Stuは語る。

まず、彼は「rain.run」というマルチプレイヤーのウェブゲームを開発した。このゲームでは、プレイヤーが雷マークを集めることで報酬としてsatoshis(ビットコインの最小単位。1BTC=1億satoshis)を得る仕組みとなっており、ネットワーク上で相互に通信し合うアプリケーション構築に慣れることを目的としていた。その後、Nostr(ノスター)プロトコル上で動作するシンプルな「Connect4(四目並べ)」ゲームも作成した。

「これはNostrがどのように機能しているかを学ぶのに絶好の方法だった」

「2024年には、オースティンで開催された『btc++』に参加した。その年は“Script Edition(スクリプト編)”だったんだ」。この4日間のカンファレンスは、ここ1年間でもっとも密度の濃い、Bitcoin Script(スクリプト:ビットコイン取引の条件を定義するために使われるプログラミング言語)とCovenants(コべナンツ:ビットコインの送金条件に制約を加える機能の提案)に関する議論の場であった。

「当時は、ビットコイン上のコべナンツに関して、ある種のコンセンサスが形成されつつあるようにみえた」と、Stuは振り返る。

「それがきっかけで、ビットコイン・スクリプトの仕組みに強く興味をもつようになり、Taproot(タップルート:2021年に導入されたビットコインのスクリプト拡張機能)やビットコイン・スクリプトを使った実験を始めた」と彼は続ける。

「結局、大した成果は残せなかったけれど、スクリプトの仕組みを学ぶうえでは非常に有意義だった」

 

TABConf、Payment Pool、CTV

2024年、Stuは「TABConf」に参加した。これは毎年ジョージア州アトランタで開催される開発者向けのカンファレンスだ。アトランタでの議論もまた、コべナンツに焦点が当てられていた。

他の開発者向けカンファレンスと同様に、「TABConf」でもハッカソン(短期間でプロトタイプを作成するイベント)が開催された。Stuはこのイベントで、Discreet Log Contracts(DLC:非公開署名を用いたスマートコントラクトの一種)を使ったプロジェクトに取り組むことに決めた。これは、ユーザーがチェスの対局結果に賭けることができるという内容だった。この取り組みを通じて、Stuは、多くの取引を事前に署名する必要があるようなソフトウェアの構築は、開発者にとって極めて複雑になることに気づいた。

この問題について語るなかで、彼は「この問題への答えは、CHECKTEMPLATEVERIFY(CTV)だと思った。コべナンツについてもっと学びたかったので、CTVは入門にちょうどよいと思い、DLCのチェスプロジェクトへの統合を始めた。すべてがどれほどシンプルになるか信じられなかったけど……」と述べている。

その後、StuはCTVを用いたPayment Pool(ペイメントプール)の概念実証プロトタイプも構築した。ペイメントプールとは、複数人でひとつのUTXO(未使用取引出力)を共同管理する、非常に基本的なレイヤー2の仕組みだ。

なぜペイメントプールのプロトタイプに取り組んだのかとの問いに対して、「ビットコインを中央集権的な第三者を介さずスケーラブルにするひとつの方法は、ユーザー同士がUTXOを共有すること。ペイメントプールはその実現手段として優れており、特にライトニングネットワークやArkのような他のレイヤー2ソリューションと組み合わせれば、非常に効果的だ」と、Stuは答えている。

 

Covenants

コべナンツは、今後ビットコインをどう進化させていくかという議論において、論争の原因となっている技術的課題だ。すべての開発者が独自の意見をもっており、Stuも例外ではない。

「事前署名済みのトランザクション(実行前にすでに署名されているビットコイン取引)をコべナンツで置き換えられるだけでも、開発者にとっては飛躍的な進歩だと思う。より速くより安全な構築が可能になる。ユーザーに求められる操作ややり取りの量が減ることで、常時オンラインである必要や他者との調整が減る。結果的にUX(ユーザー体験)が大きく向上する可能性がある」

他のコべナンツ提案ではなく、CTVを用いてプロトタイプや概念実証を構築した理由を尋ねたところ、Stuは次のように答えている。

「CTVに惹かれたのは、自分がつくりたかったアプリケーションに実装しやすかったから。CTVでペイメントプールをつくった後、すべてのコべナンツ提案についても同じことをやろうと考えていた。実際、CHECKSIGFROMSTACK(CAT)でも同じ機能を再現できたが、作動までにかなりの時間がかかり、コードも格段に増えた。CTVではスクリプトが3行程度だったのに対して、CATでは50行程になってしまった」

「CTVを有効化してもビットコインにはリスクがないことについて、プロトコル開発者の間である種の合意ができていると思っている。むしろ、昨今の議論は『ユーザーがそれを望んでいない』という点に移っている感がある。ただ、ユーザーはすでにライトニングやマルチシグ・ボールト(複数署名による資産保管方法)といったプロトコルを使っているし、それらはCTVによって改善される。だから、自分としては、次回のソフトフォークにおける最優先事項にすべきだと考えている」と彼は語る。

コべナンツをめぐる現在の対立的な雰囲気、そして次なるソフトフォークに向けた議論の空気感をどう改善すべきかを尋ねたところ、Stuは冗談めかしてこう答えた。

「誰かがマイケル・セイラーにサンドイッチの絵文字をツイートさせれば、すべてうまくいくよ」

しかしその後、少し真面目なトーンでこう続けている。「正直なところよくわからない。対面で議論できるイベントがもっと増えれば、改善につながるかもしれない。これは技術的な理由というより、むしろ政治的な理由で進展が止まっているように感じる」

「ビットコインにあらゆる変更を加えることに対して、慎重になる空気がある。でも、ビットコインが変更しにくいというのは、ある意味で驚異的な特徴でもある。ただし、それをソフトフォークにまで厳密に適用すべきとは思わない。それによって、特定のビットコイン開発者、なかでもビットコインコアのメンテナーには多大なストレスがかかっている。次のフォークについて、みんなが彼らの意見を待っている。だからこそ、彼らが議論に加わりにくくなっていて、そのことが新たな変更に関するコンセンサス形成を困難にしている」と、彼は述べている。

 

今後について

Stuは最近、Chaincode Labsが主催するBitcoin Open Source Software(BOSS)プログラムに参加した。このプログラムは、ビットコイン・エコシステムに新たに参加する開発者が実践を通じて素早く理解を深め、ビットコイン上での開発経験を積むことを目的とした取り組みだ。

今後、StuはChar Networkに寄与してゆく予定だ。Char Networkはあまり注目されていないが、新しいビットコイン・ステーキング・プラットフォームの構築を目指すプロジェクトであり、CTVを設計・提案した開発者Jeremy Rubin(ジェレミー・ルービン)が主導している。Stuは個人的なサイドプロジェクトを継続しながら、今後もオープンソース・プロジェクトへの寄与を続け、最終的にはビットコインコアに貢献できることを目指している。

ビットコイナーたちが今後どのような優先順位をもつべきかについて、Stuは最後にこう語った。

「最優先すべきは、セルフカストディ(自己管理)の改善だと思う。現状は本当に酷い状況だし、もっと多くのビットコイナーがそれを認めるべきだと思う。12個の単語(ウォレットの復元用シードフレーズ)をバックアップするのは簡単そうに聞こえるけれど、実際はそんなに簡単ではないし、誰もちゃんと取り組んでいないのが現実だ」

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  • Shinobi(シノビ)は、ビットコイン分野における匿名の独学教育者である。彼は、ニュースや技術に焦点を当てたビットコインのポッドキャスト「Block Digest(ブロック・ダイジェスト)」の共同ホストを務めたほか、ピーター・マコーマックと共に、非技術系ユーザーに技術的な概念をわかりやすく解説する「What Bitcoin Did Tech Show」にも出演していた。彼が自分について語るのは、これだけである。

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Shinobi(シノビ)は、ビットコイン分野における匿名の独学教育者である。彼は、ニュースや技術に焦点を当てたビットコインのポッドキャスト「Block Digest(ブロック・ダイジェスト)」の共同ホストを務めたほか、ピーター・マコーマックと共に、非技術系ユーザーに技術的な概念をわかりやすく解説する「What Bitcoin Did Tech Show」にも出演していた。彼が自分について語るのは、これだけである。
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