Homeコラム私はいまだに、ビットコインとライトニング上のテザー(USDT)が好きになれない

私はいまだに、ビットコインとライトニング上のテザー(USDT)が好きになれない

ビットコインとライトニングへのUSDT導入は、ビットコインのセキュリティに対する潜在的脅威となり、ビットコインの精神に汚点を残すことになる。

Taproot Assetsを通じてUSDT(テザー)がビットコインとライトニング上に登場するというニュースは、さまざまな反応を引き起こした。

一部の人々は、これをビットコインにとってよいことだと考えている(実際、Xで私が行なった小規模なアンケートによると、多くの人が肯定的にとらえていた。もちろん、サンプル数が十分でないため統計的な有意性はないが、ここに共有しておく)。一方で、あまり歓迎していない人々もいる。

「歓迎していない人々」のなかには、私も含まれている。

とはいえ、私はできるだけ偏見をもたずに考えようと努めている。

最近、ライトニング上の決済向けインフラを提供するAmbossの共同創設者兼CEOであり、ビットコインとライトニング上でのUSDT導入を支持するジェシー・シュレーダー氏のプロフィールを取り上げた。彼の主張を聞くことで、私が見落としているかもしれないメリットを理解しようとしたからだ。

シュレーダー氏とのインタビューで、彼は以下の点を指摘した。

  • USDTの普及は、世界中で米ドルの需要があることを証明している。
  • USDTは巨大な決済手段であり、2024年には10兆ドル以上の決済を処理した。これはMastercard(マスターカード)を超える規模であり、その一部が今後ライトニングネットワーク上で行なわれる。
  • USDTがライトニングネットワークにもたらす流動性は、ネットワークの成長を促進し、より大規模な決済処理を可能にする。

ビジネスの観点からすれば、氏の見解はUSDTをライトニングに導入する妥当な根拠といえる。また、「人々は自分が使いたいお金を自由に使うべきだ」と考える私としても、実務的な観点からこれらの主張に反論することは難しい。

しかし、私はUSDTをビットコインとライトニングに導入することには、それ相応の代償が伴うと考えている。

この代償には、技術的な側面と哲学的な側面がある。

技術的なリスク:ビットコインのセキュリティに対する脅威

技術的な観点からみると、ビットコインとライトニング上でUSDTを運用することは、ビットコインのセキュリティを危険にさらす可能性がある。

もし「ブロックサイズ戦争」のときのようなビットコインのハードフォークが再び発生した場合、ビットコインネットワーク上の大規模な経済ノード(例えば、米国の現物ビットコインETFの裏付けとなるビットコインを管理しているCoinbaseなど)が、「Tether fork(テザーフォーク)」と呼ばれる新しいネットワーク側を支持する可能性がある。その結果、ネットワークに加えられる変更が長期的にビットコインのセキュリティを危険にさらすかもしれない。

言い換えれば、Coinbase(コインベース)やTether(テザー)、その他の主要なビットコイン関連企業がテザーフォークを支持して推進すれば、他の大規模な経済ノードもそれに追随する可能性が高い。

さらに、ビットコインとライトニング上でUSDTを利用しているすべての人々は、必然的にテザーフォーク側を支持することになる。なぜなら、テザーフォークとならなかったチェーン上に残ったUSDTは、無効化される可能性が高いからだ。

この点について、Lyn Alden氏は「Proof-Of-Stake And Stablecoins: A Blockchain Centralization Dilemma」というエッセイで次のように述べている。

「カストディアン(管理者)は、自分たちが正しいとみなさないフォーク上のステーブルコインの価値をすべて無効化することができる」

Alden氏はこの発言を、DeFi(分散型金融)に依存するEthereum(イーサリアム)やSolana(ソラナ)などのスマートコントラクト・ブロックチェーンについて言及した際に行なった。しかし、同じことがビットコインにも当てはまるのだ(Alden氏の指摘は正しかったことが、2022年の「The Merge」で証明された。イーサリアムがプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行した際、Circle(サークル)やテザーといったステーブルコイン発行者は、PoSのイーサリアム上のトークン化された米ドルの価値を維持したが、PoWのイーサリアム(ETHW)上のものはサポートしなかった)。

同様のシナリオがビットコインで起こる可能性があり、結果としてテザーがビットコインに対して過度な影響力をもつことになる。

哲学的な問題:ビットコインの本質に対する裏切り

私がビットコイン上のUSDTを好まないもうひとつの理由は、哲学的なものだ。

ビットコインは、2007年から2009年の世界金融危機の後に登場した。その目的は、米ドルに代わる新たな金融システムを提供することだった。

当時、米国政府は経済危機を引き起こした銀行を救済するために大量のドルを発行した(つまり、通貨を希薄化した)。これに対抗するかたちで、政府や中央銀行の都合で勝手に発行されることのない「価値保存手段」としてビットコインが生まれたのだ。

しかし、USDTをビットコインにもたらすことは、米ドルの覇権を世界的に維持するための仕組みをビットコインが支援することを意味する。それは、ビットコインの本質に反する行為だと私は感じている。そして、それを支持することはできない。

実務的な観点では、ビットコインとライトニング上でUSDTを利用することにメリットがあるのは理解できる。しかし、多くの人が見落としている点がある。それは、ビットコインがこの動きによって脆弱な立場に追い込まれ、その価値提案の一部が(たとえ一時的にでも)損なわれる可能性があるということだ。


本記事は、寄稿者によるコラム「Take」です。記事内に述べられた意見は、完全に筆者個人のものであり、BTC IncやBitcoin Magazineの見解を必ずしも反映するものではありません。

Author

Frank Corva
Frank Corvahttps://frankcorva.substack.com/
Frank Corvaは、Bitcoin Magazineの政治担当リポーターです。
RELATED ARTICLES
Bitcoin Bitcoin BTC/JPY
¥0
24hr %:
0.0%
24hr High:
¥0
24hr Low:
¥0
Error loading data. Check console for details.
VIEW 150+ BITCOIN CHARTS

LATEST NEWS

custom ad 1