欧米の金融メディアは、2025年10月の史上最高値である約12万6000ドルからのビットコインの暴落を報道することに、2026年の多くの時間をこれまで費やしてきた。一方で、 Trezor Academyは、それとは異なる物語を描いたドキュメンタリーを公開した。
『 Seeding Bitcoin: Trezor Academy and Africa’s Bitcoin Revolution(ビットコインの種蒔き── Trezor Academyとアフリカのビットコイン革命』は、サハラ以南のアフリカ各地で、ビットコインを投機的な資産としてではなく、実用的な金融ツールとして活用している教育者や業者、そして地域住民を追ったドキュメンタリー作品だ。
この作品では、南アフリカにあるビットコイン教育センターが紹介されており、そこでは10代の若者を含む生徒たちがビットコインの資格取得コースを修了し、毎週ビットコインで報酬を受け取っている。なかには、その報酬を家族のための食料品の購入に充てる者もいる。
また、価格変動への懸念から当初はビットコインを拒否していた商店主が、地元の教育者からステーブルコインによる決済方法を紹介されたことをきっかけに、ビットコインの利用者になった事例も紹介されている。
さらに、草の根的な活動であるビットコイン会議に参加するために14時間かけて旅をした女性や、地元のビットコイン循環経済にかかわるようになったことで人生が一変した元薬物依存者の姿も記録されている。
これらすべての人々に共通しているのは、既存の金融システムから排除されてきたという現実だ。作品に登場するスピーカーたちは、難民、孤児、正式な住所や政府発行の身分証明書をもたない人々など、銀行口座やクレジット、あるいは正式な決済インフラを利用できない人々について語っている。
出演者のひとりは、「ビットコインには、あなたが貧乏か金もちか、肌の色が何色か、政府発行の身分証明書をもっているかどうかなど、いっさい関係ない」と強調する。
Chainalysis社の調査によると、 2025年半ばまでの1年間にサハラ以南のアフリカで受け取られたオンチェーン取引額は2050億ドルを超え、前年同期比で約52%増加した。これは世界で3番目に速い地域成長率だ。
また、これらの送金のうち1万ドル未満の金額が占める割合は、世界のどの地域よりも高かった。この傾向は、機関による大口資金の移動というよりも、個人による日常的な利用が中心であることを示している。
送金手数料も、その背景のひとつとなっている。世界銀行によると、従来の送金手段で200ドルをサハラ以南のアフリカ地域へ送金する場合、手数料は9%近くかかり、これは世界でもっとも高い水準なのだ。
一方、ビットコインのライトニング・ネットワークを利用すれば、同等の送金にかかる費用はわずか数セントで済む。
さらに、通貨の不安定性も主な要因となっている。2025年3月にナイジェリアの法定通貨のナイラが切り下げられた際、人々が貯蓄を自国通貨から移し替える動きが広がり、この地域全体のオンチェーン取引量が急増した。何世代にもわたり猛烈なインフレを経験してきた地域社会にとって、政府の管理下にない発行上限が固定された資産は、イデオロギー的な魅力よりも、実用的な価値をもつ存在なのだ。
Trezor Academyが世界に広げるビットコイン教育
Trezor Academyは、これまでに300回以上のミートアップ(交流会・勉強会)を開催し、2000人以上の修了者を輩出してきた。また、現在では30カ国以上で活動を展開している。同アカデミーは、各地域の教育者がそれぞれの母国語で現地の人々にビットコインを教える姿を中心に、このドキュメンタリーを構成している。
作品に登場したある教育者は、「このプログラムはアフリカのすべての人にビットコインを教えるわけではありません。私たちがここで行なっているのは、地元の教育者を通じてビットコインの種を蒔き、やがてその種からビットコインの循環型経済が育っていくようにすることです」と語っている。
本作品の公開に合わせて、Trezor Academyは自らのオンラインショップに寄付オプションを追加した。ユーザーは商品購入時に決済画面で寄付を行なうことも、商品を購入せずに寄付だけを行なうこともできる。寄付金はすべて、グローバルサウス(主に発展途上国や新興国)におけるワークショップやミートアップの開催、また各種プロジェクトへの支援に充てられる。