Home記事ニューヨーク・タイムズ紙がアダム・バックをビットコインの創設者と報じるも、バック本人は否定

ニューヨーク・タイムズ紙がアダム・バックをビットコインの創設者と報じるも、バック本人は否定

ニューヨーク・タイムズ紙は、文体分析と初期サイファーパンクとの類似性に基づき、アダム・バックがもっとも有力なサトシ・ナカモトの候補であると主張したが、バック本人と複数の専門家は確固たる証拠がないとして、この主張をきっぱりと否定した。

「ニューヨーク・タイムズ」紙は4月7日(米国時間)、英国の暗号学者で長年ビットコイン・コミュニティにかかわってきた人物であるアダム・バック氏が、匿名のビットコイン発明者であるサトシ・ナカモトのもっとも有力な候補であると主張する調査記事を掲載した。 

バック氏は記事の掲載前にその主張を否定し、記事内でも否定。さらに記事掲載後には、Xの投稿でも改めて内容を否定した。

「私はサトシではありません。しかし、暗号技術、オンラインプライバシー、電子マネーが社会にもたらすポジティブな影響に早くから強い関心をもっていました。そのため、1992年頃からcypherpunks(サイファーパンク)のメーリングリストで電子キャッシュやプライバシー技術に関する応用研究に積極的に取り組み、それがHashcash(ハッシュキャッシュ)やその他のアイデアにつながりました」と、バック氏はXに投稿した。

「ニューヨーク・タイムズ」の調査は、過去の電子メールやフォーラム投稿のテキスト分析に基づいている。その手法は、ダブルハイフンの使用や英国式のスペリングなど、文章のパターンに焦点を当てている。また、「ニューヨーク・タイムズ」は、初期の研究者たちがピア・ツー・ピア(P2P)システム、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)、ルーティングモデルといったビットコインの原型のように見える概念を探究していたこと、そして、バック氏のアーカイブされた文章にはその概念との重なりが高密度で含まれていることを指摘している。

1997年にHashcash(のちにビットコインの設計に組み込まれるPoWシステム)を開発したバック氏は、表面的な類似性は認めつつも、構造的な反論を提示した。 

彼は、1992年頃からcypherpunksのメーリングリストで電子キャッシュやプライバシーについての詳細を長々と書いていたため、自分の過去の文章は、投稿頻度がはるかに少なかった他の寄稿者と比べて、サトシの文章と照合されやすいだけだと主張した。 

「残りは偶然の一致と、似たような経験や興味をもつ人々による似通った表現の組み合わせに過ぎません」と、バック氏はXで説明した。

彼はまた、「ニューヨーク・タイムズ」の記事のなかで、記者とのインタビューにおける自身の発言の一部が“口が滑った可能性”として扱われた点についても言及。その発言は研究過程における確証バイアスについて述べたものであり、無意識的な自己暴露ではないと説明した。

「アダム・バック=サトシ・ナカモト」説に懐疑の声

今回の調査記事は、文書による証拠を提示していない。秘密鍵のデモンストレーションもなく、サトシのウォレットアドレスからの検証可能な直接通信もなく、記録に残るかたちでの証言も存在しない。この主張は、文体分析とパターン照合という一定の分析的価値をもつ手法に依拠しているものの、これまでのサトシに関する調査では、ビットコイン・コミュニティ全体に受け入れられるような結論は得られていない。

複数の信頼できる関係者が懐疑的な見解を示している。ブルームバーグのコラムニストであり、ポッドキャスト番組「Odd Lots」の共同ホストでもあるジョー・ワイゼンタール氏は、「証拠や結論に100%納得しているわけではない」と述べた。彼は、プライバシーやインターネットアーキテクチャに関する政治的見解の共有はサイファーパンクのコミュニティ全体に広く見られるもので、特定の個人を名指しするものではないと指摘した。また、ハイフンの使い方も人によって異なり、帰属の根拠としては脆弱であるとも指摘した。

CoinDeskの報道によれば、英国における初期のビットコイン参加者であるニコラス・グレゴリー氏も、個人的な交流に基づいて、バック氏がサトシであるとは考えていないと述べている。さらに、彼は実務的な懸念も指摘している。仮に誰であれ、その匿名の背後にいる人物が公に特定されれば、本人とその家族は物理的な危険に晒される可能性があるというのだ。暗号資産取引所のArkhamによると、サトシのビットコイン保有額は約730億ドルに相当するとされている。

主要メディアがサトシ・ナカモトの謎を解明したと主張するのは、今回が初めてではない。2024年のドキュメンタリー番組では開発者のピーター・トッド氏がサトシ本人であると指摘されたが、彼自身はその主張を否定し、最終的には説得力に欠ける結果となった。

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  • Micahは2018年に初めてビットコインと出会ったものの、しばらく懐疑的な立場を取り続けていました。2021年以降は暗号資産やビジネス分野の取材を行なっており、現在はノースカロライナ州を拠点にBitcoin Magazineのジュニアニュースリポーターとして活動しています。

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Micah Zimmerman
Micah Zimmerman
Micahは2018年に初めてビットコインと出会ったものの、しばらく懐疑的な立場を取り続けていました。2021年以降は暗号資産やビジネス分野の取材を行なっており、現在はノースカロライナ州を拠点にBitcoin Magazineのジュニアニュースリポーターとして活動しています。
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