ポリティコ(Politico)の報道によると、ホワイトハウスと米上院の主要議員は、ステーブルコインの利回り(イールド)をめぐる銀行業界と仮想通貨業界の長年の対立を解消すべく、規制法案の文言で暫定的な合意に至った。この進展は、米国内でのデジタル資産に対する連邦レベルの規制枠組み構築に向けた、歴史的な一歩となる可能性がある。
「預金流出」を防ぐための妥協点
今回の合意を主導したのは、トム・ティリス議員(共和党・ノースカロライナ州)とアンジェラ・オルソブルックス議員(民主党・メリーランド州)の超党派コンビだ。両議員は21日、「イノベーションの保護と金融安定性のバランス」を維持することで原則合意したと発表した。
特にウォール街の金融グループが強く懸念していたのは、ステーブルコインの報酬プログラムが既存銀行からの「預金流出(デポジット・フライト)」を引き起こすリスクだ。オルソブルックス議員は、「今回の合意により、イノベーションを守りつつ、広範な預金流出を未然に防ぐことが可能になる」と強調。ティリス議員も「前向きなステップ」と評価しつつも、最終的な詳細決定の前に業界関係者との協議が必要だと言い添えた。
合意の詳細はまだ伏せられているものの、初期の観測によれば、ステーブルコインの保有に対して発生する「受動的な利回り支払い」を禁止する方向で調整が進んでいる模様だ。
GENIUS法からCLARITY法へ:規制の屋台骨を作る
今回の規制案をめぐる攻防の背景には、2025年に成立した「GENIUS法」がある。同法は、デジタルドルに対する100%の裏付け資産、透明性、準備金の開示を義務付け、ステーブルコインの連邦枠組みを確立した画期的な法律だった。
現在、議会が取り組んでいるのは、通称「CLARITY法」と呼ばれるより広範なデジタル資産監視法案だ。これは、取引所、トークン、カストディ、そしてインフラ全般を米規制当局がどのように監督するかを定義するもので、いわば規制されたデジタル資産エコシステムの「背骨」にあたる。
対立の火種:利回りは「預金」か「インセンティブ」か
交渉が難航していた最大の理由は、規制下の取引所がステーブルコイン保有者に利回り報酬を提供することを認めるかどうかという点だ。
銀行側は、こうした報酬が「規制されていない預金類似製品」であり、FDIC(連邦預金保険公社)の保険対象口座から資金を吸い上げ、融資能力や金融システムの安定を損なうと主張してきた。対して、サークル(Circle)やコインベース(Coinbase)といった主要発行体を含む仮想通貨業界側は、市場競争力を維持し、デジタルマネーの普及を促すためには、こうしたインセンティブが不可欠だと反論している。
現在模索されている妥協案は、「単に保有するだけの受動的利回り」を制限する一方で、何らかの活動に基づいた報酬(アクティビティ・ベース・リワード)を認めるという中間的なアプローチだ。この合意が銀行と仮想通貨業界の両陣営から支持を得られるかどうかが、米国のデジタル資産規制の未来を占う決定的な要因となるだろう。