改正法が 成立、 暗号資産が 金商法の 枠組みへ
改正法は4月10日に国会へ提出され、6月11日に衆議院、7月15日に参議院で可決・成立した。施行は公布の日から1年以内に政令で定める日とされ、2027年度が見込まれている。
これまで暗号資産は、2017年施行の資金決済法のもとで、主に「決済手段」として規制されてきた。今回の改正は、その規制を金商法へ移し、有価証券とは異なる金融商品として、金商法の規制対象に位置づけるものだ。金融庁は、暗号資産が投資の対象として位置づけられるようになった状況を踏まえた見直しだと説明している。なお、ステーブルコインなど決済に関わる領域は、引き続き資金決済法のもとに残る。
改正で 何が 変わるのか
柱は、証券市場に準じたルールの導入である。
情報開示:発行者が存在する銘柄については、発行時や定期・臨時の情報公表が義務づけられる。ビットコインのように発行者が存在しない銘柄は、取り扱う取引業者が情報を公表する仕組みとなる。
インサイダー取引・不公正取引規制:暗号資産に対して初めて明文のインサイダー取引規制が設けられる。発行者・取引所・大量保有者などを対象に、公表前の重要事実に基づく取引が禁止される。相場操縦などの不公正取引規制も整備され、証券取引等監視委員会(SESC)の監視対象となる。
取引業者への規制:現行の「暗号資産交換業者」は「暗号資産取引業者」へ名称を変え、財務の健全性や業務管理体制の整備など、業規制が強化される。無登録業者への罰則も、拘禁刑3年から10年へ引き上げられる。
ETF・税制は 「今回決まった ことではない」
誤解が生じやすい点を分けて整理する。
今回決まったのは、暗号資産を金商法の規制対象として位置づけたことであり、これにより暗号資産を対象とするETFを組成しうる法的な土台が整う。一方で、次の点は今回の改正で確定したものではない。
Bitcoin ETF:ETFという商品そのものが認可・上場されたわけではない。日本取引所グループ(JPX)が2027年頃の上場可否を検討している段階で、片山さつき財務相も検討を進める意向を示している。制度の土台が整ったという位置づけであり、利用可能になったわけではない。
20%の申告分離課税:この税率を導入する税制改正法(所得税法等の一部を改正する法律)自体は、2026年3月31日にすでに成立・公布されている。ただし、実際の適用は金商法改正の施行を前提としており、施行が2027年度であれば、2028年(令和10年)1月1日以後の譲渡から適用される見込みだ。制度は定まっているものの、現時点で税率が変わったわけではない。
レバレッジ規制:現行の証拠金倍率は、今回変更されていない。緩和は、今後の政令や監督指針のレベルで議論されるとみられる。
Bitcoin市場に とっての 意味
Fact:施行は2027年度、税制の適用は2028年が見込まれる。ETFについても、上場・利用可能な商品はまだ存在せず、実現には金融庁による認可基準の整備などが前提となる。成立を受けても、市場価格に大きな即時反応は生じていない。。
Interpretation:これらを踏まえると、今回の改正は短期的な価格材料というより、Bitcoin市場を支える制度インフラの整備として理解するのが妥当だと考えられる。根拠は、情報開示や不公正取引規制、業者の健全性といった市場構造の要素が引き上げられる点にある。前提となるのは、こうした透明性と投資家保護の枠組みが、機関投資家が暗号資産を通常の資産として扱うための条件になるという見方である。ただし、規制対応のコストが事業者に重く働く可能性など、不確実性も残る。参議院の委員会が全会一致で採択した附帯決議も、今回の移管が「国によるお墨付き」ではないことの周知を求めている。
今後の 注目点
- 公布と、施行日を定める政令
- 責任準備金や取扱基準など、実務を左右する内閣府令の内容
- ETFをめぐるJPX・東京証券取引所の対応
- 申告分離課税の適用開始時期と、対象範囲(特定暗号資産の細目など)の明確化
- 証券会社や銀行など金融機関の参入
今回の成立は、日本の暗号資産制度にとって一つの転換点である。ただし、その実際の姿は、今後の政令・内閣府令や、税制・ETFをめぐる議論によって決まっていく。制度の土台ができた段階であり、市場への影響は、今後の運用整備とあわせて見極める必要がある。
(本記事は制度に関する情報を整理したものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。)





