ケンブリッジ・オルタナティブ・ファイナンス・センター(CCAF)による画期的な調査によれば、現在アメリカがビットコイン・マイニングを支配しており、世界全体のハッシュパワーの最大75.4%を占めているという。「アメリカは世界最大のマイニング拠点としての地位を確立した(報告された活動の75.4%を占有)」と、CCAFは述べている。この報告は、ビットコイン・ネットワークのハッシュレートのおよそ半分を占めるマイニング企業49社への調査結果に基づいている。
この集中度合い、つまりグローバルなハッシュレート796EH/s(エクサハッシュ毎秒)のうち約600EH/sがアメリカに集中しているという事実は、重要な懸念を投げかける。すなわち、ビットコイン・マイニングはアメリカで危険なまでに中央集権化してきているのではないか、そして、それはこの新興デジタル資産の将来にどのようなリスクをもたらすのか、という問いである。
米国商務長官であり、かつてカンター・フィッツジェラルドのCEOを務めたハワード・ラトニック氏は、トランプ政権がアメリカをビットコインの超大国にしようとする構想について、最近のインタビューで見解を語った。「ビットコインは金(ゴールド)のようなもの。私にとってはコモディティ(商品)だ」と、ラトニック氏は「Bitcoin Magazine」のフランク・コルヴァとのインタビューで話し、ビットコインが発行上限を2100万枚に固定している点を強調した。さらにラトニック氏は、米国商務省が主導するインベストメント・アクセラレーター(投資促進プログラム)を通じて、アメリカ国内のビットコイン・マイニング事業を「ターボチャージ(加速化)」させる計画を明らかにした。この制度は、マイナーがオフグリッド型の発電所を建設する際の許認可手続を迅速化するものだという。「データセンターの隣りに自前の発電所を建てられるんだ。ちょっと考えてみてほしい」と、ラトニック氏は語っている。
こうしたビジネス寄りの政策がアメリカ国内におけるマイニング・ブームを後押ししてきたことは間違いない。しかし、CCAFの調査結果は、その裏側にあるリスク、すなわちマイニングの中央集権化という問題を示唆している。
かつてビットコイン・コミュニティでは、中国によるハッシュレート支配への懸念が長らく続いていた。実際、2021年6月に中国政府がビットコイン・マイニングを全面禁止する以前、中国は世界全体のハッシュレートの65~75%を占めていた。「2019年には中国がビットコイン・マイニングの世界的な拠点であり、ネットワーク全体の65~75%を支配していた」と、2025年に発表された「ネイチャー・コミュニケーションズ」誌の研究も指摘している。その後の中国のマイニング禁止措置により、ハッシュレートは世界中に分散され、多くの事業者がアメリカへと移転した。アメリカは、エネルギー資源が豊富で規制が比較的緩やかな州を中心に、マイニングの新たな拠点として注目を集めた。この急激な変化により、ビットコイン価格は一時的に50%下落するなど市場は動揺したが、その年の後半には130%の価格上昇を記録し、市場の回復力と適応力を示す結果となった。
過去において、中国によるハッシュレートの集中がビットコイン・ネットワークの悪用に直接つながった例はなかったが、それは常に懸念材料であり続けた。そしていま、アメリカが全体の75%のハッシュレートを占める状況下において、同様のリスクが再び浮上している。現在のトランプ政権はビットコインに友好的な姿勢を示しているが、将来の政権が敵対的な態度をとる可能性は否定できない。その場合、中央集権化したハッシュレートをテコに、ネットワークへの統制を試みる恐れがある。中国のように全面禁止するのではなく、米国政府は将来的に規制強化やマイニング操作といった手段をとる可能性があり、制裁措置や行政命令といった執行権限を使って特定のトランザクションの検閲を行なうといった事態も想定される。こうした脅威は、ハッシュパワーの一極集中によってさらに深刻化する。
もっとも、アメリカの「連邦制」という政治構造は、ある種の防波堤となりえる。すなわち、連邦政府と各州の間に権限の分離があるため、連邦の過剰な干渉に対して抵抗が可能であるという点だ。実際にマイニング活動が活発な州においては、州政府や地域住民が「過度な規制はビットコインの価値を損ない、投資家に損失を与える」として、産業防衛の立場から反発することも考えられる。このような草の根レベルでの抵抗は、ビットコイン・ネットワークの健全性と分散性を守るうえで、重要な役割を果たすかもしれない。
アメリカによる金融制裁体制が弱体化しつつある現状は、ビットコインにとって有利に働く可能性がある。2022年にロシアの外貨準備資産が押収された一件を受け、アメリカの外交政策に同調しない諸国は、米国債の購入を控えるようになった。これにより、制裁の手段として多用されてきたフィアット(法定通貨)決済網が揺らぎ始めている。トランプ政権は、資金フローの管理ではなくモノの流通を規制する関税重視の方針へと転換しつつあり、これが金銭的な検閲リスクを緩和する可能性もある。この政策の方向転換は、中央集権的に偏ったハッシュレートが連邦政府の標的となる前に、ビットコイン側が対応するための「猶予期間」をもたらすともいえる。
とはいえ、アメリカ国内のビットコイン支持者たちは、今後も主体的な行動を取り続けなければならない。経済全体、ひいては世界経済のなかにビットコインをより深く根付かせることができれば、ネットワークに対する検閲的攻撃は市民の資産価値を直接損なうものとなり、強い反発を生むだろう。また、歴史が示すようにマイナーは強制移転にも適応してきた。中国の禁止措置がその好例だ。しかし、政府側もまた学習する。将来の米国政権は、マイニングを全面禁止するのではなく、むしろその中央集権性を利用してネットワークを統制しようと試みる可能性がある。
いま、ビットコイン業界は重要な岐路に立たされている。アメリカが最大75.4%のハッシュレートを占める現状において、たとえ控えめな推定値であっても、50%以上の集中は深刻なリスクだ。グローバルに分散化すべきか、それともアメリカの主導権を受け入れるべきか、その判断が問われているのだ。
ラトニック氏のヴィジョンが進展する一方で、われわれビットコイン支持者は、この主権的マネー(sovereign money)がどのような政権下でも揺るがぬ強さを保つよう努めなければならない。
