デジタル資産インフラ企業のBitGo Holdings社(NYSE:BTGO)は、機関が保有するビットコインに関連する量子コンピューティングのリスクを測定・軽減するための一連のツールを導入した。同社によると、これらの機能はUTXO(未使用トランザクション出力)ベースのウォレットおよびマルチシグネチャ(複数署名)カストディサービスに適用されるという。
今回のリリースは、BitGoがビットコイン向けに開発したマルチシグアーキテクチャを基盤としており、単一障害点を削減することを目的としている。新たに追加された機能により、顧客はウォレットキーの公開状況をより詳細に把握できるほか、UTXOをより適切に管理し、機関向けのウォレット運用のワークフローを活用できるようになる。
今回のローンチの中核となるのは、「 Quantum Risk Score (量子リスクスコア)」だ。これは、対応するビットコイン・ウォレット全体について、量子コンピューティングによる潜在的なリスクを評価するプラットフォーム内システムとなる。また、「 Fix Exposed Addresses Workflow(公開済みアドレス修正ワークフロー)」は、量子リスクへのエクスポージャーの高いアドレスから、より安全なキー管理が確保された新しいアドレスへ資金を移動させる手順を、顧客に提供する。
さらに、新たに導入された「 UTXO Selection Method(UTXO選択方式)」では、アドレスごとにコインをグループ化し、優先順位を付けることで、一部だけを使用する支出(部分支出)が引き起こすリスクを抑制する。また、デフォルトのアドレスタイプ制御も更新され、量子コンピューティングに関する懸念を高めるような取引パターンをウォレットが回避するようになっている。
ビットコインが量子攻撃に直面する可能性
このリスクは、ビットコイン・アドレスの仕組みに起因している。公開鍵がすでにブロックチェーン上に公開されているアドレスは将来的に、高性能な量子コンピューターが普及した場合、攻撃を受ける可能性がある。
推計では、公開鍵が露出しているアドレスには約690万 BTCが保管されている。TaprootやPay-to-Public-Key(P2PK)のように、作成時点で公開鍵が明らかになるタイプのアドレスに保管された資金は、今回のソリューションの対象外であり、別途対策が必要となる。
BitGoの共同創業者兼CEOであるマイク・ベルシェ氏は、「もっとも安全な鍵とは、その公開鍵がオンチェーンで一度も公開されたことのない鍵だと考えている。これらの機能により、機関は、マルチシグネチャの実証済みのセキュリティを引き続き活用しながら、量子コンピューターのリスクを把握し、そのリスクを軽減するための実用的な方法を得ることができる」と説明している。
BitGoは、現時点ではビットコインを破る量子コンピューターは存在しないとしている。一方、Blockstream社およびBitcoin Standard Treasury Company社(BSTR)の共同創業者兼CEOであるアダム・バック氏は、いまこそ量子対策を始めるべき理由について、「現在、ビットコインを破ることができる量子コンピューターは存在しない。しかし、だからこそいまのうちに取り組みを始めるべきだ。状況が落ち着いていて選択肢があるうちに始めるべきであり、緊急事態となってやむをえず対応を迫られるようになってからでは遅い」と語っている。
BitGoは、今回発表したツールは将来的にビットコインのプロトコルレベルで導入される耐量子署名へのアップグレードを補完するものであり、それに取って代わるものではないと説明している。
この機能は、サポートされているUTXOベースの資産とマルチシグネチャ構成に対応している。