Home記事なぜ、トランプ大統領の関税政策では壊れた法定通貨制度を修復できないのか?

なぜ、トランプ大統領の関税政策では壊れた法定通貨制度を修復できないのか?

トランプ大統領の関税では、彼の思惑通りにアメリカ経済を再活性化させることはできない。しかし、ビットコインなら関税にできないことを成し遂げられるかもしれない。

ドナルド・トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」政策は、成功をおさめた選挙キャンペーンの支柱であり、グローバルな貿易の枠組みをアメリカが有利に再構築することを約束するものだった。この政策には、企業に対して米国内での製造を奨励し、自由貿易やアウトソーシング(国外への業務移転)によって取り残された国内地域に雇用や産業、繁栄を取り戻すという狙いが含まれていた。

彼の主張によれば、労働力や輸送コストの著しく安価な国々で製造された価格競争力の高い輸入品に、アメリカは次第に依存するようになっていた。その結果、いわゆる「ラストベルト(Rust Belt:かつて重工業で栄えたが、産業の衰退により経済的苦境に陥っている米中西部および北東部の地域)」と呼ばれる州が現れ、地域のブルーカラー労働者たちは生活水準の低下を経験し、彼らが暮らす都市は空洞化していった。

この大規模な経済再構築のために選ばれた戦術は、どうやら貿易関税のようだ。特に中国からの輸入品に対して関税を課すことで、トランプ大統領は海外で製造された商品を消費者が購入するコストや、企業が製造業務をアウトソースするコストを引き上げようとしている。彼の主張によれば、これによってアメリカの産業の中心地に再び活力が戻り、危機の時代にあっても国家がより自立的になることが期待される。また、貿易赤字が縮小され、通貨操作(トランプ大統領は中国が行なっていると非難)に対するアメリカの脆弱性が低減され、消費への依存も抑えられると見込まれている。

トランプ大統領の関税政策におけるもうひとつの重要な側面は、米ドルに対する影響だ。外国からの輸入品に関税を課すことで、彼は米ドルの世界的な需要を低下させ、ドルを弱めようとしている。そうすることで、アメリカ製品の国際市場競争力が高まり、輸出が促進される。その結果、アメリカ経済に長期的な安定と繁栄をもたらし、自身を圧倒的に支持したブルーカラー層の有権者に報いることができる、とトランプ大統領は期待している。

しかしながら、関税にはその成功を不確実にする重大な経済的欠点があり、根本的な問題の解決にはつながらない。関税とは本質的に輸入品に対する税金であり、外国製品を高くすることで一部の国内生産者に短期的な利益をもたらす可能性はあるものの、同時にアメリカの消費者や企業にとっての輸入コストを上昇させることにもなる。これらのコスト増加に加え、貿易相手国からの報復関税が発動される可能性もあり、その結果としてアメリカの消費者は電子機器や衣類など多様な商品の価格上昇に直面し、経済成長が損なわれるおそれがある。

実際、中国はすでに34%の報復関税を発表しており、さらにはアメリカの知的財産権の保護を放棄することすら検討している。これはアメリカ企業にとって壊滅的な影響を及ぼしかねない。また、欧州連合(EU)に加え、インドやトルコもアメリカに対する対抗措置の準備を進めており、これによりアメリカの輸出は打撃を受ける見込みだ。アメリカは世界中がアクセスを求める巨大な国内市場をもつ一方で、アメリカ企業もまた世界各地の消費市場に強く依存している。関税には数多くの変数が絡んでおり、その影響は予測困難だ。そのため、関税はアメリカが抱える経済的苦境に対する即効性のある解決策とはなりえない。

さらに、数十年にわたるアウトソーシングを経て、国内産業を一朝一夕に復興させることは不可能といえる。質の高い製造業では機械設備、熟練労働者、インフラへの多大な投資が必要だが、こうした生産要素はアメリカ国内では大幅に衰退しており、その一方で中国のような国々は着実に前進してきた。この大きな隔たりは、たった数年で埋まるものではない。さらに、自動化やAI(人工知能)の導入が進んでいることも、製造業によってアメリカ国内の疲弊した地域に雇用や経済的繁栄を取り戻す可能性を低下させている。これらの技術革新により、物理的な労働力への依存度は今後ますます低下していくと考えられる。

仮にラストベルト諸州においてブルーカラーの仕事が急増したとしても、それはトランプ支持者が期待するような効果をもたらさないだろう。アメリカにおけるブルーカラー労働者の平均年収は約5万3000ドルであり、税引き後の手取り月収は約3300ドル程度になる。一方で月あたりの出費は、平均的な家賃が約1750ドル、健康保険料は約700ドル、食費は約350ドル、光熱費などの公共料金は平均して約600ドルとされている。言い換えれば、この平均的な給与水準では、ひとりで生活するのがやっとであり、家族を養ったり、パートナーを支えたりするには到底足りない。

アメリカ経済が直面している真の課題は、さらに根深い事柄に起因している。それは、1971年に米ドルが金本位制から切り離されたことに遡る。それ以前、米ドルは金(ゴールド)と結びついており、政府は保有する金準備に見合った額しか通貨を発行できなかった。この制度は通貨供給量に自然な制限を設け、インフレーションを抑制していた。しかし、リチャード・ニクソン大統領がドルの金兌換を停止したことにより、アメリカ政府は裏付けなしに通貨を自由に発行できるようになり、いわゆる「フィアット通貨(法定通貨)」の時代が到来した。

法定通貨とは、物理的な資産によって裏付けされていない通貨であり、基本的には政府が発行する借用証書(IOU)のようなものである。このような通貨制度は短期的には柔軟性をもつものの、長期的にはインフレを引き起こす。政府支出や国債の穴埋めのために通貨が増刷されるたびに、1ドルの購買力は低下していく。実際には、日々の物価やサービス価格が上昇し、それに対して賃金の伸びが追いつかないという状況を生む。これにより、人々が生活水準を維持することが次第に困難になる。1980年代には、ごく普通のブルーカラー労働者であっても家を購入し、車を所有し、家族を養うことが可能だったが、今日ではそれが極めて難しくなっている。まさに「量は質に転化する」という格言の通りだ。

アメリカが本当に必要としているのは、法定通貨に代わる選択肢であり、政府の政策ではなく市場の力によって価値が決まる通貨なのだ。そのような通貨は、数十年にわたる法定通貨政策によって悪化したインフレ圧力に対するヘッジ(リスク回避手段)となりうる。また、より公正な貿易の土壌を育み、中央銀行や従来の銀行制度、為替レートの変動に左右されない「価値の保存手段」として世界経済を安定させる可能性をもつ。幸いなことに、そのような通貨はすでに存在している。それがビットコインだ。

トランプ大統領の貿易関税政策が、ラストベルトの再活性化やアメリカ経済が抱える深層的な構造問題の解決といった目標を達成できる可能性は低い。なぜなら、生活水準の低下をもたらした根本的な要因、すなわち法定通貨と絶え間ない通貨発行によるインフレ圧力に対処していないからだ。これらの課題に立ち向かうためには、金融政策そのものの在り方を根本から見直す必要があるかもしれない。ビットコインは、その分散型の構造と発行上限という特性によって、いまや現実的な代替手段としての地位を築きつつある。


本記事はGhaffar Hussainによるゲスト寄稿です。記事内に述べられた意見は、完全に筆者個人のものであり、BTC IncやBitcoin Magazineの見解を必ずしも反映するものではありません。

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