イランは、石油の海上輸送においてもっとも重要な要衝のひとつであるホルムズ海峡を依然として強固に支配している。先週「フィナンシャル・タイムズ」紙は、イランが海峡通航に対して通行料を課す意向であり、その支払い通貨としてビットコインが指定されていると報じた。この驚くべき展開を、なぜビットコイナーたちは10年以上も前から予測していたのか、その理由を以下に説明する。
4月8日、「フィナンシャル・タイムズ」紙は「イラン、停戦中のホルムズ海峡通過船に暗号資産での手数料を要求」と題する記事を掲載したが、実際には暗号資産ではなくビットコインだった。この記事は、米国、イスラエル、イラン間の2週間の停戦期間中の動向、特にホルムズ海峡をめぐる状況を取り上げていた。戦前、ホルムズ海峡はタンカーによる世界の石油輸送の20%が通過しており、ヨーロッパやアジアを含む世界の多くの地域に供給されていた。記事によると、イランはホルムズ海峡を通過する船舶に対して通行料を課す意向を示している。この海峡は地理的要衝であり、イランは長距離ミサイル、水中機雷、攻撃ドローン技術を用いて厳重に管理している。

この記事には、イランの石油・ガス・石油化学製品輸出業者組合の広報担当者であるハミド・ホセイニ氏へのインタビューが含まれており、同氏は「フィナンシャル・タイムズ」紙に対して、石油タンカーがホルムズ海峡を安全に通過するためには、イランと積荷データを共有し、1バレル当たり1ドルの手数料をビットコインで支払う必要があり、「メールが届き、イランが評価を完了すると、船舶にはビットコインで支払うための数秒間が与えられ、これにより制裁によって追跡されたり没収されたりすることを防ぐことができる」と語った。
この報道はビットコイン・コミュニティに衝撃を与え、国際的なニュースとなり、ビットコイン価格は6万ドル台後半から7万3000ドルへと上昇した。イランがドルや人民元、金(ゴールド)ではなくビットコインを安全な通航の代金として要求したことは、現代世界におけるビットコインの貨幣としての優位性を深く認識していることを意味する。これは、ビットコイナーが10年以上前から主張してきた、ビットコインは敵対関係にある者同士でも使える中立的な貨幣であり、したがって国際貿易に理想的であるという理論を裏付けるものだ。
事実は明白だ。イランはドルを望んでいない。なぜなら、米国がすでに極めて厳しい制裁を課しており、西側諸国の決済ネットワークから排除されているためだ。イランは中国の通貨も望んでいない。なぜなら、それを受け入れれば別の大国に依存することになり、主権を手放すことになるからだ。金についても問題がある。船からイランへどのように輸送するのかという課題があり、事態を複雑にする。あるいは銀行システムを介して決済する必要があり、その場合は法定通貨と同様に制裁リスクが生じる。テザーゴールドも同じ理由で選択肢にはならない。制裁対象となりうる信頼された第三者がその資産を保有しているためであり、どれほど透明性が高く、暗号学的に検証可能な「オレを信じてくれよ」型のテクノロジーであっても、この事実を回避することはできない。
イランのように戦時下にある国にとって、支払いを受け取る手段として現実的に機能する選択肢はビットコインだけである。ビットコインのブロックチェーンは、高度に相互接続されたノードからなる国際的なネットワークであり、設計上検閲耐性をもち、制裁にも強く、迅速かつ安全なデジタル決済を可能にする。
イランが取得したビットコインは、マルチシグネチャのコールドストレージに保管される可能性があり、実際にすでにそうしている可能性も高い。これは有効な引き出しに署名するために複数の鍵を必要とする高セキュリティのビットコイン・アカウントの一種である。これらの鍵は世界中や、あるいはイラン国内の複数の地下要塞などに分散して保管することができるため、アクセスキーの没収や破壊は非常に困難となる。イランはビットコインとのかかわりも長く、過去にはビットコインの総マイニング能力の最大10%を保有していたと報じられており、この資産の利用と保管セキュリティに関しては深い経験を有している。
8日の早い時間、「フィナンシャル・タイムズ」紙の報道が出る前に、ドナルド・トランプ大統領はABCに対して、ホルムズ海峡の安全確保についてイラン指導部との共同事業が検討されていることを明かし、「共同事業として行なうことを考えている。これは安全を確保するための方策であり、同時に他の多くの勢力から石油資源を守るための方策でもある」と語った。これは、和平交渉が続き、国際的な石油取引の安定化に向けた妥協案が模索されるなかで、米国とイラン指導部との間で協議が行なわれていることを示唆している。
This morning, I asked President Trump if he’s okay with the Iranians charging a toll for all ships that go through the Strait of Hormuz, he told me there may be a Joint US-Iran venture to charge tolls:
“We’re thinking of doing it as a joint venture. It’s a way of securing it —…
— Jonathan Karl (@jonkarl) April 8, 2026
サウジアラビアはすぐに声明を発表。サウジ王室に近いコメンテーターのアリ・シハビ氏は「タイムズ・オブ・インディア」紙に、「イランに対して海峡のいかなるかたちの支配権を認めることは越えてはならない一線だ。最優先事項は、海峡を妨げられることなく自由に通航できることだ」と語った。
その直後に「フィナンシャル・タイムズ」紙の報道が出され、さらに続いてトランプ大統領が通航料徴収の考えを否定する声明を発表し、「イランは料金を課すべきではない」と述べた。彼はさらに、「イランがホルムズ海峡を通過するタンカーに料金を課しているという報道があるが、そんなことはあってはならない。もし徴収しているのであれば、いますぐにやめるべきだ!」と付け加えた。
しかし、イランはホルムズ海峡の通航料を撤回するだろうか? そして、なぜそうする必要があるのか?
戦争の現状と交戦国間の国際関係の劇的な悪化を鑑みると、ホルムズ海峡はイランにとってこの紛争における最大の強みとなっている。イラン政権は、軍事インフラへの大規模な爆撃や指導部の度重なる暗殺にもかかわらず、その強靭さを示してきた。同時に、ホルムズ海峡の航行を遮断することが可能な長距離兵器の能力を引き続き示している。これらの長距離兵器のコストは、海峡通過を試みる石油タンカーを防衛するために必要な迎撃ミサイルのコストよりもはるかに低く、戦争においては経済性が極めて重要となる。
トランプ大統領は記者会見でこの点を認めており、機関銃をもったイラン人ひとりだけでも安全な通航を阻止するのに十分だと述べた。彼は4月初めにCBSに対して、「いいか、海峡の問題は、誰かが機雷をもってきて水中に落として『危険だ』と言えば、それで済むことだ。あるいは岸から機関銃で船に数発撃ち込むだけでもいいし、肩撃ち式ミサイル、小型ミサイルでも同様だ」と語っている。
海峡を通過する船舶を攻撃するコストは、それを防衛するコストよりもはるかに低い。大規模な軍事的エスカレーションを伴わない限り、米国が軍事的な観点からこの海峡の安全を確保するためにできることは、実際には驚くほど限られている。理論上は、米国はイランとの戦争に勝利できるかもしれないが、その代償はどれほどのものになるのだろうか? 大量虐殺か、それとも地上部隊の投入と全面侵攻だろうか? 最終的にはイランへの核攻撃にまで踏み込むかもしれないが、いずれの選択肢も米国の国際関係や、現状では共和党が敗北すると予想されている中間選挙にどのような影響を与えるのだろうか? 政治的な代償はあまりにも大きくなる可能性がある。そして、仮にイランで新たな政権が誕生したとしても、その政権もまた、ホルムズ海峡を利用した同じ策略をいつでも試みることができるだろう。
この紛争に対する唯一の長期的な解決策は、おそらく外交である。そして、制裁耐性をもつ主権国家の貨幣としてビットコインがイランにもたらす交渉上の影響力は、今後の交渉において重要な役割を果たすことになるだろう。特に、ビットコインによってイランがホルムズ海峡の通航料を収益化できるようになった場合は、なおさらだ。
今後はどうなる?
ホルムズ海峡の通航料が維持され、外交または全面戦争のいずれによっても解消されない限り、海峡を通過しようとする石油タンカーは、一隻当たり数百万ドル相当のビットコインを調達する必要があるだろう。しかし、これは言うほど簡単ではない。というのも、西側諸国のほぼすべてのビットコイン取引所はイランとの取引を制裁によって禁止されているため、海運会社はそれを許可している管轄区域、おそらく東側諸国からビットコインを入手しなければならないからだ。そこで、中国やロシアなどの取引所に法定通貨で支払いを行ないビットコインを購入し、それを通航料としてイランに送金することになる。これは東側諸国におけるビットコインの需要を増加させ、結果として価格を押し上げる。さらにマイニングの収益性も向上し、ひいては近年米国に集中しているハッシュレートの分布を再び均衡させることになるだろう。
中国と日本はヨーロッパと同様に、ホルムズ海峡を通過する石油の主要な受益国であるため、これらの国々には、企業レベルおよび国家レベルでビットコイン取引を促進するだけでなく、マイニング機器を取得する動機も新たに生まれることになる。というのも、それが自国の石油取引を確実に保証する根本的に唯一の手段だからだ。
米国がその気になれば、イランへの通航料支払いに使われるビットコイン・トランザクションを検閲するよう、大手マイナーに圧力をかけることもできるだろう。しかし、東側諸国のハッシュレートが十分にある限り、それも失敗に終わるだろう。そして、この場合の経済的インセンティブは東側に有利に働いているように見える。