7月9日、米上院銀行委員会は「ウォール街からWeb3へ:未来のデジタル資産市場の構築」と題する公聴会を開催。超党派の上院議員たちが、暗号資産業界のリーダーやデジタル資産の専門家(公聴会の証人)と対話し、デジタル資産市場の構造について議論を交わした。
公聴会の主なテーマは、違法金融における暗号資産の役割、トランプ一家の暗号資産業界への関与に伴う利益相反、規制管轄権限の所在に関するものだった。
公聴会を主催したのは、上院銀行委員会委員長のティム・スコット上院議員(共和党/サウスカロライナ州)と同委員会筆頭委員のエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党/マサチューセッツ州)。6名以上の上院議員と6名の証人が参加し、2時間半にわたって議論が行なわれた。
証人として出席したのは以下6名だった。
- サマー・マーシンガー:ブロックチェーン協会 CEO
- ジョナサン・レヴィン:チェイナリシス社 CEO
- ダン・ロビンソン:パラダイム社 ゼネラルパートナー
- ブラッド・ガーリングハウス:リップル社 CEO
- ティモシー・マサド:ハーバード大学ケネディスクール研究員、元商品先物取引委員会(CFTC)委員長
- リチャード・W・ペインター:元ホワイトハウス倫理法主任弁護士
暗号資産と違法金融
スコット議員は冒頭の発言で、「違法行為の多くは暗号資産ではなく現金で行なわれている」と指摘。
これに対して、上院銀行委員会の筆頭委員であるウォーレン議員は異なる見解を示した。彼女は冒頭の発言で、暗号資産の時価総額が拡大するにつれて、ブロックチェーン上での違法行為も増加していると主張。さらに、北朝鮮が数十億ドル相当の暗号資産をハッキングした事例を挙げ、これが米国の国家安全保障に対する脅威となっていると述べた。
レヴィン氏はこの発言の背景を補足して説明。「ブロックチェーン上で行なわれている活動全体のうち、違法行為は1%未満だ」と指摘したうえで、この数字は従来型の金融市場のほうがもっと高いと付け加えた。
さらに「ブロックチェーン上の活動の大部分は合法的な活動だ」と続けた。
もっとも、レヴィン氏は、暗号資産ミキサーの存在によって、チェイナリシス社が公的ブロックチェーン上での犯罪行為を監視する業務が困難になっているとも指摘。ただし、テロ資金の調達においては、暗号資産ミキサーの利用は予想よりも少ない、とも説明した。
トランプ一家と暗号資産をめぐる利益相反
ラファエル・ウォーノック上院議員(民主党/ジョージア州)、クリス・ヴァン・ホーレン上院議員(民主党/メリーランド州)、そしてウォーレン議員はいずれも、ドナルド・トランプ大統領とその家族が暗号資産業界に積極的に関与しているなかで、トランプ氏が暗号資産関連の法案を推進することについて「利益相反」であると指摘した。
ウォーレン議員は冒頭の発言で、「トランプ大統領の資産のうち70億ドルが現在暗号資産になっている」と指摘。ウォーノック議員は、トランプ大統領がミームコインを発行したことの倫理性について疑問を呈した。
ヴァン・ホーレン議員は、トランプ大統領のアラブ首長国連邦(UAE)訪問に先立ち、エリック・トランプ氏が同国の投資会社と会談、自身の会社であるワールド・リバティ・ファイナンシャル社が発行したステーブルコインについて話し合った経緯を詳細に説明した(同社は最終的にこのプロジェクトに20億ドルを投資)。さらに、特定の暗号資産関連法案がワールド・リバティ・ファイナンシャルに利益をもたらす可能性があることにも言及した。
ペインター氏はセッションの冒頭で、「暗号資産関連の法案を可決・執行する立場にある人物が利益相反を犯すことは許されない、大統領すら例外ではない」と主張。「現在われわれが目撃しているのは、現職大統領による過去100年でもっとも深刻な倫理的・財務的違反のひとつだ」と断言した。
規制管轄権:CFTCとSECの権限分担
公聴会を通じて、マサド氏は、米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)が連携してデジタル資産業界を規制すべきだと主張した。
「議会が規制当局になることが解決策ではない。SECとCFTCが協力することが必要だ」と、マサド氏は述べた。
さらに、彼は「業界はSECとCFTCによる規制の隙間を悪用してきた」とも指摘した。
マーシンガー氏も、両機関の協力関係に期待を寄せていると述べたが、CFTCが暗号資産市場に対してより大きな権限をもつようにすべきとの考えも示した。彼女は、CFTCのほうが「原則に基づいたアプローチ」をとっており、それが「業界にとってよりよい」と主張した。
マサド氏は、このようなアプローチの重要性についてコメントし、「議会は詳細な規則ではなく、原則に基づいて考えるべき。なぜなら、詳細な規則はすぐに時代遅れになる可能性があるからだ」と述べた。
ケイティ・ブリット上院議員(共和党/アラバマ州)も、この「原則に基づくアプローチ」に賛成の意を示した。
「私たちは原則に基づいた規制体制を構築すべきであり、業界に対して過度に制限的な規制をかけることを防ぐべきだ」と、彼女は語った。
(ただし、マーシンガー氏、マサド氏、ブリット議員のいずれも、その「原則」が具体的にどういったものになるかについては明言しなかった。)
超党派の立法努力への言及
公聴会の中盤、バーニー・モレノ上院議員(共和党/オハイオ州)は、暗号資産は共和党対民主党という対立問題ではなく、むしろ「世代間の問題」であると述べた。
また、スコット議員は、シンシア・ルミス上院議員(共和党/ワイオミング州)とキルステン・ジリブランド上院議員(民主党/ニューヨーク州)が2022年から共同で起草してきた法案について称賛し、両議員が良識的な超党派の暗号資産法案の模範を示したと語った。
公聴会の終盤、ルミス議員は発言の中で、消費者を保護しつつイノベーターにも有益な法案をともに策定してくれたことに対して、ジリブランド議員に感謝の意を表した。
さらにルミス議員は、GENIUS法案をはじめとする一連の法案成立において、共和党と熱心に協力して取り組んできた民主党の同僚たちに謝意を示した。そして最後に、ビットコインおよびデジタル資産の先駆者であるサイファーパンクに関する感動的なモノローグで締め括った。
「1980〜90年代のインターネット黎明期、サイファーパンクたちはコードを作成し、暗号技術を駆使していた。政府はそれに恐れを抱き、NSAは暗号技術を“兵器”とみなし、一般の人々には公開すべきでないものとして分類した」と、ルミス議員は語り始めた。
「しかし、わが国の裁判所は、暗号技術やコードの作成は合衆国憲法修正第一条に基づく“言論の自由”として保護されると判断した。これが大きな転機となった。非常に優秀な頭脳たちがオープンソースを通じて互いに暗号技術やコードを共有できるようになり、2009年に史上初のデジタル資産が誕生する土台が築かれた」と、彼女は続けた。
「そして、いま、2009年から今日に至るまで、私たちは成熟した業界を目の前にしており、その業界は“明確なルール”を私たちに求めている。私たちは、イノベーターたちが世界経済において正当な地位を確立できるよう支援するために、まさに適切なタイミングで適切な場所にいる。ビットコインは、わが国にとって、個人の自由にとって、そして銀行口座を持たない人々や充分な金融サービスにアクセスできない人々にとって、重要な資産であり、人々に富を増やす機会を提供してくれるものだ。価値が下がり続けるよう、意図的に設計された米ドルとは対照的に」