Home記事ビットコイン・レイヤー2:ビットコインのスケーラビリティを実現する鍵

ビットコイン・レイヤー2:ビットコインのスケーラビリティを実現する鍵

ビットコインやその他のブロックチェーンは、堅牢かつ分散化されたシステムである。しかし、これらはスケールしない。これを機能させるためには、階層化されたアプローチが必要だ。

ビットコイン、ひいてはすべてのブロックチェーンはスケールしない。これはブロックチェーン技術に内在する根本的な限界であり、分散性や検証可能性といった本来的な価値を完全に犠牲にしない限り、真にグローバルな規模での取引利用を実現することはできない。

この問題は、ビットコインが誕生した当初からビットコイナーたちが向き合ってきた“実存的問題”である。以下は、サトシ・ナカモトが暗号学メーリングリストに初めてビットコインを投稿した際、最初に返信した人物であるカナダのサイファーパンク、ジェームズ・A・ドナルドによるコメントである。

サトシ・ナカモトはこう書いている:

「帯域幅の問題は、あなたが考えているほど制限的ではないかもしれない。標準的なトランザクションは約400バイトほどだ(楕円曲線暗号(ECC)は非常にコンパクトだ)。すべてのトランザクションは2回ブロードキャストされる必要があるため、1件あたり1KBとして計算しよう。Visaは2008年度に370億件のトランザクションを処理しており、1日平均では1億件となる。この件数を処理するのに必要な帯域幅は100GBであり、これはDVD12枚分、もしくはHD画質の映画2本分のサイズに相当する。現在の価格で約18ドル分の帯域幅で済む。

問題なのは、あなたが既存のBankcardネットワークと比較している点である。

だが、新しい通貨は古い通貨と正面から競争できない。なぜなら、ネットワーク効果は既存のものに有利に働くからだ。

新しい通貨は、Bankcardが届かない領域に向かうべきである。

現状、ファイル共有は“ビットの物々交換”によって成り立っている。だがこれは『欲望の二重の一致』を必要とする。つまり、人々は自分がダウンロードしているファイルのみをアップロードし、ダウンロードが完了すればシード(アップロード)を止めてしまう。そのため、同時に多くの人が欲しがる“人気ファイル”だけが共有可能な状態になる。

ファイル共有を実現するには、極めて安価な取引が必要であり、各クライアントが毎日複数の取引を行なうことになるため、月単位の取引コストはごくわずかでなければならない。したがって、ビットコイン上でファイル共有を支えるには、ビットコインの上位レイヤーにアカウント型マネーを構築し、最小単位の100万分の1程度の小額取引を可能にする必要がある。さらに匿名性を確保するには、そのアカウント型マネーの上にチャウム型マネー(chaumian money)を重ねる必要がある。

ここでは、ビットコインを預かる銀行を“ビンク(bink)”と呼ぶことにしよう。ビットコインとアカウント・マネーの関係は、かつての金本位制における金と紙幣の関係に似ている。ビンク同士は互いの流動性を完全には信用しておらず、流動性が最も求められる瞬間に備えて、定期的にネット残高の差額を解消するためにビットコインを移動させる。たとえば、10万秒ごとに一度、ビットコインが動くだけでもよい。そのため、ビットコインはそれほど頻繁に所有者が変わらない。ほとんどの取引はアカウント・マネーのレベルで相殺されるからである。ビンクがビットコインを互いに要求するのは、アカウント・マネーを長期間保有したくないからである。こうして、比較的少量であまり移動しないビットコインが、より頻繁にやりとりされるアカウント・マネーを支える仕組みになる。」

 

ブロックサイズ戦争の時代、いわゆる「ビッグブロッカー(※大きなブロックサイズによってスケーラビリティを実現しようとする立場の人々)」の登場、そして多くの初期ビットコイナーたちによる「単にブロックサイズを拡大すればシステムはスケールする」という素朴な前提にもかかわらず、有識者や熟練のエンジニアたちは当初から、これがビットコインの本質的な価値提案――すなわち分散性と検証可能性――を損なうことを理解していた。

ビットコインの初期開発者であり、サトシ・ナカモトから最初にビットコインを受け取った人物として知られるハル・フィニーも、この「基盤となる決済レイヤー(settlement layer)」の必要性について言及していた。

レイヤー構造によってスケーリングすることは、ビットコインを長期的に機能させる唯一の合理的な計画であった。しかし、ビットコイン初期の長い期間においては、「信頼できる第三者(trusted third parties)に依存することなく」それを実現する方法を見つけることは困難であった。

その解決策として最初に提案されたアイデアのひとつが「サイドチェーン(sidechain)」である。これは、メインチェーン(本体のビットコイン・ブロックチェーン)に連動する独立したブロックチェーンであり、ユーザーがビットコインをメインチェーン上でロックし、それに対応する形でサイドチェーン上でその価値を利用できる仕組みである。そして、いつでもサイドチェーン上での正当な所有権を証明することで、メインチェーン上で資金をアンロック(引き出し)し、元に戻すことができるよう設計されている。

しかしながら、こうしたサイドチェーンのシステムは現在に至るまで、以下のいずれかの問題を回避する方法を見出せていない。
1)どれほど慎重に設計されたとしても、何らかの形で「信頼された第三者」の介在を導入してしまう点。
2)もしくは、ビットコインのメインネットワーク(主鎖)に対して「中央集権化の圧力」をもたらすという点である。

ビットコイン黎明期以降、より優れた方法でレイヤー2システムと連携するアイデアが数多く登場してきた。特に「ライトニング・ネットワーク(Lightning Network)」や「アーク(Ark)」のような仕組みでは、ユーザーが一方的に(unilateral)メインチェーンへ資金を引き出せることが特徴である。これは、特定のオペレーターの許可や承認を必要とせずに出金できるという点で、従来の中央集権的な構造と大きく異なっている。

トランザクション処理能力を高めつつも、ビットコインの持つセキュリティ特性を損なうことなく、第三者によるカストディと区別がつかないような状態に陥らせない――この課題をどう解決するかは、ビットコインが長期的に真の成功を収めるうえで最も重要なテーマのひとつである。

本記事シリーズでは、ビットコインのレイヤー2に関するさまざまなアーキテクチャを紹介する。現在ネットワーク上で稼働中のものだけでなく、まだ提案段階にある設計も取り上げる予定である。

以下に、本シリーズで扱う予定のレイヤー2システムを示す。ただし、レイヤー2の設計領域は多くの人が思っているよりも遥かに広大であり、このリストは包括的なものではない。また、今後追加の解説記事に応じて更新される予定である。

  • アーク(Ark)
  • ステートチェーン(Statechains)
  • ライトニング・ネットワーク(Lightning Network)
  • サイドチェーン(Sidechains)
  • クリク(Clique)
  • ロールアップ(Rollups)
  • クライアントサイド・バリデーション・システム(Client Side Validated Systems)
  • イーキャッシュ(Ecash)
  • カストディアル・システム(Custodial Systems)
  • 物理的ベアラー証券(Physical Bearer Instruments)

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  • Shinobi(シノビ)は、ビットコイン分野における匿名の独学教育者である。彼は、ニュースや技術に焦点を当てたビットコインのポッドキャスト「Block Digest(ブロック・ダイジェスト)」の共同ホストを務めたほか、ピーター・マコーマックと共に、非技術系ユーザーに技術的な概念をわかりやすく解説する「What Bitcoin Did Tech Show」にも出演していた。彼が自分について語るのは、これだけである。

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Shinobi(シノビ)は、ビットコイン分野における匿名の独学教育者である。彼は、ニュースや技術に焦点を当てたビットコインのポッドキャスト「Block Digest(ブロック・ダイジェスト)」の共同ホストを務めたほか、ピーター・マコーマックと共に、非技術系ユーザーに技術的な概念をわかりやすく解説する「What Bitcoin Did Tech Show」にも出演していた。彼が自分について語るのは、これだけである。
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