4月7日(米国時間)、FBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)は2025年の年次報告書を公表し、昨年、暗号資産関連の詐欺によってアメリカの被害者から113億ドル以上が奪われたことを明らかにした。この金額は全米で現在報告されているサイバー犯罪による損失全体の半分以上を占めている。
FBIのIC3プラットフォームを通じて収集されたデータをまとめたこの報告書によると、合計100万8597件の被害報告が記録され、総損失額は208億7700万ドルに達し、2024年から26%増加した。
この驚異的な被害総額のなかで、暗号資産関連だけで18万1565件の被害と113億6600万ドルの損失が報告されており、デジタル資産は本報告書で追跡されたカテゴリーのなかで最大の損失を記録した分野となっている。
参考までに、暗号資産詐欺による損失額は2017年に約2700万ドルだったが、2025年にはその額が400倍以上に膨れ上がっている。
暗号資産投資詐欺が最大の脅威
この犯罪の中心にあるのは暗号資産投資詐欺であり、FBIはこれを「心理的操作、正当性を装う手口、暗号資産の悪用によって被害者を騙し、多額の資金を投資させる長期的な詐欺の一種」と説明している。
これらの詐欺行為は2025年に72億ドルの損失を生み出しており、同年におけるアメリカ人への経済的被害の最大の要因となった。
その手口には一定のパターンがある。犯罪者はまず、テキストメッセージ、ソーシャルメディア、出会い系アプリ、デジタル広告などを通じて被害者に接触する。被害者は、知識豊富な内部関係者が主導する限定的な投資グループのようなものに引き込まれ、その後、偽の利益を表示し、さらなる投資を促すために融資まで提供する不正プラットフォームに暗号資産を送金するよう指示される。
被害者が出金を試みると、詐欺師は税金や手数料の支払いを要求し、その後、預けられた資金すべてとともに姿を消す。
FBIは、これらの犯罪活動の拠点が東南アジアの組織的犯罪ネットワークにあると特定しており、特にカンボジア、ラオス、ミャンマーでは、人身売買の被害者を強制労働させて利用し、詐欺拠点を運営していると見ている。
暗号資産が詐欺犯罪の決済手段に
この報告書は、暗号資産の役割を投資詐欺だけに限定していない。デジタル資産はあらゆる詐欺における主要な支払い手段となっており、投資詐欺取引の72%、テクニカルサポート詐欺取引の43%、政府機関なりすまし詐欺の支払いの40%で暗号資産が使用されている。このデータは、複数の犯罪カテゴリーにわたって、詐欺師が資金の引き出しと移動のための主要な手段として暗号資産を標準的に採用していることを明確に示している。
より広範な犯罪カテゴリーとしての投資詐欺の損失額は86億4800万ドルに達しており、そのなかで暗号資産関連の詐欺が最大の割合を占めている。デジタル資産を利用したテクニカルサポート詐欺だけでも、12億2600万ドルの損失が発生している。
高齢者が最大の被害者
あらゆる年齢層のなかで、60歳以上のアメリカ人がもっとも大きな被害を受けた。この年齢層は暗号資産関連の被害を4万4555件申し立て、44億3000万ドルの損失を被っており、どの年齢層よりも大きな損失となった。暗号資産投資詐欺のサブカテゴリーでは、60歳以上のグループは27億6000万ドルの損失を報告しており、50〜59歳のグループの13億8000万ドルと比較しても被害が大きい。
暗号資産ATMやキオスクを利用した詐欺(犯罪者がQRコードを使って被害者を物理的な端末へ誘導する手口)は、1万3460件の被害と3億8900万ドルの損失をもたらし、2024年と比べて損失は58%増加した。
高齢者はそのうち6188件の被害を申し立て、2億5750万ドルの損失を被っている。これは全体の約66%に相当する。
さらにリカバリー(資金回収)詐欺(過去に暗号資産詐欺の被害に遭った人に対して、失った資金を取り戻すと約束して再び狙う手口)では、1万516件の被害と14億ドルの損失が発生。この分野でも60歳以上のグループの被害が最多で、リカバリー詐欺だけで5億4050万ドルの損失が報告されている。
当局は受け身ではない。2024年1月に開始された「オペレーション・レベルアップ」は、IC3の被害報告データを活用して、暗号資産投資詐欺の被害者がまだ詐欺に遭っている最中に特定し、通知を行なう取り組みだ。2025年だけでも、この作戦は3780人の被害者に通知を行ない、推定2億2580万ドルの詐欺被害を防いだ。通知を受けた人の78%は、自分が詐欺の標的になっていることにまったく気づいていなかったという。ある事例では、被害者が401(k)から75万ドルを引き出して詐欺師に送金するのを捜査官が阻止した。別の事例では、女性が50万ドルの「投資」資金を調達するために自宅を売却するのを防いだ。
別の取り組みである「米国連邦検事局コロンビア特別区詐欺対策センター特別捜査班」は、司法省(DOJ)、FBI、シークレットサービス、国務省、財務省外国資産管理局(OFAC)を統合し、東南アジアの詐欺拠点の摘発と解体に取り組んでいる。この特別捜査班は、地域全体で活動する中国系組織犯罪グループを標的とし、彼らが悪用する米国内のインターネットインフラの遮断にも取り組んでいる。
オペレーション・レベルアップの開始以降、FBIは通知を受けた被害者全体で5億ドル以上の損失被害の防止を報告しており、この数字を、未報告の被害者の多さを考慮すると上限ではなく最低限の金額であると見ている。