現物市場への参入を本格化させる「Schwab Crypto」
米金融サービス大手のチャールズ・シュワブ(Charles Schwab)が、暗号資産(仮想通貨)の現物取引市場への参入に向けた動きを加速させている。同社は、自社プラットフォーム上でビットコイン(BTC)およびイーサリアム(ETH)の直接売買を可能にする新サービス「Schwab Crypto™」のウェイティングリストを公開した。
このサービスは、グループ傘下の「Charles Schwab Premier Bank, SSB」を通じて提供される。現在は早期アクセスに向けた登録を受け付けているが、実際の利用には同社による審査や資格要件の充足が必要だ。また、サービス提供地域には制限が設けられており、米国外および米国内のニューヨーク州、ルイジアナ州の居住者は対象外とされている。
代表的な投資手段から「直接保有」への選択肢拡大
今回の「Schwab Crypto」導入は、同社のデジタル資産戦略における重要なステップだ。これまでシュワブの顧客にとって、暗号資産関連株や先物市場、あるいは現物連動型のETP(上場取引型金融商品)やETF(上場投資信託)が代表的な投資手段として利用されてきた。
具体的には、ストラテジー(Strategy)やコインベース(Coinbase)といった企業の株式を通じたエクスポージャーが中心であったが、今後はこれらに加え、シュワブのプラットフォーム内で直接資産を保有する選択肢が加わる。これにより、既存の暗号資産ネイティブな取引所だけでなく、ロビンフッド(Robinhood)などのフィンテック勢との競合構造も新たな局面を迎えることになる。
2025年「GENIUS法」成立がもたらした転換点
リック・ワースターCEOは以前から現物取引参入に前向きな姿勢を示しており、2026年前半のサービス開始を目指す計画が報じられてきた。同社がこのタイミングで舵を切った背景には、米国内の規制環境が整理されたことが挙げられる。
特に2025年7月に成立した「GENIUSステーブルコイン法(GENIUS Act)」は、米国内の金融機関がデジタル資産を取り扱う上での法的な不確実性の解消に向けた大きな前進となった。FRB(米連邦準備制度理事会)による過去のガイダンス撤回などの動向も合わせ、伝統的な金融機関が現物売買をインフラとして組み込む土壌が整ったと言える。同社は今後、独自ステーブルコインの検討も含めたさらなる製品拡充も視野に入れている模様だ。
成熟するビットコイン市場:主要ハイテク株を下回るボラティリティ
シュワブが2026年3月に発表した最新レポートによれば、ビットコインの資産としての性質は着実に変化している。2025年におけるビットコインのヒストリカル・ボラティリティは42%を記録した。これは、同時期のテスラ(Tesla)の63%やエヌビディア(Nvidia)の50%を下回る数値だ。
もちろん、2025年には最大32%のドローダウンを記録するなど、特有のリスクは依然として存在する。しかし、機関投資家による採用拡大や現物ETFの普及を経て、ビットコインが主要なハイテク株と同等、あるいはそれ以上に安定した投資対象へと変貌を遂げつつある事実は、伝統的金融機関であるシュワブが参入を判断した背景のひとつとなっている。