ドナルド・トランプ大統領は今週、かつてのFTX CEO、サム・バンクマン・フリード(SBF)を恩赦するつもりは毛頭ないと明言した。米国史上最大級の金融詐欺を主導し、現在連邦刑務所で長い服役生活を送る男に、救いの手は差し伸べられない。
The New York Timesのインタビューにおいて、トランプは数名の著名な受刑者に対する恩赦の可能性を問われた。そのリストの中には、2023年に顧客資金数十億ドルを流用した罪で有罪判決を受けた、あの「元・仮想通貨ビリオネア」の名前もあった。
同紙によれば、トランプの回答は簡潔だ。「検討していない」。
この一言は、仮想通貨業界や政界の一部でくすぶっていた数ヶ月にわたる憶測に、完全な終止符を打つものだ。トランプ自身が連邦検察をたびたび批判し、過去に恩赦権を積極的に行使してきた経緯から、SBFもまたその「カード」を切れるのではないか──そんな見方が一部には存在していたからだ。
SBFは2024年11月、通信詐欺や共謀など7つの罪状で有罪評決を受け、懲役25年の判決を言い渡されている。検察当局が暴いたのは、顧客資金を自身のヘッジファンド「アラメダ・リサーチ」の穴埋めに流用しつつ、表向きはFTXを「安全でコンプライアンス遵守の取引所」と偽る、極めて悪質なスキームだった。その崩壊は数千億円規模の資産を消失させ、世界的な規制強化(クラックダウン)の引き金を引いたことは記憶に新しい。
SBF陣営の「恩赦」への布石
有罪判決以降、SBFとその取り巻きは、なりふり構わぬイメージ戦略を展開してきた。全ては、大統領からの「恩赦」を引き出すための布石に見えた。
2024年初頭、獄中からタッカー・カールソンのインタビューに応じたSBFは、自身を「誤解された悲劇の主人公」として演出し、政府の介入さえなければ顧客は救済(Make Whole)されたはずだと強弁した。このインタビューが保守層、そしてトランプに近いメディアへの秋波であることは明白だった。
同時期、スタンフォード大学の法学者である両親も動いた。裁判所に宛てた手紙で息子の慈善的な意図を強調し、数十年にわたる収監は過酷すぎると訴えたのだ。これはトランプへの直接的な嘆願ではないにせよ、SBFを「希代の犯罪者」ではなく「欠点はあるが悪意なき人物」へと再定義しようとする、より大きな戦略の一部だった。
さらにSBFは、政治的な立ち位置の修正も図っていた。2022年のサイクルでは民主党への巨額献金者として名を馳せたが、後に「実は共和党にも同額を裏で寄付していた」「バイデン政権には失望した」と主張を変えたのだ。これもまた、民主党との距離を置き、共和党政権下での恩赦に望みを繋ぐための露骨なポジショニングと解釈された。
明暗分かれる「クリプト・パードン」
だが、トランプは冷ややかだった。バイデン政権下で訴追された盟友たちを「司法の武器化による犠牲者」と擁護することはあっても、SBFの事件はその文脈には当てはまらない。捜査はバイデン就任前から始まり、明白な顧客被害と内部記録に基づいていたからだ。
皮肉な対比がある。トランプ大統領は2025年10月、Binance創設者のChangpeng Zhao(CZ)に対し、2023年のマネーロンダリング違反に関する有罪答弁を受けての恩赦を与えている。ホワイトハウスはこれを「バイデン政権による仮想通貨戦争の終結」と位置付け、Binanceの米国市場への再参入への道を開くものとした。
勝者と敗者、そして罪の重さ。トランプの裁定は、SBFにとってあまりにも重く、そして最終的な「宣告」となったのである。