ビットコインを下落局面で売る者もいれば、逆に積極的に買い増す者もいる。これまでのところ優勢なのは買い増し派だが、最終的にどちらの戦略が賢明なのかは時が経てばわかるだろう。
エルサルバドルは、今年最大級の市場下落にもかかわらず、積極的なビットコイン備蓄戦略を推し進めている。中米の同国は火曜日、同国のビットコイン・オフィスのデータによると、11月18日、この中米の国は1091 BTC(約1億ドル相当)を購入した。
その後、ナジブ・ブケレ大統領はXにスクリーンショットを投稿し、政府が過去7日間で1098.19 BTCを蓄積し、同国の総保有量が7474.37 BTC、評価額にして約6億8800万ドルに達したことを明らかにした。
エルサルバドルは「一日1 BTC」の購入を継続しており、この方針はブケレ大統領が2022年11月に導入して以来、あらゆる市場サイクルを通して維持されてきた。この戦略はエルサルバドルのデジタル資産準備に対するアプローチの特徴となっており、IMFをはじめとする国際機関が公的セクターによるさらなる蓄積を抑制しているなかでも継続されている。
同国政府の開示資料によれば、「一日1 BTC」プログラムによって準備金は着実に増加しており、当局は購入を停止する予定はいっさいないと主張している。
エルサルバドルのビットコイン・オフィスのディレクターであるステイシー・ハーバート氏は、ビットコインを「自由、透明性、そして個人のエンパワーメント」と称し、この政策は経済力を中央集権化するのではなく、分散させたいという意志を反映していると語った。金融アナリストは、エルサルバドルは市場の弱さに対して公然と買い向かう数少ない主権国家のひとつだと指摘している。
今回の購入は、ブケレ政権がデジタル資産の監督に関して米国当局との連携を強化するなかで行なわれた。ブケレ大統領は6月にホワイトハウスの暗号資産顧問のボー・ハインズ氏と会談し、国境を越えるビットコイン取引に影響を与える規制に関して継続的な協議を行なっていた。
エルサルバドルの確固たる姿勢は、市場全体が厳しい局面を迎えるなかで示された。11月18日、ビットコインはアジア市場で9万ドルを割り込み、24時間で最大4.9%下落した。本稿執筆時点では、「Bitcoin Magazine」のデータによると、9万1768ドル付近で取引されている。
短期保有者(90日未満の保有者)は、約14万8000 BTCの損失を伴うパニック売りに陥り、これは4月以来最大規模の投げ売りとなった。アナリストは、この売りは過去の市場高値局面で見られた動きを反映しており、まだ終息していない可能性があると指摘している。
この売り圧力は、190億ドルのレバレッジ・ロングポジションが清算され、連鎖的なロスカットが引き起こされたことで加速した。ビットコインは現在、10月の史上最高値である12万6000ドル付近から26%以上も下落している。
ビットコインが8万〜9万ドルのレンジで安定すれば、エルサルバドルによる今回の“9ケタ規模の購入”は、今年もっとも鋭いマクロ戦略のひとつと評価される可能性が高い。
エルサルバドルのビットコイン採用
エルサルバドルの“ビットコイン実験”はすでに4年目に突入し、世界でもっとも注目される金融政策転換のひとつとなっている。
同国は2021年9月、ビットコインを法定通貨として採用した世界初の国家となった。この歴史的な動きは、金融包摂を促進し、投資を誘致し、経済を近代化するための戦略としてブケレ大統領が推進した取り組みだった。
国営のウォレット「Chivo」やさまざまなインセンティブに支えられたこの導入は、世界的な注目を集める一方で、ボラティリティと財政リスクを懸念するIMFや従来型の金融機関からの批判も招いた。
前述の通り、初期の技術的課題や2022年の急激な市場下落にもかかわらず、ブケレ政権はビットコイン戦略をさらに強化。「一日1 BTC」の購入を実施し、「ビットコイン・オフィス」を設立し、ビットコイン担保債券や構想中の「ビットコイン・シティ」計画を推し進めた。

また、政府は自国の財務アドレスを透明性をもって公開することにも取り組み、国民が国家のオンチェーン保有状況を追跡できるようにした。
この政策をめぐる世界的な議論は依然として決着をみていないものの、エルサルバドルの「ビットコイン・ファースト」のアプローチが同国の経済状況を一変させたことは間違いない。
ブケレ大統領は、国内での利用率が限定的であるにもかかわらず、ビットコインの導入をエルサルバドルの国際的イメージ向上、観光客誘致、投資促進のための戦略的な動きと見なしている。その目的は即時の国内普及ではなく、エルサルバドルをデジタル革新を推進する将来志向の国家として再構築することにあると、彼は強調している。