Twitterの共同創業者兼元CEOのジャック・ドーシー氏によって設立されたBlock, Inc.は、子会社を通じてビットコイン業界との包括的な連携を深めている金融テクノロジー企業だ。傘下の企業は、ビットコインを統合した決済アプリや小売業者向けツール、ビットコイン・マイニングハードウェア開発、オープンソースソフトウェア開発、ピア・ツー・ピア(P2P)市場向けの分散型金融プロトコル、さらにはセルフカストディ(自己管理型)ハードウェアウォレットなど、幅広い分野で活動している。
もともとSquare Inc.という社名で2009年に設立された同社は、2014年にもっとも有名な子会社であるCash Appを通じてビットコインを自社の技術提供に統合し始め、小売業者がアプリを通じてビットコインの支払いを受け入れることを可能にした。2021年、Square Inc.は社名をBlock Inc.に正式に変更、ビットコインへのコミットメントを強化し、ビットコイン・ブロックチェーンが極めて重要な役割を果たすという将来へのヴィジョンを明確にした。SquareはBlock Inc.の子会社となり、現在は主に決済端末技術を扱っている。現在、Block Inc.はバランスシートに8584 BTCを保有しており、その評価額は約10億ドルに達し、1 BTCあたりの平均購入価格は3万405ドルとなっている。
Block Inc.の子会社や投資先のほとんどは、Cash App、Bitkey、Proto、Spiral、TBD、Tidalなど、ビットコインやブロックチェーンシステムと明確なつながりを持っている。これらの企業はいずれも、業界のさまざまなレベルでビットコインの普及を推進しており、ビットコイン領域への影響力の高まりとともに、コミュニティからの謝意を集めている。ドーシー氏は、ビットコインのオープンソース開発に資金を提供するOpenSatsなど、さまざまなビットコイン関連の非営利団体やコミュニティ活動への主要な寄付者であり、ビットコイン・ネイティブのソーシャルネットワークプロトコルであるNostrなどはその大部分がOpenSatsを通じて立ち上げられた。
「Bitcoin Magazine」との独占インタビューで、Block Inc.のプロダクトリードであるマイル・スーター氏は、同社の未来のヴィジョンと、そのなかでビットコインが果たす理想的な役割についての洞察を共有した。「ビットコインは日常のお金として使われることで、その究極の目的を達成すると、私たちは考えている。まさにサトシ・ナカモトが意図した通りだ。ビットコインが誰でもアクセスできるグローバルな金融インフラとして機能すれば、Block Inc.のような企業はよりグローバルに事業を展開できるようになる。そして、決済機能はビットコインの独自性を支える中核的な特性を維持するために不可欠であり、最終的にはそれがビットコインの長期的な成功をもたらすと考えている」と、スーター氏は語った。
以下では、Block Inc.のビットコイン関連企業、特に小売業向けにサービスを提供している企業について、ハイパービットコイナイゼーションへの道筋でこれらの企業が果たす重要な役割に関するスーター氏のコメントとともに、簡単に概説する。
Square
2009年に設立されたSquare Inc.は、加盟店がカード決済を受け付け、在庫管理、給与計算、事業融資などの業務を管理できるPOSシステムを提供する企業だ。2024年時点で400万の加盟店にサービスを提供し、年間2410億ドルの決済処理を行なっている。同社は、2025年にラスヴェガスで開催されたカンファレンス「Bitcoin 2025」で、加盟店向けにビットコインの決済サービスを展開し、加盟店はPOSハードウェアを介してシームレスにビットコインを受け付けることができるようになると発表した。
この動きは、ビットコインと小売決済システムの統合における重要な節目であり、ビットコインを交換手段として本格的に活用するために必要なビジネスツールキットにおいて、これまで欠けていた柱を確立する。「Squareは米国で400万以上の加盟店を抱えており、POS、在庫管理、税務、報告など、従来の決済処理の分野において業界最高水準のフルスイートを提供する。この取り組みは、ビットコイン決済だけにとどまらない」と、スーター氏は述べた。
ビットコインの会計システムへのフルスタック統合により、これまでデジタル通貨の導入を希望しながらもツール不足のために導入できなかった加盟店にとって、新たな扉が大きく開かれた。しかし、ヴィジョンはそれだけではない。「さらに、私たちは中小企業向けに特別に設計されたフルスタックのビットコイン・バンキングスイートも提供してゆく予定だ」とスーター氏は付け加え、現在のビットコイン関連ニュースを席巻しているビットコイン・トレジャリー企業や財務戦略の成長トレンドに着目した。
間もなく、企業はビットコイン決済を受け入れ、それを即座にドルに売却するのではなく、自社の財務に直接投入するためのツールをすべて手に入れることができるようになるだろう。流動性が必要な場合、ビットコインを担保に、Unchainedのような企業を通じてドル建てのローンを銀行口座に直接受け取ることができる。もちろん、Block Inc.も顧客のためにその方向に進んでいることは間違いない。スーター氏はさらに、「このフルスタックのビットコイン・バンキングスイートの素晴らしい点のひとつは、これまで大企業だけしか利用できなかったビットコイン・トレジャリーツールへのアクセスを民主化したこと。ビットコインをバランスシートに保有することは、もはやウォール街だけの贅沢であってはならないと考えている」と述べた。
Cash App
Cash Appは、おそらくBlockポートフォリオ内でもっとも有名なブランドであり、Block inc.が構築しているハイパービットコイナイゼーション・エンジンの小売決済面を完成させる役割を果たしている。2013年に導入されたCash Appは、消費者向けのデジタルウォレットで、2024年には5700万人のアクティブユーザーを抱えると報告されている。このアプリは、個人間の決済、デビットカード、株式やビットコインの取引、納税申告の機能を提供する。Cash Appは、2024年にビットコイン由来の収益が100億ドルで、全体の62%を占め、取引ごとに約2%の手数料を徴収したと報告している。
Cash Appは、ビットコインの決済ネットワークであるLightning Networkを統合した最初の主流の決済アプリになる可能性もある。同アプリは業界の最先端にあり、公表されたビットコイン建ての収益は過去最高を記録しているが、Lightning Networkを9.7%のリターンで運用している。これは単なる奇妙な暗号通貨の魔法の利回りではなく、ビットコイン決済が非常に効率的かつ信頼性が高いと保証することによってのみ達成できる。スーター氏は、「私にとって、これはビットコインがすでに機能している決済ネットワークであり、デジタル・ゴールド以上の存在であることの証明だ。それについての詳細は話したくはないが、この問題に取り組んでいるのは、世界でもっとも優秀なライトニングエンジニアたちだと自信をもっていえる」と語った。
Cash Appのビットコイン統合の成功を誇りに思うスーター氏はさらに、「ビットコインが日常の通貨になるために、Lightningが果たす役割に非常に興奮している。なぜなら、Block Inc.の観点からいえば、これはビットコインの未来、サトシ・ナカモトの当初のヴィジョンであるピア・ツー・ピアの電子現金にとって不可欠だと信じているからだ」と付け加えた。
消費者はCash Appを使ってビットコインを簡単に購入して送金できるだけでなく、購入を自動化することもできる。これはDCA(ドルコスト平均法)として知られる投資戦略であり、ビットコインにおける最良の投資戦略のひとつであることが数学的に証明されている。
Cash AppとSquareの連携は、テクノロジー業界が「フライホイール」と呼ぶものを解き放つ。これは、消費者と企業の行動が自己強化的に循環し、ビジネスを新たな高みへと導く力をもつものだが、ビジネスロジックの構成要素が欠けていると通常は実現できない。おそらく、このふたつの主要な統合により、10年以上もの間アーリーアダプターたちが夢みてきたビットコイン決済のヴィジョンが、これまであまりうまく機能してこなかったにもかかわらず、ついに現実のものとなるかもしれない。
Bitkey
ビットコインの根本的な価値命題である、個人の自由と自己管理による検閲耐性に基づき、Block Inc.は新しいハードウェアウォレット製品「Bitkey」を発表した。このデバイスは、ビットコインのセキュリティ保護に特化して設計されており、「マルチシグネチャ」という人気の技術を採用して、ビットコインを移動するために必要なパスワード(秘密鍵)を3つの異なるデバイス(Bitkeyハードウェア、Block Inc.のサーバーに復元用に保管される鍵、そして、ユーザーの認証情報で暗号化され、ユーザーが選択したGoogleドライブアカウントに保管される3つ目の鍵)に分散させる。
2024年にグローバルに発売されたBitkeyは、業界の他のハードウェアウォレットとは一線を画すさまざまな設計を採用している。もっとも重要かつ物議を醸す違いは、ユーザーに秘密鍵の情報をいっさい表示しない点だ。ほとんどのハードウェアウォレットや自己保管型のビットコインおよび暗号資産アプリとは異なり、Bitkeyは秘密鍵の情報をユーザーからほぼ完全に隠蔽し、ビットコインを安全に保管・回復し、そして大切な人に継承するための、巧みに設計されたさまざまなツールを提供する。スーター氏は、「Bitkeyは、安全に自己管理できる人を増やすために開発された。私たちビットコイナーは『あなたのおばあちゃんに自己管理をさせてあげればいいじゃないか』と冗談をいうが、実際にそれが実現したという話や、導入があまりにもシームレスだったため問い合わせてきたという話を数え切れないほど聞いている」と語った。
このデバイスの見た目と感触は、まるでエイリアンのテクノロジーのようだ。すべてのユニットには独特の混合石模様が施され、触れるとまるで生きているかのように点灯する。これは、従来のビットコイン・シードバックアップ方式のユーザーエクスペリエンスに対する深い批判から生まれた、自己管理の抜本的な再考だ。このデザインが市場に登場してからまだ1年しか経っておらず、販売数に関するデータも公開されていないが、自己管理という文化的な側面で定義される業界で、ハードウェアウォレットの普及という新境地を開拓できるかどうかは興味深いところだ。



