「この列車を止めるものはない」――リン・オールデン氏は、Bitcoin 2025の講演の冒頭でそう語り、豊富なデータに裏付けられたプレゼンテーションを通じて、ある重要な事実を観客に示した。それは、米国の財政システムがもはや制御不能であり、いまこそビットコインが必要とされているということである。
最初に示されたチャートは、米連邦準備制度(FRB)のFREDデータベースに基づくものだった。それは「雇用の回復」と「財政赤字の拡大」が同時進行している異常な状況を可視化していた。失業率は低下している一方で、財政赤字はGDPの7%を超える水準にまで拡大しているのだ。「この傾向は2017年頃に始まり、パンデミックをきっかけに一気に加速し、その後も修正されていない。これは通常の状態ではない。私たちは“新しい時代”に突入している」
オールデン氏は言葉を選ばなかった。「この列車が止まらないのは、もはやブレーキが付いていないからだ。ブレーキそのものが深刻に損なわれている」
では、なぜビットコイン支持者(ビットコイナー)はこの問題に関心を持つべきなのか? 「これは資産価格に直接影響する――特に、希少性を持つ資産にとっては重要だ」と説明する。
彼女は実質金利と金価格の相関を示すチャートを提示し、実質金利が低下する中で金価格が急騰した歴史的な動きを示した。「5年前までは、ビットコインは高金利環境では成長できないと言われていた。しかし現実はどうか。ビットコインは10万ドルを突破し、金も過去最高値を更新し、銀行はプレッシャーに耐えきれず破綻している」
続いて紹介されたのは、「転換点」と呼ぶチャートだった。2008年以降、長年の常識を覆すかのように、民間部門よりも政府債務の増加が上回るようになったというデータである。「これはインフレ的であり、かつ持続的な傾向だ。そして、FRB(米連邦準備制度)はもう経済を減速させる手段を失っていることを意味する。」
さらに別のチャートでは、なぜ金利の上昇が財政赤字の拡大を加速させているのかが示された。「もはや彼らにはブレーキがない。金利を引き上げても、銀行の融資を抑える以上に、政府の利払い負担が爆発的に増えてしまうのだ。」
この仕組みを「ポンジ・スキーム(ねずみ講)」になぞらえ、「このシステムは絶え間ない成長を前提に成り立っている。サメのようなもので、泳ぐのをやめたら死んでしまうのだ」と警鐘を鳴らした。
スライドに映し出されたのは、基礎マネー(※中央銀行が発行する通貨の総量)に対して、総債務残高がひたすら増加し続けているグラフであった。例外的に急激な変化が見られたのは、2008年のリーマンショック時と2020年のパンデミック後だけだ。「これはもう後戻りしない。永遠に」と断言した。
では、なぜビットコインなのか? 「それはビットコインが、まさにこのシステムとは正反対の性質を持つからだ。希少性があり、分散化されていて、供給量に数学的な上限がある」
「この列車が止まらない理由は2つある。数学と人間の性(さが)だ。ビットコインは、いまの金融システムの“鏡”であり、それに対する最良の防衛手段なのだ。」



