5月28日夜、正体不明の人物が、アメリカ合衆国憲法の全文を埋め込んだビットコイン取引をブロックチェーン上に送信した。これによって、その内容は永久に記録され、削除することは不可能となった。
この取引は5月28日午後8時25分(世界標準時)に承認された。手数料として11万3454 sats(約83.41ドル)が支払われ、ネットワーク上に送信されてからわずか14分後にマイニング・プールのSpiderPoolによって処理された。
44.4キロバイトというサイズのこのトランザクションは、標準的なビットコイン送金よりもはるかに大きい。その大部分を占めているのは、「We the People of the United States(われら合衆国の人民は」という文言で始まるアメリカ合衆国憲法の全文で、OP_RETURN出力フィールドに書き込まれ、オンチェーン上に記録された。
JUST IN: Someone publishes the entire U.S. Constitution on the Bitcoin blockchain 🇺🇸 pic.twitter.com/4KqIWK7Hk5
— Bitcoin Magazine (@BitcoinMagazine) May 29, 2026
ビットコイン上でどのように実現されたのか?
OP_RETURNは、誰でもトランザクションに任意のデータを付加できるスクリプト・オペコードだ。この方法でタグ付けされた出力は、使用不可能であることが暗号学的に証明されている。つまり、ビットコインとしての価値はもたず、情報を保存することだけを目的として存在する。長年にわたり、このフィールドは80バイトに制限されていたため、その用途は短いハッシュ値、タイムスタンプ、簡単なメッセージの保存に限られていた。
しかし、2025年半ばにリリースされたBitcoin Core v30によって状況は一変する。このバージョンでは、バイト数の上限と「ひとつのトランザクションごとにひとつのOP_RETURNしか使用できない」というルールが撤廃された。この変更を推進した開発者たちは、従来の上限は逆効果だったと主張している。なぜなら、ユーザーはいずれにせよ回避策を見つけており、その制限によって解決する問題よりも多くの問題を生み出していたからだ。
今回の取引は、拡張されたOP_RETURNに加え、SegWitとTaprootの機能を活用することで、建国文書全体を単一のオンチェーンレコードに収めることに成功し、この新たに得られた自由を最大限に活用した最初の事例のひとつである。
データをブロックチェーンに書き込むこと自体は、けっして新しい概念ではない。OpenTimestamps、DOCPROOF、Factomといったプロジェクトは、改ざん不可能な記録として文書のハッシュ値をブロックチェーンに固定(アンカリング)する取り組みを長年続けてきた。さらに、2023年にローンチされたOrdinalsプロトコルは、Taprootトランザクションのウィットネスデータ内に画像、音声、コードを書き込むことを可能にし、この手法をさらに発展させた。28日に行なわれた今回のインスクリプション(刻み込み)がほかと異なるのは、対象となる文書の選択だ。ハッシュ値でもJPEG画像でもなく、米国の統治の根幹を成す憲章、つまり合衆国憲法の全文が書き込まれたのだ。
このインスクリプションは、ビットコイン・コミュニティ内で議論が交わされている最中に行なわれた。現在審議中の提案であるBIP-444は、OP_RETURNの容量上限を以前の80バイトに戻すもので、その支持者たちは無制限のデータストレージはビットコインの貨幣ネットワークとしてのアイデンティティを損なうと主張している。
送信者は、自らの功績を主張することもなく、説明を行なうこともなく、追跡可能な身元もいっさい残さなかった。ただ、前文、7つの条文、そして27の修正条項だけがブロックに書き込まれ、それはいまや、地球上のすべてのビットコイン・ノードによって保持されているのだ。