今週、Bitwise Asset Management社は2027年版の「ビットコイン長期資本市場予測」を発表した。同社は、2036年のビットコイン価格について、基本シナリオにおける目標価格を、1年前の130万ドルから159万9766ドルに引き上げた。
この予測は、Bitwiseが2026年9月30日時点の価格として採用した約8万3557ドルを起点とすると、年平均成長率(CAGR)34.3%となる。同社の弱気シナリオにおける2036年のビットコイン価格は13万686ドル、強気シナリオでは367万ドルとなっている。
基本シナリオは、3つの論拠に基づいている。機関投資家は今後もポートフォリオにビットコインを組み入れ続けること。新規供給量は予測可能なスケジュールに従って一定に保たれること。そして、政府債務の増加によって、投資家は増刷不可能な資産へと向かうことだ。
機関投 資家は “ビットコイン嗜好”
Bitwiseは、約147兆ドルの資産を運用する機関投資家がポートフォリオの1~5%をビットコインに配分する可能性があると推計している。同社によれば、これは1兆5000億ドルから7兆4000億ドルの購入額に相当する。ビットコインのネットワークが年間に新規発行するコインは約140億ドル相当であり、Bitwiseはこの需給ギャップが価格を押し上げると主張している。
機関投資家向けのビットコイン取引のインフラはすでに拡大している。レポートによれば、米国の現物ビットコインETP(上場取引型金融商品)は約1080億ドルに達している。一方、銀行や証券会社はカストディ(資産保管・管理)サービスや取引サービスの構築を進めている。また、最近の報告書では、2026年の価格下落局面で、政府系ファンドやファミリーオフィスが購入を進めていることが伝えられている。
規制当局も動き始めている。銀行によるカストディ規制の緩和を目的とした、米連邦準備制度理事会(FRB)の自己資本規制案が採用されれば、大手金融機関の参入機会が拡大する可能性がある。
この1年間は、こうした見方が正しいかどうかを試す局面となった。ビットコインは、2025年10月に記録した12万6080ドルのピークから、2026年6月30日の5万8717ドルの安値まで、53.4%下落した。Bitwiseは、この下落サイクルにおける下落幅はビットコインの歴史上もっとも小さいものだと評価している。過去のサイクルでは、77%、84%、86%の下落が発生していた。
この下落率の低さが、新たなパターンの兆候なのか、それとも一時的な小康状態に過ぎないのかについては、まだ見解が分かれている。Bitwiseは、投資家層の裾野が拡大するにつれて、4年周期のサイクルの影響力は弱まると予想している。一方で、サイクルは依然として機能していると見る向きもある。
VanEck社は、現在の価格低迷は過去の半減期パターンに沿っていると主張している。また、フィデリティ社は、過去と同じタイミングが繰り返されるなら、2026年11月ごろに底値を付ける可能性があると指摘している。NYDIG社は、過去の弱気相場が再現されれば、サイクルの安値は3万8000ドルから3万9000ドル付近まで下落する可能性があると述べている。そして、キャシー・ウッド氏は市場が下落局面をほぼ脱しつつあると主張している。それぞれの見解は、想定する底値も、そこに至るまでの時間軸も異なっているようだ。
ビットコインの ボラティリティ
ボラティリティ(価格変動率)も、この予測を支えるもうひとつの柱だ。Bitwiseは、今後10年間の平均ボラティリティを27.8%にモデル化している。これは、現在の水準と2036年に予想される水準の中間値にあたる。Grayscale Investments社の調査責任者は最近、ビットコインの1年間のボラティリティを43%とし、10年間の平均である64%を下回っていると指摘した。この数値はS&P 500構成企業のうち19%の企業のボラティリティよりも低い。Charles Schwab社の調査では、ボラティリティの数値が低下しているにもかかわらず、ビットコインは依然として急激な下落に見舞われやすい資産であることが明らかになった。一方、ドイツ銀行のアナリストは、この傾向を市場が成熟しつつある兆候と表現している。
Bitwiseはまた、ビットコインと金(ゴールド)の相関関係が2026年9月に過去最高の0.58に達したと報告している。同社はこの相関関係がさらに強まると予想しており、そのことはビットコインの価値保存手段としての評価をいっそう固めるものだ。ただし、この相関関係には両面がある。金の価値が下落すれば、同じ投資家需要によって得られていた支えをビットコインも失う可能性がある。Gemini社は、2026年に少なくともひとつの国が金準備の一部をビットコインに振り分けると予測しているが、この予測はいまのところ実現していない。
このレポートは、何が問題となりうるかについても率直に述べている。ビットコインの歴史はまだ浅い。ソフトウェアが開発されたのは2008年から2009年にかけてであり、公開取引所での取引は2010年に始まった。ビットコインへのエクスポージャーをもつ最初の機関投資家向け商品は2014年に登場し、現物ETPは2024年にローンチした。
Bitwiseは、過去のデータに大きく依存する予測には不確実性が伴うと指摘している。将来のリターンは過去と異なる可能性があるためだ。もうひとつの懸念事項は、規制である。同レポートが倫理規定に関する民主党側の懸念が原因だったと説明する、CLARITY法案の議会での不成立は、ビットコインにとっての進歩が停滞する可能性を示している。Bitwiseは最近の進展が後退する可能性は低いと主張しているものの、この点は注目に値する。
3つ目の懸念事項は、テクノロジーだ。量子コンピューティングや人工知能(AI)によって加速される数学上の進歩は、ビットコインのウォレットを保護する暗号技術を脅かす可能性がある。Bitwiseによれば、ビットコインのネットワークはいずれ大規模なアップグレードが必要となり、新しいアドレスに資金を移動させなかった保有者は危険に晒される可能性がある。同レポートによると、開発者たちはこの1年間で進歩を遂げているものの、依然として主要な問題が未解決のまま残されているという。
本稿執筆時点で、ビットコイン価格は8万ドルをわずかに下回って推移している。






