グーグルが米国時間の10月28日、ニューヨークで開く同社初のデジタル資産シンポジウムで、署名鍵を別々のシステムに分割する暗号資産カストディシステム「Google Multi-Party Compute」を発表すると報じられた。この製品は現在、複数の金融機関を対象とした限定プレビューの段階にある。CoinDeskの報道によると、アルファベットは自社資産の保護にこのシステムを使い始めている。
グーグルは2027年初めの商用提供を予定しており、価格は明らかにしていない。
このシステムは、署名鍵にマルチパーティ計算(MPC)を適用する。鍵は断片に分割され、別々の当事者またはマシンがそれぞれを保持する。トランザクションの署名には、所定の数の断片が必要となる。
完全な鍵が1か所で組み立てられることはない。銀行が1つのシェアを自社のハードウェアに、もう1つをGoogle Cloudに、3つ目を競合するクラウド事業者に置く、といった形も取り得る。金融機関は、2-of-3や5-of-7といったしきい値を設定できる。署名の前には必ず、グーグルのConfidential Space内で動作するポリシーエンジンが、上限、送金先の制限、承認ルールに照らして送金を確認する。
CoinDeskによると、グーグルは、暗号化されていない状態の鍵シェアへのアクセス権を持たないとしている。
暗号資産の セキュリティ問題
この売り込みの前提には、根強く残る問題がある。チェイナリシスは、2024年に盗まれた暗号資産の43.8%を秘密鍵の侵害によるものとした。DeFiLlamaのデータによれば、6月までにハッキングで失われた累計166億9,000万ドルのうち、約40%は鍵の侵害に起因する。6月に起きたHumanity Protocolへの不正侵入では、攻撃者が1人の開発者のコンピュータから7つの鍵を奪い、2つのネットワークにまたがってウォレットから資金を抜き取った。
こうした事件は、署名権限が集中すると単一障害点が生まれることを示している。業界はこれに対し、ハードウェアとソフトウェアの提供元にまたがって管理を分散させる、マルチベンダーのマルチシグ構成を推奨してきた。
グーグルはまた、AIを悪用した詐欺への対策としてもこの製品を打ち出している。チェイナリシスによると、2025年にAIツールの販売業者と関連のある詐欺は1件あたり平均320万ドルを得ており、それ以外の詐欺の71万9,000ドルを上回った。同報告は2つの数字を結びつけているが、AIがこの差を生んだことを証明しているわけではない。
イーサリアムの研究者ジャスティン・ドレイク氏は、AIがいずれ、ウォレットの署名を弱める数学的な近道を見つける可能性があると警告している。これまでにそうした能力を示したAIシステムはない。グーグルのMPCの設計が対象とするのは、盗まれた認証情報と不正な送金であって、基盤となる暗号そのものの破綻ではない。
量子コンピューティングは、これとは別の、より長期的なリスクをもたらす。グーグルの研究者らは、将来の十分に強力なマシンであれば、露出した公開鍵からビットコインの秘密鍵を約9分で導き出せる可能性があると推計した。公開鍵が露出しているビットコインはおよそ690万BTCに上る。グーグルは、同社のアーキテクチャは機関にシステムの再構築を強いることなく、後からポスト量子署名を採用できるとしているが、時期は示していない。量子コンピュータがビットコインにどのような脅威を与えるかについての背景解説では、どのアドレスが最も露出しているかを説明している。
グーグルが参入するのは、Fireblocks、Fordefi、ビットゴーが主導する市場だ。グーグルはCoinDeskに対し、銀行との関係とセキュリティの専門性が自社の強みになると主張した。また、競合に依存したくない銀行にとっての中立的な供給元として自らを位置づけている。
銀行はすでに専門のプラットフォームを利用している。BNPパリバがMetacoと進めてきたカストディの取り組みや、ビットゴーとともに構築された複数機関向けの資産保管システムがその例だ。





