ジャック・マラーズ氏ほどビットコイン業界の中心に近い人物はあまりいない。もともとシカゴのトレーダーの家系に生まれた彼は、いまや米国の大手ビットコイン取引所の若くしてテクノロジーに精通したCEOであり、近年もっとも収益性の高い企業であるTether(テザー)社と提携するなど、業界の中枢に深くかかわっている。そんな彼が、ここ数週間にわたって、自身のポッドキャスト「BLABLA」で「ドルコスト平均法(DCA)を実践する時が来た」と繰り返し呼びかけている。
Bitcoin is not a software company. It has traded like one because many who own it don’t understand it.
This drawdown is painful, but it may be the process of washing out levered software capital and letting Bitcoin finally trade like the hard money it is.
Hang in there. BTFD. pic.twitter.com/xGgM39Ovya
— Jack Mallers (@jackmallers) February 10, 2026
しかし、そもそも「ドルコスト平均法(DCA)」とはいったい何を意味するのだろうか? これは「Dollar Cost Average」の略語であり、ビットコインの文脈に採り入れられた投資戦略で、現在では業界全体のビットコイン支持者にとって、まさに「ゴールド・スタンダード」とも言える推奨手法となっている。DCAを「オンにする」とは、価格に関係なく、定期的にビットコインを購入することを意味する。では、なぜこれが有効なのか? じつは非常にシンプルだ。例えば毎週、価格に関係なく購入を続ければ、高値でも安値でも同じように買い続けることになる。実際、ビットコインは「保ち合い」と呼ばれる期間、つまり価格が上昇も下落もせず、横這いで推移する時間が比較的長く続く傾向がある。これは、SATS(サトシ)を積み上げる絶好の機会となる。
そして、ビットコインを以前よりも低い価格で購入するたびに、自身の「ドルコスト平均」、つまりドル建てでの保有ビットコインの平均取得価格は下がっていく。やがて、ビットコインの比類なきかつ非弾力的な希少性と、ネットワークのように拡大する成長性が組み合わさることで、最終的に価格は上昇する傾向にあり、しかも上昇する際には急激に動くことが多い。ほとんどの人は、大幅な上昇の直前という絶好のタイミングで購入する機会を逃してしまう。しかし、DCAを実践しているビットコイナーは、すでに最適化された平均取得価格をもっており、大幅な上昇から利益を得る準備が整っている。その結果、大幅な上昇局面の直前には、平均購入価格のカーブが次のような形状になることがある。
ビットコインのDCA戦略には、ほかにも大きなメリットがある。長期間にわたって少額で管理しやすい投資を行なうため、投資過程のどの時点においてもリスクに晒される金額は比較的小さくなる。例えば、毎月の可処分所得の10%をビットコインに投資することは大きな負担にはならず、弱気相場を耐えられるものにするだけでなく、むしろ優れた投資機会へと変えることができる。
また、Kraken、Strike、Swan、Bull Bitcoinなど、世界中の多くの国をカバーする複数の取引所が、ビットコインの自動DCA機能を実装している。この戦略における「自動化」の重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。プロのトレーダーが直面する高いストレスや激しい認知負荷と比べると、自動化されたビットコインDCAは非常に手軽であり、それでいて同等の成果をもたらす。
『The Art of Execution』といった書籍では、ウォール街のプロのトレーダーを対象とした長期研究が紹介されており、ほとんどのトレーダーが損失を出していること、そして、利益を上げているごく一部のトレーダーでさえ、成功するまでに10年間連続で損失を出していることが示されている。優秀なトレーダーになるために必要な人的資本はけっして安くはない。しかし、ビットコインのDCAは「設定したらあとは放っておくだけ」ですむ手法であり、あなたが人生でほかのことに時間を費やしている間にも、ビットコインの保有量は増え続ける。
ビットコインのDCA戦略の長期的な価値は、さまざまなオンラインツールを使って計算することができる。例えば、Bitcoin Magazine Proの計算ツールを使えば、2017年から2週間ごとに100ドル分のビットコインを購入していた場合、どうなっていたかを確認することができる。言うまでもなく、その結果は驚異的なものだ。
最近、金(ゴールド)もDCAによって非常に好調なパフォーマンスを示しているが、その計算結果は、2025年の急騰に比べると見劣りする。歴史的に見ると、金はビットコインよりもはるかに長いサイクルをもち、その巨大な資産特性ゆえに、大きな上昇の後には何年も横這いの状態が続くことがある。一方、ビットコインは全体的に上昇余地が大きく、サイクルもはるかに短いため、適切に運用すればより高いリターンにつながる可能性がある。
いまこそ、DCAを始めるときだ
「なぜ、いまなのか? そもそもビットコインのDCAは常に有効にしておくのがよいのではないか?」と、あなたは思うかもしれない。 それはもっともな疑問だが、ジャック・マラーズ氏の言葉に暗黙のうちに含まれている答えは、「必ずしもそうではない」というものだ。理論的には、強気相場の天井でDCAを始めたとしても、次の強気相場が始まるころには平均取得価格を十分に引き下げることは可能だ。しかし、当然ながら天井で買わないに越したことはない。
以下に述べる内容は、投資アドバイスではなく、「Bitcoin Magazine」またはBTC Inc.の見解を表すものでもない。あくまで筆者個人の意見だ。
もちろん問題は、市場の天井がどこかを誰も正確には知らないという点にある。もし、それがわかっていたら、誰もが大金もちになっているはずだ。そのような戦略はやがて発見され、他者によって模倣され、時間とともに競争優位性を失う。それが市場の本質だ。秘密の知識は、それが秘密である間だけしか機能しない。ひとたび公になると、市場はそれに適応する。
ビットコインのDCAは天井を予測しようとしないため、この問題をそもそも回避している。しかし、多くの人は市場が天井に近づいていると感じるとDCAを停止してしまう。そして歴史的に見ると、天井というのは通常、前回のサイクルの過去最高値を上回った後に訪れる。そのため、理論上は続けるべきであっても、一部の人はDCAを停止し、明確な弱気相場が始まってから再び開始する。
では、ビットコインは現在弱気相場にあるのだろうか? ある意味ではそう言える。価格は天井から50%下落しているが、その下落は非常に急激で、より大きなマクロ要因への反応だったことを示唆している。つまり、痛みの大部分はすでに過ぎ去っている可能性が高いということだ。また、複数のテクニカル指標が好転のシグナルを示しており、現在は天井よりも底値に近いことを示唆している。言い換えれば、いまこそ参入すべきタイミングなのだ。
週足のRSI(相対力指数)はモメンタムを示す指標だが、ビットコインにおいて歴史的に見ても売られ過ぎの領域に入っている。ビットコインの過去10年を振り返ると、週足RSIがこれほど低い水準まで下がったときは、いずれも底打ちの兆候となってきた。また、ビットコイン価格を200日移動平均線と比較するメイヤー・マルチプルも、現在は買いゾーンの領域にある。
ビットコインおよび広範な暗号資産市場の恐怖・強欲指数は、ここしばらく「極度の恐怖」状態にある。そしてよく言われるように、「街に血が流れているときこそ、買い時」なのだ。
また、市場の最高値から最安値までのビットコイン価格の下落率(パーセンテージ)を分析した歴史的なデータも存在する。こうした調整幅は時間の経過とともに小さくなる傾向があり、直近の弱気相場では最大77%の下落を記録した。現在は約51%の調整となっているが、もし70%まで下落するとすれば、すでにその半分以上は進んでいることになる。つまり、天井よりも底に近い位置にあるということだ。

また、現在はビットコインの半減期サイクルの中間地点に差し掛かっており、次の半減期は2028年初頭に予定されていることに注目したい。前回の半減期では、半減期が近づくにつれてビットコインが史上最高値を更新することが広く認知されるようになったこともあり、「期待先行」の動きが見られた。同じ理由から、今回のサイクルでも再び半減期への期待が先行する可能性がある。仮にビットコインが一時的に4万ドル付近まで下落するにしても、歴史的に見て、最高値から70%以上も下落するような調整はまず起こらないだろう。
また、こうした大幅な下落は、機関投資家によるビットコインの採用が進み、市場の流動性が大幅に拡大していることを踏まえると、以前より起こりにくくなっている。もしそこまで下落した場合、買いを入れる準備ができている人々にとっては絶好の機会となるだろうが、それは投機的な行為であり、底値を狙うトレーディング思考に陥ることになる。だからこそ、低リスクで継続的なDCA戦略が非常に有効なのだ。
最後に、デスクロスとコールデンクロスの組み合わせについて触れておきたい。50日移動平均線と200日移動平均線の関係は、比較的予測しやすい動きを生み出す。市場は通常、50日線が200日線を下回る前に売られ、50日線が200日線を上回る前に上昇する傾向がある。現在、ビットコインは50日移動平均線を上回っており、この水準を維持するか、あるいは7万ドル付近でのレンジ相場を継続できれば、2026年後半に向けてさらなる上昇の準備が整う可能性が高い。そしてゴールデンクロスが発生すれば、それは新たな強気相場の始まりを告げるシグナルとなるだろう。

マクロ経済動向
AI関連株は、このサイクルで多くの流動性と投資資金を吸収してきており、ここ数年だけでも約1兆ドルがAIインフラに投じられている。市場全体としては、AIが今後も破壊的な進展を続けるとの見方が支配的だ。「AI版の恐怖・強欲指数」があったとすれば、現在は明らかに「強欲」側に大きく振れていることは、誰でも容易に想像できるだろう。AI関連株やテック株が上昇の一途をたどるという新たなパラダイムに入った可能性もあるが、そのような考え方は通常、売りシグナルだ。もし、今後1〜2年の間にドットコムバブル崩壊のような出来事が起こり、AI関連株が深刻な調整局面を迎えれば、投機資金や投資資金がAI以外の選択肢を探し始め、ビットコインに再び流動性が戻ってくる可能性がある。ただし、現時点でそれを断定するのは、まだ時期尚早と言える。
一方で、米国債の利回り、つまり米国政府の債務に対する利回りは頭打ちとなっており、米連邦準備制度理事会(FRB)からは利下げが近いことを示唆する兆候も出ている。ドナルド・トランプ大統領は1月にケビン・ウォーシュ氏を次期FRB議長に指名しており、その承認手続きは現在上院で滞っているものの、近く承認される可能性が高い。これは、より緩和的な金融政策を示唆しており、低金利と通貨供給の拡大、さらに積極的な成長戦略と規制緩和を志向するトランプ政権の広範な経済戦略に沿ったものだ。
また、フェデラルファンド金利(実効金利)も低下傾向にあり、市場により安価な資金が流入しつつあることを示唆している。地政学的な緊張が高まっているこの時期、米国債が外国人投資家にとって必ずしも魅力的でなくなっていることもあり、FRBによる通貨供給の拡大が一因となっていると考えられる。
ファンダメンタル分析
ビットコインに関するファンダメンタルズのトレンドや変化という観点では、現在浮上している唯一の論点は、量子コンピューティングがビットコインの暗号技術を破ることができるのかという点だ。このような「FUD(恐怖、不確実性、疑念)」は、多くの投資家にとって目新しいものかもしれないが、ビットコイン技術者にとっては新しい話ではない。ビットコイン業界におけるコンセンサスとしては、量子コンピューティングの進歩はその多くが過剰に誇張されたものであり、実際にビットコインに脅威を与えるまでになるには、まだまだ長い時間がかかるとされている。
一方、ビットコイン・コアの開発者たちは少なくともここ数年にわたり、量子コンピューティングへの長期的な対策について積極的な議論を重ねてきた。その起源は、サトシ・ナカモトの時代にまで遡る。すでに正式な改善案も作成されており、量子コンピューティングの脅威に対処する必要が生じた場合に備えて、ソフトウェアは成熟段階に向けて着実に開発が進んでいる。したがって、量子攻撃へのFUDを理由にビットコインを売却した投資家は、結果的に不利なポジションに立たされる可能性がある。
ビットコインへの参入障壁
したがって、ほとんどの兆候から、いまこそビットコインのDCAを始めるべき時だと言える。そして朗報なのは、人々がビットコインの恩恵を受けるために本当に理解すべきことはじつはそれほど多くない、ということだ。供給量が限られているのはなぜか? そして、どのようにしてその供給量制限が維持されているのか? そして、適切なセルフカストディ(自己管理)によって長期的にビットコインを保管するにはどうすればよいのか? ビットコインにまつわるこれらの基本的なスキルを習得するのは容易ではない。投資家にはある程度の学習と関心が求められるが、市場のボラティリティや予測不可能性を生き抜くプロのトレーダーや投資家になるために必要な知識と比べれば、はるかにシンプルなものだと言える。
ビットコインの経済学を理解するうえで、「Bitcoin Magazine」はこのテーマに関する優れた書籍を取り揃えており、いずれもがビットコインの基礎知識からさらに深い内容までを、わかりやすく解説している。また、セルフカストディに関しても、「Bitcoin Magazine」には、筆者自身による2026年版の優れたツールに関する最新レビューが掲載されている。








