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「価値の保存手段」とは?

価値の保存手段

「価値の保存手段(Store of Value)」という概念は、時間の経過とともに価値を保持または増加させることのできる財を指し、価値が減少することなく維持される仕組みを表すものです。個人が富を保全し、時間の経過による価値の損失を避けるための手段として用いられます。

これは「ビットコイン・マガジン」が探究する貨幣の三大機能のひとつで、ほかのふたつには「交換手段(Medium of Exchange)」と「会計単位(Unit of Account)」があります。

価値の保存手段とは何か?

価値の保存手段とは、資産、通貨、またはコモディティ(商品)であり、時間が経過しても価値を維持できると信頼されるものです。リスクをあまり伴わないものが理想的です。一般的に、リスク許容度の低い人々は、耐久性があり、安定した需要があり、価格変動(ボラティリティ)の低い、価値の保存手段に投資する傾向があります。

法定通貨は、価値の保存手段としては弱い存在です。なぜなら、インフレーションにより時間とともに価値が減少するからです。一方で、ビットコインや金(ゴールド)、その他の貨幣的金属などのコモディティは、価値の保存手段として優れた特性を備えています。供給量が比較的限られており、時間の経過とともに劣化しないため、価値を維持できるのです。

「流動性(Salability)」とは、ある財や資産が貨幣として使用できるかどうかを決定する重要な属性であり、また、すぐに売却できる物理的な財や資産を定義する概念でもあります。貨幣が流動性をもつためには、次の3つの特性を備えている必要があります。

  1. 分割可能性(Divisibility):小さな単位に分割できる(スケールの次元)。
  2. 携帯可能性(Transportability):容易に持ち運びができる(空間の次元)。
  3. 耐久性(Durability):時間の経過に耐えることができる(時間の次元)。

特に「時間を超えた流動性」をもつ資産は、将来的にも価値を維持できるため、優れた価値の保存手段となります。

価値の保存手段の概念を理解するためによく用いられる基準のひとつに、「金と高級スーツの価格比(gold-to-decent-suit ratio)」があります。この原則の起源は古代ローマに遡ります。古代ローマでは、一流のトーガ(toga:ローマ市民が着用した正装)が1オンスの金に相当するとされていました。2000年後の現在でも、高品質なスーツの価格(金で換算した場合)は、当時のトーガの価格とほぼ同等です。このことから、金が長期間にわたって価値を維持していることがわかります。

もうひとつの例として、「石油1バレルの価格の変化」があります。

これに対し、金で換算すると以下のようになります。

このデータからわかるように、金の価値(よい価値の保存手段)はほとんど変化していないのに対して、法定通貨の価値(悪い価値の保存手段)は著しく減価しているのです。

価値の保存手段は、なぜ必要なのか?

貨幣は財やサービスを交換するための重要な道具ですが、価値の保存手段としても優れていなければ、将来のために資産を蓄え、安全を確保することができません。法定通貨は交換手段としては適していますが、時間の経過とともにインフレによって価値が減少するため、信頼できる価値の保存手段とはなりません。歴史的にみても、法定通貨の価値は年間2~3%のペースで下落する傾向があります。

極端な例として、ベネズエラ、南スーダン、ジンバブエなどの国では、ハイパーインフレーション(超インフレ)によって貨幣価値が天文学的なレベルで低下しました。これらの事例は特殊なケースではあるものの、近年ではインフレ率の上昇が一般的になりつつあり、将来のために資産を守る仕組みが必要となっています。2~3%のインフレ率を上回る資産運用手段をみつけることは、個人にとって不可欠な課題になっているのです。

そのため、長年にわたって価値を維持できる信頼可能な価値の保存手段をもつことが重要です。価値の保存手段として不適切な法定通貨は、人々の貯蓄意欲を削ぎ、場合によっては労働意欲すら低下させると考えられています。

貨幣は優れた価値の保存手段なのか?

現代において、私たちは法定通貨(フィアット・カレンシー)を使用しています。「フィアット(fiat)」とは、ラテン語の「fiat(命令・指令)」に由来し、「特定の価値をもつと政府が定めたもの」を意味します。この概念は、かつて政府が発行する紙幣や貨幣が一定量の物理的な資産(例えば金や銀)と交換可能であると定められていた時代に確立されました。しかし、現在の法定通貨は、金や銀などの実物資産の裏付けをもたず、独自の本質的価値もありません。にもかかわらず、従来の「フィアット」という名称がそのまま残っているのです。

法定通貨は貨幣としての多くの特性を備えていますが、価値の保存手段としては劣っています。その理由は、物理的な資産(金や銀)の裏付けがなく、インフレによって徐々に価値が低下するためです。さらに、ハイパーインフレーションが発生した場合には、法定通貨の価値は短期間で劇的に暴落する可能性があります。

法定通貨は「ソフトマネー(Soft Money)」と呼ばれることがあります。これは、市場の自然な需給ではなく、政府の価格安定目標に依存しているためです。通常、政府は物価安定政策として年間2%程度のインフレ率を目指します。しかし、この政策によって通貨の価値は徐々に目減りし、同時にあらゆる財やサービスの価格が上昇していくことになるのです。このように、法定通貨は交換手段としては機能するものの、長期的にみれば、価値を維持する能力が弱く、資産としては不安定であるといえます。

価値の保存手段の本質的要素

貨幣として進化する過程で、財は3つの異なる段階を経ます。まず価値の保存手段(Store of Value)として機能し、その後交換手段(Medium of Exchange)となり、最終的には会計単位(Unit of Account)へと発展します。もっとも流動性の高い(Salable)財は、時間・空間・規模(スケール)という3つの次元において優れています。

価値の保存手段とは、もっとも流動性の高い財であり、時間の経過とともに価値を維持する能力をもつものです。

価値の保存手段として機能するためには、その財が流動性をもち、なおかつ希少である必要があります。つまり、他の財と比べて供給量が限られていることが求められます。また、耐久性があり、繰り返し使用しても機能を失わないことが重要となります。

  1. 希少性(Scarcity)
    価値の保存手段となる財は、他の財と比べて供給量が限られており、需要に対して希少でなければなりません。コンピューター科学者のニック・サボ(Nick Szabo)は、「希少性」を“unforgeable costliness(偽造不可能なコスト)”と定義しています。つまり、あるものを生み出すコストが偽装できないほど高いことが、真の希少性の証であるということです。例えば、貨幣の供給量が過剰になると、その価値は時間とともに減少します。通貨の単位が増えすぎると、財やサービスを購入するためにより多くの通貨が必要となるため、購買力が低下するのです。

  2. 耐久性(Durability)
    耐久性とは、財が物理的および機能的な特性を時間の経過とともに維持できる能力を指します。価値の保存手段として機能する通貨は、摩耗や損傷に耐え、長期間流通し続けることができなければなりません。例えば、金は腐食せず、長年にわたってその価値を維持できるため、耐久性の高い資産とされています。

  3. 不可変性(Immutability)
    不可変性とは、取引が一度確定し記録された後に、変更や取り消しができない特性を指します。これは、ビットコインのようなデジタル資産において新しく登場した、望ましい特性です。

優れた価値の保存手段とは?

多くの異なる資産が価値の保存手段として機能しえますが、最適なものは何か?については、投資家の間で常に議論が続いています。これは、市場の動向や投資家の嗜好によって大きく左右されるためです。また、ある資産が時間とともに価値の保存手段としての地位を失う可能性もあります。その代表例が銀です。銀はかつて貨幣的金属として価値の保存手段の役割を果たしていましたが、産業用途の拡大によって供給量が増えた結果、価値の保存手段としての機能が低下しました。このように、ある資産が価値の保存手段として機能し続けるかどうかは、供給と需要のバランスによって変動するのです。

ビットコイン

ビットコインは当初、価格変動が大きいことから投機的資産とみなされていました。しかし、投資家や一般の人々がビットコインの新たな貨幣資産としての可能性を理解し始めるにつれ、価値の保存手段としての役割を強めてきました。ビットコインは、デジタルなサウンドマネー(健全な貨幣)の発見であり、科学的な革命の一環と考えられています。これまでのところ、ビットコインは単なる価値の保存手段にとどまらず、価値を増加させる手段としても機能しています。

今日では、ビットコインは経済において重要な力をもつ存在へと成長しており、他のどの貨幣よりも価値の保存手段としての要件を満たしているといえます。

  1. 希少性(Scarcity):ビットコインの供給量は2100万枚に固定されており、法定通貨のような恣意的なインフレの影響を受けません。供給が限られていることで、希少性によって価値が支えられ、資産としての価値を維持しやすいのです。
  2. 耐久性(Durability):ビットコインは純粋にデジタルデータとして存在するため、物理的な劣化が起こりません。そのデジタル台帳(ブロックチェーン)は、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)と経済的インセンティブによって改ざんを防ぎ、長期的に信頼性の高い価値の保存手段となります。
  3. 不可変性(Immutability):一度ブロックチェーン上に記録された取引は、変更や取り消しが不可能です。これにより、取引台帳の整合性が保たれ、不正や改ざんを防ぐことができます。デジタル社会では信頼性とセキュリティが最重要課題となるなか、この特性は特に重要です。

貴金属

金、パラジウム、プラチナなどの貴金属は、長期間にわたって価値を維持することができるため、古くから優れた価値の保存手段とされてきました。これらの貴金属は、腐食せず半永久的に保存可能であることに加え、産業用途でも使用されるため、一定の需要があります。また、供給量が比較的限られていることも、貴金属が価値の保存手段として機能する理由のひとつです。法定通貨と比較すると供給量が制限されているため、インフレの影響を受けにくく価値が維持されやすいのです。しかし、ビットコインは金やその他の貴金属よりもさらに供給量が厳密に制限されており、2009年の誕生以来、金と比較しても価値を大幅に上昇させてきました。

大量の金を物理的に保管することは、コストがかかるうえ管理が困難です。そのため、多くの投資家は、デジタル・ゴールド(電子取引可能な金ETFなど)や金鉱株への投資を選択します。しかし、これらはカウンターパーティリスク(取引相手の信用リスク)を伴うため、実物の金と同じレベルの安全性を確保できるわけではありません。また、ダイヤモンドやサファイアなどの宝石類も、保管や持ち運びが容易であるため、価値の保存手段として利用されることがあります。

 

不動産

不動産は、実物資産としての確固たる存在感と実用性があるため、もっとも一般的な価値の保存手段のひとつとされています。1970年代以降、不動産の価値は長期的に上昇してきました。それ以前は、不動産や土地の価値は物価と連動し、長期的な実質リターンはほぼ0%でした(戦争や金融危機の影響を除く)。不動産は短期的な価格変動はあるものの、安定した資産とみなされてきました。

不動産には土地、住宅、商業施設などが含まれ、居住、投資、賃貸など多様な用途があります。しかし、不動産には流動性(Liquidity)が低いという欠点があり、必要なときにすぐに現金化ができません。また、政府の規制や法的介入を受けやすいこともデメリットとなります。

 

株式市場

ニューヨーク証券取引所(NYSE)、ロンドン証券取引所(LSE)、東京証券取引所(JPX)などの株式市場での投資は、長期的にみて価値が増加しているため、価値の保存手段として機能しています。しかし、株式は短期的なボラティリティが大きく、市場の動向や経済状況に大きく左右されるため、法定通貨と同様に変動リスクがあると考えられます。

 

インデックスファンド/ETF(上場投資信託)

インデックスファンドやETF(上場投資信託)は、株式市場全体に投資する手段を提供し、投資家にとって分散投資の手軽な手段となります。

これらの市場は、長期的に価値が増加しているため、よい価値の保存手段として機能する可能性があります。またETFは、類似の投資信託と比べて手数料が低く、税制面でも有利な場合があります。

 

その他の価値の保存手段

また、人々は趣味や関心に応じた独自の価値の保存手段を持つことができます。例えば、高級ワイン、クラシックカー、高級時計、美術品などは、時間の経過とともに価値が上昇することが多いため、優れた価値の保存手段となりえます。

 

悪い価値の保存手段とは?

腐敗しやすい商品

腐敗しやすい商品とは、時間の経過とともに劣化し、価値を失ってゆく財のことで、最終的には完全に無価値になってしまいます。

例えば、食品は賞味期限や消費期限があるため、価値の保存手段としては不適切です。また、コンサートや交通機関のチケットも同様で、使用期限が過ぎると完全に価値を失うため、価値の保存手段としては適しません。

したがって、腐敗しやすい商品は、よい価値の保存手段とはみなされません。

 

法定通貨

前述の通り、法定通貨は時間の経過とともに価値を保持することができません。下の図が示すように、その価値は継続的に減少しています。

その主な要因はインフレです。毎年、財やサービスの価格はドルやその他の法定通貨と比較して上昇する傾向があります。その結果、通貨は購買力を持続的に失い続けることになります。

仮想通貨

ビットコイン以外の仮想通貨(アルトコイン)は、投機的な株式と非常によく似ており、さらにリスクが高くなります。ほとんどのアルトコインは寿命が短く、長期的にはビットコインに対して価値を失う傾向にあります。

寿命が比較的長い仮想通貨であっても、多くはセキュリティ、希少性、検閲耐性よりも機能性を優先しているため、経済的な持続可能性が低く、有用性も弱いため、価値の保存手段としては不適切といえます。

Swan Bitcoinの調査によると、アルトコインは投資先として悪い結果をもたらしています。この研究では2016年以降に誕生した8000種類の仮想通貨を分析したところ、2635種類の仮想通貨はビットコインと比較して価値が下落、5175種類の仮想通貨はすでに消滅、という結果が明らかになっています。

投機的な株式

投機的な株式とは、小型株(ペニー・ストック)のことであり、一株あたり5ドル未満で取引される資産を指します。これらは非常に投機的な性質をもつため、価値の保存手段としては不適切です。

投機的な株式はボラティリティが極めて大きく、ときに急騰することもありますが、突然すべての価値を失うリスクもあります。時価総額が小さいため、市場の影響を受けやすく、短期間で大きな変動が起こります。このため、非常にリスクの高い投資であり、安定した価値の保存手段とはなりえません。

 

では、国債は?

長い間、米国債(U.S. Treasuries)などの政府発行の国債は、政府によって保証されているため、優れた価値の保存手段と考えられてきました。しかし近年では、長期間にわたる低金利やマイナス金利政策が大国(日本、ドイツ、その他の欧州諸国)の経済に大きな影響を与え、国債は一般的な投資家にとって魅力のない資産となりつつあります。

また、インフレ対策として設計されたIボンド(I-Bonds)やTIPS(物価連動国債)のような金融商品もありますが、最終的には政府によって管理されているため信頼性に疑問が残る、インフレ率の算出は米国労働統計局(Bureau of Labor Statistics)に依存しており計算方法が恣意的に調整される可能性がある、というリスクを抱えています。

 

結論

まとめると、価値の保存手段とは、時間の経過とともに購買力を維持または向上させる傾向をもつ資産のことです。これは供給と需要の法則によって決定されるもので、この法則を用いることで、ある資産が価値の保存手段として適しているかどうかを判断できます。

いま現在も、ビットコインは実験的な存在であるとみなされることが多いのは事実です。しかし、比較的短い歴史のなかで、ビットコインは貨幣の特性をすべて備えていることを証明し、優れた価値の保存手段であることを示してきました。今後の課題は、ビットコインの「会計単位」としての機能を証明することです。

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