連邦レベルの仮想通貨規制案、委員会採決へ
米上院銀行委員会は15日午前(現地時間)、2025年デジタル資産市場透明化法(H.R. 3633:CLARITY Act)の修正協議を開始した。米国における連邦レベルの仮想通貨規制としては、これまでで最も広範な法案となる可能性がある。
今回の審議は、党派間の対立や手続き上の紛争、民主党穏健派を取り込もうとする共和党の動きが焦点となった。議会日程上、メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)の休会前に委員会を通過しなければ法案審議がリセットされるという期限が迫るなかでの開催となった。
ティム・スコット委員長(共和党・サウスカロライナ州)は冒頭、本法案を長年の規制の失敗を正すものと位置づけた。「デジタル分野は長年、規制のグレーゾーンに放置されてきた。開発者や起業家、投資家は不透明な状況に置かれ、政府が明確なルールを策定すべき場面で、混乱と法的執行措置に直面してきた」と指摘した。
スコット委員長は本法案の柱として、消費者保護、米国のイノベーション維持、国家安全保障の3点を挙げた。交渉の過程で法案は大幅に拡大し、昨年6月以降で3万3000語、219ページが追加されたことを明かし、「人間がなし得る限り、超党派の合意形成に努めた」と述べた。
エリザベス・ウォーレン議員による批判と追及
一方、エリザベス・ウォーレン議員(民主党・マサチューセッツ州)は批判を展開した。同氏は冒頭で、食料品価格や当座貸越手数料、クレジットカード金利など消費者問題を優先すべきだと述べた。
ウォーレン議員は「我々は仮想通貨業界によって、業界のために書かれた法案に時間を費やしている。業界の承認を得ていないものは何一つ含まれていない」と断じた。また、有権者の優先順位において仮想通貨が最下位層にあるとするCoinDeskの調査を引用した。
さらに同議員は、本法案が1929年以来の投資家保護を目的とした証券法に穴を開け、州レベルの消費者保護を無効化し、2008年の金融危機の過ちを繰り返すものであると主張。国家安全保障上の脆弱性を深め、トランプ政権の仮想通貨に関する不透明な資金動向に対して何も手を打っていないと非難した。「現大統領とその家族は、昨年就任して以来、仮想通貨取引だけで少なくとも14億ドルの利益を上げている」と述べた。
修正案の採択を巡る手続き上の攻防
最初の採決を前に、どの修正案を審議対象とするかを巡る論争が数分間にわたり続いた。ウォーレン議員は、全米シェリフ協会が求めたマネーロンダリング対策の抜け穴を塞ぐ案や、預金の流出を防ごうとするコミュニティ銀行の案など、10以上の民主党案が審議対象外とされたことに反発した。
これに対しスコット委員長は、ウォーレン議員のスタッフが共和党の修正案に事務的な異議を唱えたことで、提出された全修正案の精査が必要になったと反論。その過程で共和党側の修正案も少なくとも1つは却下したことを明らかにし、公平性を期したと述べた。
これに関連し、シンシア・ルミス議員(共和党・ワイオミング州)は裁定の明確化を求め、ジャック・リード議員(民主党・ロードアイランド州)は「修正案の提出と採決を認めることこそが、共同作業の定義だ」と述べた。
ルミス議員の証言と実務的な論点
法案の推進者であるルミス議員は、自身のキャリアの中で「群を抜いて最も困難な立法作業だ」と述べ、法案に盛り込まれた不正資金対策について、以下の内容を挙げた。
- リスクベースの検査基準の導入
- 財務省による特別措置権限の拡大
- 外国管轄区域のAML(反マネーロンダリング)遵守状況に関する年次報告
- オフショア・ステーブルコインに関する財務省の定期報告
- 仮想通貨キオスク(ATM)に対する連邦規制の最低基準策定
特に仮想通貨キオスクについては、2025年だけで1万3460件以上の詐欺被害と3億8900万ドルの損失が出ているとのFBIデータを引用し、AARP(全米退職者協会)からの支持を得ていることを強調した。
ルミス議員は、ウォーレン議員が指摘するリスクは「規制枠組みが存在しない現在こそが最大のリスクである」と反論。法案は個人に自由と貯蓄の手段を提供し、人道的な送金手段としても機能すると主張した。
修正案の採決結果と今後の展望
審議ではいくつかの修正案の採決が行われた。
- AI規制サンドボックス: マイク・ラウンズ議員(共和党・サウスダコタ州)が提案した金融機関向けのAI規制サンドボックス設置案は、民主党のマーク・ワーナー議員、アンディ・キム議員らが賛成に回り、15対9で可決された。
- ウォーレン議員の修正案: トークン化資産の開示、DeFi(分散型金融)への制裁、銀行の仮想通貨活動を制限する各修正案は、11対13の反対多数で否決された。
- ポートフォリオ・マージン: デイブ・マコーミック議員(共和党・ペンシルベニア州)による、SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)にポートフォリオ・マージン規則の再検討を求める修正案は、18対6の支持で可決された。
本法案の委員会通過には、共和党13名と民主党11名で構成される委員会内での調整に加え、上院本会議での60票の壁を見据えた超党派の協力が不可欠となる。