ヒューマン・ライツ・ファウンデーション(Human Rights Foundation:HRF)は自ら設立した「ビットコイン開発基金(Bitcoin Development Fund)」の新たな助成ラウンドを発表し、世界各地の20以上のプロジェクトに10億 satoshis(10 BTC)を分配したと明らかにした。今回の助成は、権威主義体制下で暮らす個人のためのもので、オープンソースのビットコイン開発、マイニングの分散化、プライバシー保護ツールの構築、そして教育的取り組みを支援することを目的としている。対象地域としては、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアが重視されている。
助成の対象には、ビットコインを金融的および人権的なエンパワーメント(権利強化)の手段として推進する多様なプロジェクトが含まれている。
NetBlocksは、インターネットの遮断をリアルタイムで監視・報告するデジタル権利の監視団体。権威主義体制においては、抗議活動の抑圧、反対意見の封じ込め、金融ツールへのアクセス制限のために、こうした遮断が頻繁に用いられている。HRFによる支援は、NetBlocksの監視・記録・調査能力を強化し、インターネットと金融の自由を促進するための体制強化に寄与する。
TollGateは、ISP(インターネットサービスプロバイダ)のc03rad0rが開発したプロジェクトで、一般的なWi-Fiルーターをビットコインとeキャッシュ(電子現金)を活用した分散型ISPへと変換する。これはピア・ツー・ピア(P2P)型のネットワーキングツールで、ユーザーが中央集権的なISPを回避できる仕組みとなっており、国家によって制御されるインターネットに対して代替手段を提供する。HRFの資金提供により、TollGateは「検閲に強いインターネット」を構築し、個人が自由に通信できる環境の実現をさらに推進していく。
Vinteumは、ラテンアメリカに拠点を置く非営利のビットコイン研究・開発センターであり、ビットコインのプロトコルやエコシステムに貢献する開発者の育成と資金提供に取り組んでいる。HRFの支援を受けて、Vinteumは開発者教育プログラムを拡充し、貢献者への支援を強化、ラテンアメリカにおけるビットコイン開発コミュニティを発展させていく計画だ。この取り組みは、脆弱な法定通貨制度に代わる金融の選択肢を地域にもたらすことにつながる。
BTCPay Serverは、オープンソースかつセルフホスト型のビットコイン決済プロセッサであり、個人や団体が第三者に依存せずにビットコインを受け取れるツールだ。これは、決済プロセッサがNGOや活動家を抑圧する道具として頻繁に使われる体制下において、とりわけ重要である。HRFの助成により、BTCPayはさらなる拡張、ユーザビリティの向上、検閲耐性のある決済手段へのグローバルなアクセスの拡大を図る。
Africa Bitcoin Institute(ABI)は、ルワンダの人権活動家Anaïse Kanimbaに支援されており、アフリカにおけるビットコインの推進と政策の間に存在するギャップを埋める役割を果たしている。ABIは調査研究を行ない、金融的自立を促進するための政策提言をしている。HRFの支援を受け、ABIは金融的自立をさらに促進し、ビットコインを経済的自由の支柱として確立することを目指している。
ビットコインコアのGraphical User Interface(GUI)に関しては、フルノードを稼働させることは金融主権の中核を成すものの、その技術的なインターフェースが多くの人にとって障壁となる。Bitcoin-core/gui-qmlは、開発者Go Quによって支援されているプロジェクトで、ビットコインコアのインターフェースをより直感的なものに刷新することを目的としている。特に発展途上地域のモバイルユーザー向けに設計されており、HRFの資金は、世界中のノード運営者にとっての参入障壁を下げるための継続的な開発を支える。
Rkruxはビットコインコアにおけるコードレビュー、バグテスト、ドキュメントの改善に注力する貢献者であり、彼の活動はビットコインの堅牢性を維持するうえで不可欠だ。HRFの助成金を受けて、Rkruxは今後もその活動を通じて、世界中のユーザーにとってビットコインネットワークが堅牢で安全、かつ検閲に強いものとなるよう引き続き貢献していく。
Elsatは、Damus、Nostrability、Zap.storeといったプロジェクトを含むNostrエコシステムに貢献している開発者。これらのツールは、分散型メッセージング、アプリ間の相互運用性向上、P2Pソフトウェアの収益化を可能にする。今回のHRFの助成金は、権威主義体制下にあるユーザーに対して、表現の自由および経済的自立を強化するための継続的な開発活動を支援するものである。
Relay Wizardは、開発者J the Code Monkeyによって作成されたツールであり、Nostrリレーのセットアップを簡素化する。Nostrプロトコルにおけるリレーは、分散型コミュニケーションを支える重要な構成要素。このツールによって、非技術系のユーザーでも自身のサーバーを運用できるようになり、より堅牢で検閲に強い通信インフラの構築に貢献できる。HRFの助成金は、同ツールの開発および展開をさらに推進するために活用される。
Wayeは、ビットコインコア開発者のAmiti Uttarwarと運用アーキテクトのAnna Sidesによって共同設立された支援プロジェクト。自由のためのテクノロジー(Freedom Tech)に取り組むオープンソース開発者を対象に、心理社会的なサポートを提供している。貢献者の燃え尽き症候群や孤立といった課題に対応することで、エコシステムの人的基盤を強化している。HRFの支援により、Wayeはその支援範囲を、特にグローバルサウス(南半球を中心とした新興国・途上国)の開発者にまで広げる予定だ。
Hashpoolは、開発者vnprcによって開発されたセルフホスト型のマイニングプールであり、ビットコイン・マイニングにおける分散化を支援する。中央集権的なプールに依存することなく、マイナーはeキャッシュトークンによって報酬を受け取ることができ、即時かつプライベートな支払いが可能となる。HRFの支援によって、Hashpoolの開発はさらに進み、より分散化され、検閲耐性のあるマイニング環境の構築が促進される。
Cashu KVACは、「Cashu」と呼ばれるチャウム式eキャッシュシステムにおけるプロトコルのアップグレード。開発者lollerfirstの手がけたこの改良によって、データの保存量を減らしつつ取引金額を隠すことで、さらに強力なプライバシー保護が実現された。HRFの助成金は、同プロジェクトのさらなる開発を支え、脆弱な立場にあるユーザーに対して金融プライバシーの保護を強化する。
Brandon Black(別名Rearden)は、権威主義体制下にあるビットコインユーザーにとってのセルフカストディ(自己管理)課題について研究を行なっている。研究結果は、安全かつプライベートなビットコイン利用を手軽にできる新たなツールや教育コンテンツの開発に役立てられる。HRFの助成金は、この研究および関連する教育リソースの開発を支援する。
Stable Channelsは、Tony Klausingによるプロジェクトで、ライトニングネットワークに法定通貨と連動した残高(フィアットペッグ)を導入することで、ボラティリティを回避しつつ、完全な自己管理を維持できるようにしている。HRFの支援により、本プロジェクトはさらなる統合とユーザーへの普及を進め、中央集権的なステーブルコイン発行者に依存しない自由な送金を可能にする。
Bitsaccoは、開発者okjodomによって設計されたFedimintベースのプラットフォームであり、ケニアのSACCO(貯蓄信用協同組合)モデルをビットコインとFedimint技術を使って近代化するものだ。これにより、地域コミュニティ主導の金融グループが銀行に依存することなく運営できるようになる。HRFの助成金は、Bitsaccoの開発、トレーニング、および現地での導入を支援する。
The Coreは、ケニアの教育者Felix Mukunguによって設立された団体であり、ワークショップ、ミートアップ、デジタルコンテンツを通じて実践的なビットコイン教育を提供している。とくにセルフカストディ、ライトニングネットワークの活用、ノード運用に焦点を当てている。HRFの支援により、The Coreはケニア国内外において活動範囲をさらに拡大する予定だ。
Bitcoin Babiesは、Naomi Wambuiによって設立されたプロジェクトであり、乳幼児の栄養失調と金融リテラシーの欠如というふたつの課題に取り組んでいる。栄養支援とビットコイン教育を組み合わせた独自のプログラムによって、母親たちは週ごとにビットコインの給付を受けるとともに、長期的な経済的自立を目指したトレーニングを受ける。HRFの助成により、このプログラムは支援を必要とする多くの家庭へと拡大される予定。
East Asia Bitcoin Developer Apprenticeship Program(東アジアビットコイン開発者アプレンティスシップ・プログラム)は、Calvin Kimの主導による取り組みであり、韓国と日本の開発者に対して、オープンソースのビットコイン開発に関する実地訓練を提供している。アプレンティス(研修生)たちは実際のプロジェクトに貢献するなかで経験を積む。HRFの支援により、同プログラムはより多くの人々にアクセスとメンターシップの機会を提供、地域的な人材のギャップを埋めると同時に権威主義体制からの亡命者を支援する。
TalentLand 2025におけるビットコイン・ウィーク。ラテンアメリカ最大のテック会議であるTalentLandにおいて「ビットコイン・ウィーク」が開催され、数千人の来場者がワークショップやハッカソンを通じてビットコインを学ぶ機会を得る。この取り組みは、Super TestnetおよびBitcoin and Lightning Guadalajaraコミュニティによって運営されており、ビットコインが金融的エンパワーメントの手段であることを強調する。HRFの助成金は、このプログラムの拡大に充てられる。
Base58のBitcoin Live Action Role Play(LARP)は、Lisa NeigutとDavid Rodriguezによって開発された体験型学習プログラム。参加者がビットコインネットワークを模擬的に演じ、トランザクションやノード運用を体験することで、より深い理解が得られる。HRFの助成金は、ファシリテーターの育成や、十分な支援を受けられていない地域での展開を後押しする。
BTCenEspañolは、スペイン語圏における主要なビットコイン教育プラットフォームであり、100名のインストラクター養成と100万人以上の学習者へのリーチを目標としている。同プラットフォームは南米全体での展開を進めており、HRFの助成金は、教師研修、コース開発、および権威主義体制の影響を受ける地域での普及活動を支援する。
非営利団体によるビットコイン導入の促進。研究者Daniel Battenは、ビットコインがいかにして非営利団体にとって金融検閲を回避する手段となりえるかについて研究を進めている。プロジェクトでは、過酷な環境で活動するNGOに向けて、データに基づく洞察と実践的なガイダンスを提供している。HRFの資金提供により、この取り組みは、従来の銀行システムが機能不全に陥っている地域でのNGOによるビットコイン活用を支援する。
Bitcoin for Goodは、活動家Hadiya Masiehによって主導されており、非営利団体がビットコインを受け入れる方法について実践的なトレーニングを提供している。NGOが金融的制約を回避し、自立を維持することを目指している。HRFの助成金は、ワークショップの開催、技術支援、組織内への導入支援に充てられる。
2020年に開始されたHRFのビットコイン開発基金は、これまでに世界62カ国の284プロジェクトに対して、総額780万ドル以上のビットコインを分配してきた。次回の助成金ラウンドの発表は、2025年5月26日〜28日にノルウェー・オスロで開催される第17回オスロ・フリーダム・フォーラム(Oslo Freedom Forum)にて行なわれる予定。
HRFは、全世界における人権の保護と促進を目的とする超党派・非営利の501(c)(3)団体であり、特に閉ざされた社会に焦点を当てて活動している。HRFは引き続きビットコイン開発基金への支援を募っており、寄付に関する情報はこちらから確認できる。HRFによる助成金の申請もこちらから可能だ。