5月19日(米国時間)、ビットコイン・マイニング機器メーカーのCanaan社(NASDAQ:CAN)は、北欧諸国の地域暖房ネットワーク向けに、熱回収型コンピューティング・インフラを提供する契約を獲得したと発表した。
この契約の中核となるのは、Canaanの水冷式マイニング・ユニット「Avalon A1566HA」だ。この装置は、ビットコイン・マイニングによって発生する熱エネルギーを回収し、温水として住宅暖房システム向けに再利用する仕組みとなっている。生成される温水は約80℃で、既存の地域暖房インフラと互換性をもつ温度帯となっている。
このプロジェクトは2段階構成で進められる。第1フェーズでは、228台のA1566HAユニットが導入され、暖房能力は合計2MWとなる。すでに稼働を開始しており、地域住民へ温水供給を行なっている。
さらに2026年3月、社名非公開の北欧の暖房設備業者が692台のユニットを追加発注した。これにより総暖房能力は8MWへ拡張され、フル稼働時には約2800世帯に暖房を供給する見込みだ。
Canaanによれば、このアーキテクチャは従来型のボイラーと比較して技術的優位性をもつという。暖房ノードは、多数のA1566HAユニットを並列稼働させる構造となっており、各ユニットは動的なオーバークロックおよびアンダークロックに対応している。そのため、オペレーターは変動する暖房需要に合わせてリアルタイムで出力を調整できる。また、この並列設計により、集中型ボイラーシステムと比較して単一障害点リスクが低減され、メンテナンスも簡素化される。
今回の採用は、顧客側が複数のソリューションを比較検討したうえで、より大規模となる第2フェーズ向け設備としてCanaanの機器を選定するという、競争的な評価プロセスを経て決定された。北欧は地域暖房技術における世界的な先進地域として知られており、各国政府は都市ネットワーク全体にわたって効率的な熱供給を促進する政策枠組みを整備している。
ビットコインとエネルギー統合型のコンピューティング
CanaanのCEOである張南庚(Nangeng Zhang)氏は、ユニットの筺体デザインを含むプラットフォーム開発に自ら直接関与したと語っている。
「熱再利用はもはやコンピューティングの副次的産物ではない。より効率的で持続可能なエネルギーの未来を構築するための中心的な役割を果たし、Canaanがシステム設計を考えるうえでの中核そのものだ」と、張氏は説明した。
今回の契約は、Canaanにとって、コア事業であるビットコイン・マイニング機器事業を超え、同社が「エネルギー統合型コンピューティング・インフラ」と呼ぶ分野へ進出する戦略的な一歩となる。「ハッシュ・トゥ・ヒート(hash-to-heat)」、つまりハッシュレートを熱に変換するというコンセプト自体はマイニング業界で長らく議論されてきたが、商業規模で高品質な熱を生成する難しさが、普及の障壁となっていた。Canaanは、今回の北欧地域での導入を、その障壁が克服された証拠と位置付けている。
なお、Canaanの株価は本日19日に約15%下落し、0.40ドル付近で取引された。