UBSグループが、スイスのプライベートバンキング顧客向けにビットコイン取引の解禁準備を進めている。
ブルームバーグが報じた関係者の話によれば、このスイスの銀行巨人は数ヶ月前から暗号資産取引の提供について議論を重ねてきた。現在、外部パートナーの選定プロセスに入っているという。
当初はスイスのプライベートバンキング顧客の中でも、ごく一部に限定してサービスが提供される。だが、これはあくまで試験的な段階であり、将来的には対象範囲が拡大される可能性も示唆されている。
もっとも、最終的な導入決定が下されたわけではない。規制、運用体制、そしてリスク管理の観点から、計画はなお慎重に進められている状況だ。
注目すべきは、UBSが自社でゼロからデジタル資産基盤を構築するのではなく、外部連携を選んでいる点だ。取引執行、カストディ(管理)、コンプライアンス業務については、実績あるサードパーティ・プロバイダーへの委託を検討しているという。
この「パートナー主導モデル」の採用により、UBSはバランスシート上のリスクや運用上の複雑さを抑えつつ、顧客に暗号資産へのエクスポージャーを提供することが可能になる。
このアプローチは、デジタル資産領域に参入する他の大手金融機関の動きと軌を一にするものだ。特に「バーゼルIII」の枠組みにおける厳格な資本要件をクリアしようとする銀行にとって、この戦略は定石となりつつある。
提案されている構造下では、対象となる適格顧客はまず、時価総額で2大巨頭であるビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の売買が可能になる見込みだ。
現時点では、それ以外のアルトコイン等については議論の遡上に載っていない。
スイスを超えた展開の可能性
初期段階こそスイスに焦点を絞るものの、ブルームバーグによれば、UBSは他地域への展開も視野に入れている。規制の明確化や顧客需要次第ではあるが、アジア太平洋地域や米国へのサービス拡大も検討されているという。
2024年9月末時点で約4.7兆ドル(約700兆円)もの資産を運用するUBSは、紛れもなく世界最大のウェルスマネージャーだ。たとえ限定的な提供であったとしても、この巨人が動く意味は重い。伝統的なプライベートバンキングにおけるビットコインの機関採用において、極めて重要な一歩となるだろう。
UBSはこれまで、暗号資産に対して慎重な姿勢を崩してこなかった銀行だ。
2023年11月、香港の富裕層顧客に対し、HSBCなどの競合他社に追随する形で暗号資産関連ETF(上場投資信託)の取引を解禁したことは記憶に新しい。しかし、現物取引の直接提供には、これまで踏み込んでこなかった。
UBSの広報担当者はブルームバーグの報道に関する具体的なコメントを控えたものの、同行がデジタル資産に関する取り組みを継続している事実は認めている。
「UBSのデジタル資産戦略の一環として、我々は市場動向を能動的に監視し、顧客ニーズ、規制の進展、そして強固なリスク管理を反映した取り組みを模索している」と広報担当者は述べる。「デジタル資産の基盤となるブロックチェーンのような分散型台帳技術の重要性は、十分に認識している」と。