ポーランド議会は、長らく議論されてきた暗号資産法案を可決し、同国を欧州連合の暗号資産市場規制(MiCA)に準拠させる方向へ動き出した。一方で、大手取引所の詐欺の疑いに関連した捜査が進展しており、ワルシャワ政界の緊張が高まっている。
ロイター通信の報道によると、5月15日(現地時間)に可決されたこの法案は、暗号資産業界全体におけるライセンス供与制度、監督体制、消費者保護の枠組みを定めている。ポーランドは7月までにMiCAを施行しなければならず、導入が間に合わない場合、国内企業は暗号資産サービスの停止を余儀なくされる可能性があると、同国の金融監督当局は警告している。
今回の採決は、かつて国内最大の取引所だったZondacrypto(ゾンダクリプト)の破綻をめぐり検察当局が捜査を進めるなかで行なわれた。Zondacryptoでは、現在も数千人のユーザーが資金にアクセスできない状態にあり、当局は損失額を3億5000万ズウォティ(約9600万ドル)以上と推定している。この事件は中央ヨーロッパにおけるもっとも重大な暗号資産関連の破綻事例のひとつとなっている。
ドナルド・トゥスク首相は、このプラットフォームが外国勢力と関係している可能性を指摘しており、治安当局の調査結果として、同取引所の背後にロシア資本が存在していたと述べている。また、首相は同社の“出自”が不透明であると説明し、同社が過去に、民族主義系の野党関係者が参加したイベントへスポンサー提供していた点についても懸念を示した。モスクワ側は、ヨーロッパ各地における破壊工作や秘密活動への関与を否定している。
Zondacryptoの創設者であるシルヴェスター・スシェク氏は2022年から行方不明となっている。ポーランドのメディアは、後任のプシェミスワフ・クラル氏がイスラエルに居住しており、同国の市民権を保持していると報じているが、この点が今後の身柄引き渡し手続きを複雑化させる可能性がある。
ポーランド、暗号資産規制をめぐり揺れ動く
このスキャンダルによって、デジタル資産をどのように規制すべきかをめぐる、ポーランド政界内の対立はより鮮明となった。野党の支持を受けるカロル・ナヴロツキ大統領は、厳格な規制や高額な罰金は企業を国外へ追い出す可能性があるとして、法案の初期案に対して拒否権を行使してきた。大統領は、罰金を減額し、執行措置に対する裁判所の監督を強化した代替案を提案している。
一方で、さらに厳格な措置を求める議員たちも存在する。「法と正義」党の所属議員らによる提案には、消費者リスクと執行能力の限界を理由として、暗号資産に関連する事業活動そのものを禁止する内容が盛り込まれている。この案では、同分野で事業を行なうこと自体に刑事罰を科す方針であり、EU圏内でもっとも厳しい規制のひとつとなる可能性がある。
これに対して、政府の法案は監督権限をポーランド金融監督庁へ付与する内容となっており、同庁には新規株式公開の停止、口座の凍結、市場不正行為に対する制裁措置などを実施する権限が与えられる。支持派は、MiCAとの連携によって法的明確性が確保され、Zondacryptoの破綻によって失われた信頼の回復につながると主張している。
投資家や企業にとって、今後の焦点は、大統領がこの法案に署名するかどうかに移っている。大統領が再び拒否権を行使すれば、ポーランドはEU要件に違反した状態に陥る可能性があり、暗号資産セクターへの監視が強まるなか、市場の混乱を招く恐れがある。