予想以上だった、ビットコインへの関心
第4回を数える今年のWebXも、二日間のプログラムは暗号資産にとどまらず、ステーブルコイン、DeFi、RWA(現実資産のトークン化)、そしてAIまで広がっていた。登壇者の口から語られた「約1万5000人」という規模も、その裾野の広さを物語る。
そうした幅広いテーマが並ぶなかで、会場を歩きながら繰り返し感じたのが、ビットコインをめぐる関心の濃さだった。
ビットコイントレジャリー企業メタプラネットのセッションでは、来場者が手元でメモを取りながら、登壇者の一言ひとことを追っていた。このセッションは、数あるプログラムのなかでライブ配信の対象にも選ばれていた。
二日間で最も熱を感じたのは、トップアナリストがビットコイン相場を語るセッションだった。立ち見の人数がどうという話ではない。これからビットコインがどうなるのかを、自分の言葉で確かめたい——そういう空気が、その一角には確かに漂っていた。
ステーブルコイン、AI、RWAが広げたWebXの射程
今年のWebXでは、ステーブルコインやオンチェーン金融をめぐる議論が大きな比重を占めていた。
初日のステージでは、ステーブルコインをめぐる議論が目立った。片山さつき財務大臣兼金融担当大臣は基調講演で、円建てステーブルコインの発行が国内で始まったこと、国債のオンチェーン化に向けた実証実験が動き出していること、金融庁が旗を振る決済基盤のプロジェクトで三つの実案件が進んでいることを紹介した。いずれも、決済とオンチェーン金融という金融インフラの話である。
SBIホールディングスの北尾吉孝会長は、オンチェーン金融からAI、メディアまでを貫く自社戦略を約50分にわたって語った。デジタル大臣の松本尚氏はAI主権とサイバー安全保障を、経済産業大臣の赤澤亮正氏はNFTを使った海賊版対策や地方創生を論じた。高市早苗首相はビデオメッセージで登壇し、スタートアップ支援の強化を訴えた。
政策のスポットライトは、Web3やAI、ステーブルコインといった領域に広く当たっていた。そうした多様なテーマが並ぶなかに、ビットコインをめぐる議論にも、独特の熱があった。
相場:アナリストが読んでいたのは、環境の変化
相場をテーマにしたセッション「トップアナリストと語るビットコイン相場展望」には、暗号資産アナリストの仮想NISHI氏、ビットバンクのマーケット・アナリスト長谷川友哉氏、マネックス証券の松嶋真倫氏が並び、モデレーターは高山上氏が務めた。相場を扱う恒例の時間として、WebXでは毎年組まれてきたものだ。
人々が耳を傾けていたのは、これからの値動きだけではなかった。金利がどう動くのか、制度がどこまで整うのか、機関投資家はどう入ってくるのか——アナリストがそうした環境をどう読み、この資産がこれからどう位置づけられていくと見ているのか。価格の行方とあわせて、それを取り巻く条件の変化にまで、関心は伸びていた。
企業財務:ビットコインを保有する会社、その先へ
メタプラネットのセッションに登壇したのは、同社執行役で資本市場・IRを担う奥野晋平氏と、7月13日付でグループに加わったメタプラネット証券(旧・Siiibo証券)の代表取締役CEO小村和輝氏。モデレーターはProgmatの齊藤達也氏が務めた。なお、本誌ビットコイン・マガジン・ジャパンは、メタプラネットのグループに属している。
メタプラネットは約2年で5000億円を超える資金を調達し、約4万3000BTCを保有するに至っている。上場企業としては世界3位、国内では首位の規模だという。
セッションの主眼は、その先にあった。奥野氏は「単にビットコインを保有するだけの企業ではない」として、ビットコインを裏付けにした利回り商品を発行し、それをセキュリティ・トークン化してステーブルコインで利払いを行い、市場として広げていく——という段階を追った構想を語った。既存の資本市場について、奥野氏は「Web3の目線から見るとあり得ないことが二つある」とも述べた。配当や税金の案内を郵送で行う「紙の無駄遣い」、そして権利確定から入金までにかかる「タイムラグ」である。小村氏は、半年ごとが主流の社債の利払いを月次へ、そして「究極的には日払いで利息を受け取れる商品へ広げたい」と語った。
焦点は、ビットコインを軸に、社債や証券といった伝統的な金融商品をどう組み替えていくかという、企業財務とマーケットの設計図にあった。
もっとも、これらの多くはまだ構想の段階にある。どんな商品が、いつ出てくるのか——具体的な形は、これから明らかになっていく。
制度:金商法成立の翌朝
相場や企業財務への関心を、地に足のついたものにしていたのは、制度の動きだった。
会期中、政策セッションの登壇者たちは、暗号資産を金融商品として位置づけ直す金融商品取引法の改正案について、いずれも「参議院で審議中」という前提で語っていた。会期が閉じた翌日、7月15日、その改正法は参院本会議で可決・成立した。暗号資産を初めて「金融商品」として定義し直し、インサイダー取引の規制や発行者の情報開示義務を新たに設け、無登録での販売への罰則を引き上げる内容だ。
成立したのは、法律の枠組みである。その施行は2027年度が見込まれている。税制は、現在の最大55%の総合課税から20%程度の申告分離課税へと移り、損失の3年間の繰越が認められる方向だが、適用開始は施行日の翌年、すなわち2028年1月が有力とされる。しばしば同じ文脈で語られる暗号資産の上場投資信託(ETF)についても、今回の改正で組成の制度的な枠組みは整った一方、ビットコイン現物ETFの国内承認そのものは、この時点でまだ確定していない。制度の輪郭が整理されたことと、実際に手に取れる商品がそこにあることは、別の話である。
そのうえで、市場の側から見た温度は高かった。ETFをテーマにしたセッションには、ブラックロック・ジャパンの城圭介氏、野村アセットマネジメントの水﨑優駿氏、SBIグローバルアセットマネジメントの朝倉智也氏、そして東京証券取引所の菊地孝史氏が並んだ。城氏は、先行する米国で現物型ビットコインETFが解禁からおよそ2年半で市場規模を大きく伸ばし、買い手が「ざっくり個人50%、ウェルス層25%、機関投資家25%」という構成へ移ってきたと説明した。朝倉氏は、日本の家計金融資産を引き合いに、「2386兆円のわずか1%が入るだけで、今の米国のAUM全体を超える」と、国内市場の伸びしろを語った。
別の政策セッションでは、日本デジタル分散型金融協会の保木健次氏が、今回の法改正の「隠れた裏テーマ」は暗号資産ETFだと述べた。弁護士の河合健氏は、税率引き下げやETFという「飴」と、規制対応コストという「鞭」を受け取る主体は必ずしも一致しない、と釘を刺した。制度が動けば、恩恵を受ける者と、負担を強いられる者が同時に生まれる。その手触りまで含めて、議論は具体的だった。
会場を歩いて感じたこと
相場のセッションでも、企業財務の構想でも、制度をめぐる議論でも、人々の関心は、価格の行方だけでなく、制度や企業、市場環境へと広がっていた。制度がどう変わり、企業がどう使い、その先にどんな金融商品や市場が生まれ、アナリストがそれをどう読むのか。ビットコインが既存の金融システムのなかへ組み込まれていく、その過程そのものに、関心は注がれていた。
役割の分かれ方も、そこに重なって見えた。堀江貴文氏とJPYCの岡部典孝氏のセッションでは、ボラティリティの高いビットコインは日々の決済には向かず、その場所はむしろ流通量の大きいステーブルコインが担う、という整理が示された。決済はステーブルコインが引き受け、ビットコインは準備資産や投資の対象として金融エコシステムに位置づいていく。そうした棲み分けもまた、輪郭がはっきりしてきた一つの形だった。
会場を歩いていると、ビットコインを取り巻く現実が、これまでより一段具体的になってきたと感じる瞬間が何度もあった。制度整備の方向が見え始め、企業がそれを使う道筋を描き、市場ではその先の展開が具体的に議論されている。価格に加えて、それを取り巻く制度や市場の広がりまで視野に入ってきたことで、ビットコインという資産の居場所が、以前より少しだけくっきりと見えていた。
熱心にメモを取る来場者の手元を眺めながら、筆者が持ち帰ったのは、その静かな実感だった。
📍WebX Asia Day 2
Day 2も多彩なセッションや展示で賑わいました。
3メガバンクによる暗号資産・トークン化をテーマにした議論や、トップアナリストによるビットコイン市場の展望など、印象的なセッションが続きました。
会場の様子とあわせて、印象に残った内容をご紹介します。👇 pic.twitter.com/8SZQIGoQPW
— Bitcoin Magazine Japan (@BitcoinMagJapan) July 14, 2026


