ドイツの右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は国家ビットコイン準備金を創設する提案を提出した。
この取り組みは、わずか1年前には押収した数十億相当のビットコインを売却したことで批判されていた欧州最大の経済国にとって、転換点となる可能性がある。
この動議が承認されれば、ドイツはビットコインを国家準備資産に直接組み込む最初の欧州主要国となり、ビットコインを投機的資産ではなく国家準備金の手段としてとらえる方向へと、欧州が移行しつつあることを示すものとなる。
ビットコインを「国家に依存しない貨幣」とするAfDの構想
先週提出されたAfDの動議は、連邦政府に対して、長期的な準備資産戦略の一環としてビットコインの蓄積を開始するよう求めている。
この提案は、EUのMiCA規制のフレームワークが中央集権的に発行されるトークン向けに設計されたものであり、発行者も中央管理機関も存在しないビットコインには適用すべきではないと主張している。
この動議は政府に対して、非カストディ型ウォレットのプロバイダーやLightningノード運営者への規制負担を回避し、1年以上保有されたビットコインに対するドイツの免税措置を維持し、民間のマイニングやLightning活動が事業行為として分類されないよう求めている。
AfDは、計画中のデジタルユーロが監視や統制を可能にすると警告する一方で、ビットコインを個人の自由を守る「国家に依存しない貨幣」として位置づけている。
🇩🇪 ドイツ第2の政党・AfDが「#ビットコイン 準備金」を構築する動議を提出 pic.twitter.com/LzXxcAzCSu
— Bitcoin Magazine Japan (@BitcoinMagJapan) October 29, 2025
AfDは提案書の第1章第5項で、ドイツ政府がビットコインの戦略的可能性を認識していないと批判。特にベルリンが国家準備資産の一部としてビットコインを保有することを検討していないと指摘している。
提案書後半の説明セクションでは、この考えをさらに展開し、ビットコインを「アウトサイド・マネー(外部通貨)」と表現。世界的な通貨不安や地政学的に不安定な時期には、ビットコインが「国家通貨準備のなかで潜在的かつ容易に移転可能な資産」として機能しうると示唆している。
この動議は、ビットコインを国家の戦略的資産として位置づけようとするドイツ議会における初の正式な試みとなる。
ドイツ、売り手から「hodler」へ
この提案は、ドイツ政府が史上最大規模となる国家レベルのビットコイン売却を完了してから1年も経たないうちに出されたものだ。
2024年6月から7月にかけて、ドイツ当局は海賊版動画サイト「Movie2k.to」の運営者から押収した約5万 BTCを売却した。当時の価格にして約30億ドル相当だ。
この売却は約18%の市場調整を引き起こし、ビットコイン・コミュニティから激しい批判を浴びた。コミュニティは、ドイツが希少で価値の上昇し続ける資産を保有する機会を無駄にしたと主張した。
2024年7月中旬までに、ビットコインの最後の分割送金が取引所とマーケットメーカーに送られた後、ドイツ政府にリンクされたウォレットが“空”になったことがブロックチェーンデータによって確認されたのだ。
ビットコイン主権をめぐる欧州の競争
このドイツの動きは、フランスでエリック・シオッティ議員率いる中道右派政党「右派・中道連合(UDR)」が「国家ビットコイン戦略的準備金」の創設に向けた野心的な法案を提出した直後に起きた。
フランスの提案は、今後7〜8年かけてビットコイン総供給量の2%に相当する約42万 BTCを蓄積することを目標としている。余剰電力を利用したビットコイン・マイニング、貯蓄プログラムの再配分、さらにはビットコインによる部分的な納税などを通じて、ビットコイン蓄積の資金を調達することになる。
フランスとドイツ両国の取り組みには大きな政治的ハードルが存在するものの、このタイミングは、ビットコインが金融主権のための手段として機能しうるという認識が欧州で広がっていることを示している。
もし、この流れが続けば、欧州は「ビットコインを保有するかどうか」を議論するのではなく、「誰が最初に保有するか」を競う局面に突入する可能性がある。