4月29日(米国時間)、映画監督のユージーン・ヤレッキ氏とテック起業家のジャック・ドーシー氏は「Bitcoin 2026」において、ヤレッキ監督によるジュリアン・アサンジ氏を題材にしたドキュメンタリー映画『60億ドルの男(原題:The Six Billion Dollar Man)』について対談し、この作品を一般公開するうえでビットコイン・コミュニティが果たしうる役割を語った。ふたりの議論は、検閲や監視から、サトシ・ナカモト、さらにはインターネットの本来の原則に至るまで、幅広い話題に及んだ。
ドーシー氏はオンラインでパネルディスカッションに参加したが、この対話の場の設定自体も意味をもっていた。ヤレッキ氏は聴衆に対し、自分が立っている場所の近くにあるカジノが、アサンジ氏がロンドンのエクアドル大使館に滞在中に彼を監視していた民間警備会社と関係があったと明かした。この事実は、同ドキュメンタリー映画が監視に関する物語の中心に据えているものだ。
ドーシー「ビットコインはゲートキーパーのいないオープンなネットワークを体現している」
ヤレッキ監督は、最初は資金援助を求めてドーシー氏のもとを訪れたと語った。カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、映画祭でも高い評価を得たにもかかわらず、大手のストリーミングプラットフォームで配信先が見つからなかったため、配給の支援が必要だったからだ。しかし、ドーシー氏は話の方向性を変えた。
小切手を切る代わりに、ドーシー氏はビットコイン・コミュニティが単なる資金源以上の存在であり、アサンジ氏が守ろうとしてきた原則と同じ価値観に基づいて築かれた人々の集合体であるとヤレッキ監督に伝えた。
「ビットコインは送金のためのオープンプロトコルだ。それはVisaやMastercard、銀行といったゲートキーパーを迂回する仕組みになっている」と、ドーシー氏は語った。
彼は、このコミュニティをアサンジ氏を英雄とみなす人々の集まりとして描写した。アサンジ氏は、情報は自由でオープンであるべきだという理念のために立ち上がった人物であり、その価値観はインターネット創成期の文化に根ざしていると説明した。
ドーシー氏は、2011年をその実証例として挙げた。米国政府の圧力のもとで金融機関がウィキリークスへの寄付チャネルを遮断した後、ビットコインが唯一ブロック不可能な決済手段として機能したのだ。
彼は、ウィキリークスが必要に迫られてビットコインを採用したことを、「このプロトコルの初期の歴史におけるもっとも重要な出来事のひとつ」と呼んだ。それは計画されたものではなく、国家の圧力下において即座に現実世界のユースケースを示したからだ。
さらに、ドーシー氏はアサンジ氏とビットコインの開発者であるサトシ・ナカモトとの間に明確な線を引いた。ドーシー氏によれば、ビットコインにおいてもっとも重要な点は、その創設者が姿を消したことである。彼はそれを「利他的な行為」と呼び、その結果、ネットワークは創設者不在となり、プロジェクトの中心にいるひとりの人物に圧力をかけることで影響を及ぼそうとする政府や機関からの干渉に対して耐性をもつようになったと説明した。
また、彼はアサンジ氏とエドワード・スノーデン氏を同じカテゴリーに位置付けた。つまり、彼らは自らが使用するテクノロジーを信頼し、自分自身を超えた大きな理念のために人生を賭け、その代償を払った人々だ。
一方、ヤレッキ監督はこの映画製作にはそれなりのリスクが伴ったと振り返った。ロシアでの撮影中、スタッフが監視され尾行されていると感じたという。そのようなプレッシャーは、製作過程にも影響を及ぼした。彼は、互いの立場を的確に理解し合い、相互に尊重し合っていたアサンジ氏とスノーデン氏の関係性は、このドキュメンタリー映画のなかでも特に印象的な要素のひとつだと語った。
60日以内にペイ・パー・ビューの視聴イベント開催
この映画の配信モデルは、プロジェクトのなかでももっとも異例な要素と言える。ドーシー氏は、従来の公開ルートに代わる手段として、世界規模の限定ペイ・パー・ビュー視聴イベントを提案した。thesixbilliondollarman.comでチケットを購入した人は、作品自体にクレジットとして名前が記載され、観客は単なる受動的な消費者ではなく、プロジェクトの参加者となる。
ヤレッキ監督はこれを、オープンな金融インフラのもとで組織されたコミュニティが、メディアのゲートキーパーたちが成し遂げられなかったこと、つまり「報道の自由」に関する映画を、それを観るべき人々に届けることができるかどうかを試す“実験”と位置付けた。
ドーシー氏は、このウェブサイトと視聴モデルがクラウドファンディングの手段となり、共通の目的のもとでコミュニティを結集させる方法を提供すると述べた。
パネルディスカッションでは、ヤレッキ監督はドキュメンタリーの未公開映像を披露。これまで公開されたことのない製作の舞台裏をとらえた映像を観客に直接観せた。
ヤレッキ監督とドーシー氏は、2011年にその意義を理解したビットコイン・コミュニティが、ストリーミング業界が扱わなかったこの作品を広く伝播してゆくことに賭けている。