ブロックチェーンは、IBMやインテルといった大手テクノロジー企業、BBVAやアメリカン・エキスプレスといった金融企業、さらにはトヨタやフォードといった自動車メーカーまで、幅広い分野の企業の関心を集める最新のバズワード(流行語)です。ブロックチェーン! ブロックチェーンへの投資、ブロックチェーン技術の活用、ブロックチェーンを用いた問題解決……。さまざまなモノ・コトがブロックチェーンに載せられています。
これは技術革新の新時代なのでしょうか? それとも、やがて消えゆく一過性の流行に過ぎないのでしょうか? いずれにしろ、「ブロックチェーンとは何か?」と問うてみる価値はありそうです。
ブロックチェーンの定義:
ブロックチェーンとは、取引のブロックが順番に並び、互いにリンクされたリストであり、ネットワーク上のコンピュータ・システムに分散して保管されるものです。従来のデータベースとは異なり、取引は「ブロック」にまとめられ、それらが連結されることで、改ざん不可能な情報記録システムが構築されます。ブロックの連なり、即ち「ブロックチェーン」というわけです。ブロックチェーンは、ビットコインを支える4つの基盤技術のひとつなのです。
ブロックチェーンの目的:
ブロックチェーンの目的は、分散化を実現し、ネットワークの制御権を特定の企業や団体(単一の主体)に委ねることなく、取引を検証できるようにすることです。これにより、改ざんや不正操作が不可能な情報記録システムが成立します。誰かを信用することなく情報の正当性を検証する方法。信頼を必要としないシステム、いわゆる「トラストレス・システム」として知られるものです。
ブロックチェーンの仕組み
ブロックチェーンは、一種のトリプル・エントリー・ブックキーピング(第三の記録方式)であり、銀行や決済機関のような中央集権的な組織に依存せずに取引を検証する仕組みを提供します。これは、誰も単独で変更することができない一方で、誰もがコピーを保持できるデジタル記録と考えることができます。銀行が個人の財務記録を一手に管理するのとは異なり、ブロックチェーンはこの責任を広範なネットワーク全体に分散します。そのため、単一の中央機関を信用するのではなく、分散型の共同システムに基づいて、透明な取引の検証と記録が行なわれます。これは、単一の管理者から共同検証メカニズムへの大きな変革といえます。

すべての取引はネットワーク内の参加者にブロードキャストされ、他の取引とともにグループ化されてブロックを形成します。このブロックは、特定のネットワーク参加者による検証プロセスを経ることになります。ビットコインの文脈では、これらの検証者は「マイナー(採掘者)」と呼ばれます。各ブロックには、一連の取引データが含まれるだけでなく、「ハッシュ」と呼ばれる固有のコードと、直前のブロックのハッシュも含まれています。この構造により、一度登録された取引は後続のブロック内のデータが変更されない限り改ざんできません。そのため、取引データを変更するには、ネットワークの大多数によるコンセンサス(合意形成)が必要となり、これがセキュリティを担保する仕組みとなっています。
ブロックチェーン略史
2008年10月31日、サトシ・ナカモト(ビットコインの仮名の創設者または創設グループ)は、ビットコインのホワイトペーパーを発表し、ビットコインおよびブロックチェーン技術の概念を詳細に説明しました。この概念は、1979年にラルフ・マークル(Ralph Merkle)が発表した博士論文「Secrecy, Authentication, and Public Key Systems(秘密性、認証、公開鍵システム)」まで遡るさまざまな技術や概念をもとに構築されたもので、そこでは「マークルツリー(Merkle Tree)」と呼ばれる技術が導入されていました。
1991年、スチュアート・ハーバー(Stuart Haber)とW・スコット・ストーネッタ(W. Scott Stornetta)は、デジタル文書のタイムスタンプ(timestamp)に関する論文を発表し、電子文書の日付の改ざんを防ぐ解決策を提案しました。その後、彼らはこの提案にマークルツリーを組み込んだ改良版を発表しました。
最初のデジタル通貨の開発者であるデイビッド・チャウム(David Chaum)は、1982年にブロックチェーンに類似したプロトコルを提案した論文を発表しました。この論文では、互いに不信感を抱くグループがコンピュータシステムを確立し、維持し、信頼できるようにするための金庫システムが記述されていました。彼の提案には、ビットコインのホワイトペーパーで説明されたブロックチェーンの要素がほとんど含まれていましたが、唯一欠けていたのが「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」でした。
1990年代半ば、インターネットの商業利用が拡大するにつれ、スパムメールが急増します。アダム・バック(Adam Back)は「ハッシュキャッシュ(Hashcash)」と呼ばれるPoWアルゴリズムを開発し、計算に一定の作業量を要する仕組みにすることで、コストのかからない大量送信を前提とするスパム業者のビジネスモデルを阻止しようとしました。ビットコイン・マイニングの重要な要素であるPoWを、他の多くの要素と組み合わせたことによって、ビットコインのホワイトペーパーでは、初めて改ざん不可能なブロックチェーンをデジタル通貨台帳として提案することが可能となりました。
現在、3万以上の暗号資産がさまざまなタイプのブロックチェーン上で稼働しており、それ以外にも暗号資産には使用されないパブリック型、プライベート型、コンソーシアム型ブロックチェーンが多数存在しています。ビットコイン誕生から15年以上が経過した現在、数千ものブロックチェーンが存在していることを考えると、この技術は生命を吹き込まれたように急速に普及し、その人気は主流へと急拡大しているようです。これまで、さまざまな暗号資産のブームとバブル崩壊(Boom-and-Bust)サイクルや、「一攫千金(成功)」から「転落(失敗)」といった物語が多くのメディアの注目を集めました。最初は暗号資産自体への高い関心でしたが、その後は基盤技術であるブロックチェーンに焦点が移りました。現在では、個人、中小企業、さらには大手多国籍企業までもがブロックチェーン技術を活用しており、ブロックチェーンを初期のインターネットに匹敵する破壊的技術革新とみなしています。彼らはこの技術を多くの用途で活かそうとしています。
ブロックチェーンを支える技術
- P2Pネットワークと分散型台帳:中央の仲介者を通さずに参加者が直接通信し、分散的にデータベースを共有・維持する仕組み。
- インフラストラクチャ:ノード、マイナー、冷却システムなど、ブロックチェーンネットワークを支えるハードウェアやシステム。
- ブロックとブロック時間:各データの塊(ブロック)には、固有の識別子(ハッシュ)が割り当てられ、前のブロックとリンクされます。
- 暗号技術:データの保護と取引の認証に使用される暗号技術。代表的なアルゴリズムには、ビットコインで使用されるSHA-256、より高度なセキュリティを提供するSHA-3、ライトコインなどで用いられる計算負荷の高いScryptなどがあります。
- 価値のトークン:ブロックチェーン上での所有権や価値をデジタル表現する仕組み。
- コンセンサスメカニズム:ノードが取引を検証し、ブロックチェーンに取り込むための合意形成方法。コンセンサスメカニズムは、ブロックチェーン設計においてもっとも重要な技術選択のひとつであるため、次章で詳しく解説します。
コンセンサスメカニズム
コンセンサスメカニズムとは、分散型コンピュータシステムがネットワークの状態や単一のデータ値について合意を形成するためのさまざまな手法を指します。これは、まったく知り合い関係にない参加者間でネットワークの信頼性を確保するために必要です。ブロックチェーン技術においてもっとも広く使用されているコンセンサスメカニズムは、「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」と「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」のふたつです。
プルーフ・オブ・ワーク(PoW)
PoWは、暗号学的証明の一種であり、ネットワーク内の参加者(検証者)に対して、ある主体(証明者)が計算リソースを費やしたことを示すための手法です。ビットコインのマイニングに使用されるこのメカニズムは、ブロックの順序を決定し、ネットワークの安全性を確保する役割を果たしています。
各ブロックは、前のブロックを参照することで、時間的な順序が形成されます。ブロック内のすべての取引は同時に行なわれたものとみなされ、ブロックに未登録の取引は「未確認」とされます。マイナーは未確認取引をブロックに整理し、それをネットワークに提案しますが、世界中のほかのマイナーも同様にブロックを提案します。このとき、どのブロックが採用されるのかを決めるためにPoWが必要となるのです。
有効なブロックには、特定の数学的問題の解答が含まれています。マイナーはブロックの内容とランダムな数値(ナンス)を組み合わせてハッシュ関数(SHA-256)に通し、出力値が設定された閾値以下になるまで試行錯誤を繰り返します。これは予測不可能な計算であるため、答えをみつける唯一の方法は膨大な数の試行を重ねることにあります。
現在のビットコインネットワークでは、1秒間に373エクサハッシュ(373京回の試行)が行なわれており、約10分ごとに新しいブロックが追加される。このPoWの仕組みにより、ビットコインのブロックチェーンは14年間にわたり何十億もの取引を安全に検証し、最も信頼性の高い分散型ネットワークとして機能し続けている。
本稿の執筆時点で、ビットコインネットワークでは1秒間に373エクサハッシュ(EH/s)が行なわれています。これは、ネットワーク全体が1秒間に373京(10の18乗)回の推測(ハッシュ計算)を行なっていることに相当します。この計算は、約10分ごとに次のブロックを解決し、マイニング報酬を得るための数学的競争に参加しているということです。この数をわかりやすく喩えると、もし宇宙が誕生した瞬間から1秒ずつ数え続けたとしても、373京秒を数え終えるのは西暦11兆9228億8178万5984年になってしまいます。つまり、それほど膨大な量の計算が、わずか1秒間に世界中のマイナーによって行なわれているということです。マイナーが正しい値をみつけて新しいブロックをチェーンの末端に追加すると、そのマイナーは必要な「作業(PoW)」を完了したことが証明されます。これにより、そのブロックが有効であることが確認され、報酬が与えられます。PoWコンセンサスメカニズムは、過去14年間にわたってビットコインブロックチェーン上で数十億件のトランザクションを正常に検証してきました。このメカニズムは、これまでに構築されたなかでもっとも安全な分散型のネットワークとして、その真正性と信頼性を維持し続けています。
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)
PoSは、多くのブロックチェーンネットワークで使用されるコンセンサスメカニズムであり、PoWの代替として開発されました。目的はPoWと同じであり、信頼関係のないネットワークにおいて合意を形成することです。ただし、PoSにはマイナーが存在しません。
その代わり、PoSネットワークにおいて取引の検証やブロックの作成にかかわるためには、ネットワーク内で一定のステーク(持分)を保有する必要があります。例えば、ネットワークの通貨やトークンをそのブロックチェーンに接続されたウォレットに一定量預けることが求められます。このプロセスは「ステーキング(staking)」として知られています。
取引ブロックが処理される際、ネットワークのプロトコルがバリデーター(検証者)を選出し、選ばれたバリデーターがブロック内の取引が正確であるかを検証します。承認されたブロックはブロックチェーンに追加されます。
その見返りとして、バリデーターは自分の貢献に対して暗号資産トークンのかたちで報酬を得ることができます。しかし、もしバリデーターが誤った情報を含むブロックを提案してしまった場合、ペナルティとしてステーキングしているトークンの一部を失うことになります。
PoSには、「デリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステーク(DPoS)」など、さまざまなバリエーションがあります。これらのバリエーションは各ブロックチェーンネットワークで異なる実装がなされていますが、基本的な仕組みは共通しています。
PoWやPoS以外にも、さまざまなコンセンサスアルゴリズムが存在します。
- プルーフ・オブ・キャパシティ(PoC):ノードがメモリ空間を共有し、より多くのメモリを有するノードが台帳維持の権利を得ます。
- プルーフ・オブ・アクティビティ(PoA):PoWとPoSの要素を組み合わせたハイブリッド方式。
- プルーフ・オブ・バーン(PoB):トークンを回収不能なウォレットに送信し、流通量を減らすことでネットワークへの参加権を得ます。
ブロックチェーンの特性
ブロックチェーン技術は、従来のデジタルシステムとは異なる独自の特徴をもつと高く評価されています。しかし、これらの特性がすべてのブロックチェーンで均等に発揮されるわけではない点に注意が必要です。ビットコインはこの特徴を維持している主要なブロックチェーンとして際立っています。特にビットコインはPoWメカニズムを採用しているため、検証プロセスにおいて競争を促進し、これらの特性を維持しやすいといえます。
- 分散化と透明性:ブロックチェーンの最大の魅力のひとつは、中央集権的な管理者が存在せず、取引が透明かつ改ざん不可能なかたちで記録されることにあります。分散化によって、特定の主体がネットワーク全体を支配することが防がれます。
- 不変性(イミュータビリティ):ブロックチェーンに記録された取引は、基本的に変更が不可能です。これは主にPoWの仕組みによって保証されており、大量の計算能力が必要となるため、過去のデータを改ざんすることは極めて困難です。過去のデータを変更するには、ネットワークの大半の計算能力を支配する必要があり、現実的には不可能に近いといえます。
- 検閲耐性:ブロックチェーンの大きな強みとして、取引が外部の干渉を受けずに処理される点が挙げられます。特にPoWを採用するビットコインは、長期間にわたってこの特性を維持している数少ないブロックチェーンです。
- 強制耐性:ブロックチェーンの分散型構造とエネルギー集約型のPoWの仕組みによって、外部の勢力がネットワークを支配したり、取引内容を操作したりすることが非常に難しい。
- 国境を越えた取引:ブロックチェーンは地理的な制約を受けず、世界中の誰もが参加できるプラットフォームを提供します。これは、金融サービスが届かない地域にとっても大きなメリットとなります。
- 中立性:ブロックチェーン上のすべての取引は平等に扱われ、送信者や受信者に関係なく、恣意的な優遇や差別が行なわれません。
- セキュリティ:ブロックチェーンシステムの基盤には強固なセキュリティがあります。特にPoWを採用するビットコインは、大量の計算能力を必要とするため、攻撃のコストが非常に高く、成功する可能性は低くなります。
- トラストレス・システム:従来の金融システムでは、取引の正当性を保証するために仲介者が必要でしたが、ブロックチェーンはその必要がありません。暗号技術とコンセンサスメカニズムによって、取引の信頼性が保証されるのです。
ブロックチェーンの種類
ブロックチェーンには、用途や管理方式に応じていくつかの異なるタイプが存在します。
- パブリック・ブロックチェーン:分散型を実現するために、パブリック・ブロックチェーンは完全にオープンな設計となっています。誰でも参加が可能であり、適切なハードウェアとインターネット接続があれば、ネットワーク内の取引や記録の検証に関与できます。ビットコインは代表的なパブリック・ブロックチェーンといえます。
- プライベート・ブロックチェーン:このブロックチェーンは分散化されておらず、場合によっては単一の組織が完全に管理することもあります。参加できるノードが制限されており、特定の組織やグループのみが利用可能なクローズドなネットワークとして運用されます。例えば、ウォルマートはサプライチェーンの課題を解決するために、DLT Labsが開発したプライベート・ブロックチェーンを使用しています。
- コンソーシアム・ブロックチェーン:組織のニーズに応じたハイブリッド型のブロックチェーンであり、複数の既知の参加者によって運営されます。取引の検証や送受信を行なうことができ、投票ベースのシステムを活用して高速な処理を実現します。各ノードは取引を記録することができますが、単独でブロックを追加することはできません。追加されたブロックは、別のノードによって検証されてはじめてブロックチェーンに組み込まれます。この仕組みにより、参加者間の協力と信頼が求められます。Tendermintはコンソーシアム・ブロックチェーンの一例です。
- パーミッションド・ブロックチェーン:このブロックチェーンでは、ネットワークへのアクセス権が制限されており、事前に許可を得た参加者のみが利用できます。さらに、特定のアクションを実行するための権限が細かく設定されることが多いです。パブリック・ブロックチェーンやプライベート・ブロックチェーンとは異なり、中央管理の要素を残しながらも、ブロックチェーンの利点を活用することが目的です。Hyperledgerは代表的なパーミッションド・ブロックチェーンです。
ブロックチェーンの活用例
ブロックチェーンは、第三者の仲介なしにデータを直接転送できるため、主に金融分野で活用されています。代表的な例として、ビットコインやその他の暗号資産、ステーブルコイン、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が挙げられます。
また、アイデンティティ管理にも活用されており、分散型デジタル識別子を用いることで、安全かつアクセスしやすいデジタルIDの提供が可能になっています。サプライチェーン管理では、ブロックチェーンを活用することで紙の書類管理を減らし、効率化やリアルタイムでの追跡を実現しています。さらに、不動産などの権利移転の分野でも利用が進められており、取引の透明性を高め、ペーパーレス化を促進する技術として期待されています。ゲーム業界では、「Play & Earn」モデルを支える技術としてブロックチェーンが活用されており、ゲーム内資産の真正な所有権を確保する仕組みが導入されています。
これらの用途に加え、ブロックチェーンはデータ共有、ドメイン管理、スマートコントラクト、電子投票、小売業のポイント管理、株式取引など、さまざまな分野で活用されています。すでに実装されているものもあれば、将来的に期待されているものもあります。
ブロックチェーンの課題
ブロックチェーン・トリレンマ
ブロックチェーン・トリレンマとは、ブロックチェーンネットワークが直面する根本的な課題であり、「スケーラビリティ(拡張性)」「分散性」「セキュリティ」の3つの要素のうち、同時にすべてを最適化することができないという問題を指します。
ビットコインはセキュリティと分散性を優先し、スケーラビリティについては「レイヤー2(Layer 2)ソリューション」と呼ばれる技術に依存しています。一方、多くのブロックチェーンはスケーラビリティを優先する傾向があり、その結果としてセキュリティが犠牲になることがあります。このようなトレードオフにより、攻撃への脆弱性、改ざん耐性の低下、所有権の喪失、中央集権化の進行といった問題が発生する可能性があります。

相互運用性(インターオペラビリティ)
ほとんどのブロックチェーンは互いに独立して機能し、直接的に情報や価値を交換することができません。相互運用性を向上させることを目的とするブロックチェーンも存在しますが、複雑なシステム同士を連携させることは容易ではありません。さらに、ブロックチェーンの平均寿命はわずか1.22年であり、GitHub上のブロックチェーンプロジェクトのうち、実際に積極的に開発が続けられているのは約8%に過ぎません。
データの整合性
「地図は現実ではない」という言葉が示すように、情報の正確性には限界があります。デジタルの世界においても、計算による処理が唯一の信頼できる現実との接点となります。オラクル(外部情報をブロックチェーンに入力する仕組み)を介してデータを記録する場合、どうしても主観や汚染のリスクが生じます。そのため、もっとも価値のあるブロックチェーンは、外部データを取り込まず、完全に閉じたシステムとして機能するものです。
プライバシーの問題
ブロックチェーンが中央集権的に管理されるようになると、プライバシーの問題が深刻化します。中央集権型のブロックチェーンでは、すべての取引が公開され、個人の財務取引やプライベートなデータが第三者によって追跡・監視される可能性が高まります。これにより、「ビッグブラザー(大監視社会)」やチェーン解析企業による監視が現実の脅威となります。
効率性の課題
ブロックチェーンはその革新的な可能性にもかかわらず、中央集権的な決済システムと比べて処理速度が劣ります。高頻度の取引を処理するシステムにおいては、この低速性がボトルネックとなる可能性があります。
システムの複雑性
スケーラビリティを重視するブロックチェーンは、システムが複雑になりがちです。イーサリアム(Ethereum)の共同創設者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)は、「PoWは物理法則に基づいているが、PoSは仮想的なシステムであり、独自の物理法則をもつシミュレーション宇宙のようなものだ」と述べています。このように、PoSベースのシステムは本質的に不安定であり、運用を維持するために継続的なコードのアップデートやハードフォークが必要となるのです。
システムが複雑化するほど、技術的な障害や中央集権化のリスクも高まります。イーサリアムのリード開発者であるペーター・シラジー(Péter Szilágyi)は、「プロトコルが簡素化されなければ、このシステムは持続できない」と警告しています。
ビットコイン vs. ブロックチェーン
ビットコインは最初のデジタル通貨ではありませんが、信頼を必要としない最初のデジタル通貨です。この仕組みは、ビットコインを実現するための数々の要素によって成り立っており、その多くは数十年前から存在していた技術です。ビットコインは、それら数十年にわたる取り組みと個々の要素が集大成された結果として、現在の形式になっているのです。ビットコインは、単なるコードやコミュニティ、ノード、マイナー、ブロックサイズ、コンセンサスアルゴリズム、歴史のいずれかだけではなく、それらすべてが組み合わさったものなのです。実際、サトシ・ナカモトはビットコインのコードを公開する前に、データの構造を「タイムチェーン(Timechain)」と呼んでいました。のちに人々が「ブロックチェーン」と呼び始めたのです。
ブロックチェーンの目的は、中央の信頼できる機関や取引相手に依存することなく、取引を検証できるようにすることです。そのため、ブロックチェーンをデータ記録の手法として採用する唯一の合理的な理由は、それを「金融台帳」として活用することにあります。
ブロックチェーンは大きくふたつのカテゴリーに分類できます。「価値のトークンを持たないブロックチェーン」と「価値のトークンを持つブロックチェーン」です。
価値のトークンを持たないブロックチェーン
価値のトークンを持たないブロックチェーンは通常、プライベート・ブロックチェーンやパーミッションド・ブロックチェーンのように中央管理型の形態をとります。問題は、これがブロックチェーンの本来の目的である分散化と矛盾している点です。このような構造をとる理由としては、単に「ブロックチェーン」というバズワードを利用するためと考えられます。実際、中央管理型のデータベースを使用するほうが、はるかに効率的です。
また、パブリック・ブロックチェーンであっても、価値のトークンを持たない場合、セキュリティの問題に直面します。というのも、ネットワークの健全な運営を維持するためには、経済的なインセンティブが必要不可欠だからです。
価値のトークンを持つブロックチェーン
ブロックチェーンが分散化を達成するためには、ネットワークのセキュリティを確保するための価値のトークンが不可欠です。つまり、信頼のない環境で取引を検証するためには、ネットワークの制御権を集中させることなく、そのプロセスを分散化する必要があります。
この検証プロセスを分散化する最良の方法は、「競争」に依存するコンセンサス・アルゴリズムを採用することです。競争を成立させるためには、「リスク」と「報酬」が必要となります。報酬が意味をもつためには、マイナーやバリデーターが獲得を目指す「価値のある何か(つまりトークン)」が必要であり、それが正直な行動を促すこととなります。
もし価値のトークンがなければ、競争の前提が失われ、競争がなければセキュリティが成立しません。セキュリティがなければ、取引の検証を中央集権的に管理する必要が生じ、それは結局のところ、ネットワークの参加者同士が信頼を前提とすることになってしまいます。そうなると、分散化を実現できず、ブロックチェーンを使う意味がなくなり、単なる中央管理型のデータベースのほうが効率的となってしまいます。
長期的に生存できるブロックチェーンには、価値のトークンが不可欠です。なぜなら、価値のトークンを持たないブロックチェーンは、セキュリティの問題によって破綻する運命にあるからです。したがって、すべてのブロックチェーンは「お金」として競争しているといえます。そして、すべての貨幣はその特性によってネットワーク効果が働き、もっとも優れたものへと収束してゆきます。
結論として、その競争においてビットコインはすでに勝者となっているのです。
よくある質問(FAQ)
ブロックチェーンと暗号資産は異なるのか?
はい。ブロックチェーンは暗号資産を支える基盤技術であり、暗号資産はブロックチェーン上で動作するデジタル資産やトークンです。
データベースとブロックチェーンの違いは?
データベースは中央集権的なデータストレージを使用しますが、ブロックチェーンは分散型のデータストレージを採用しています。データベースは「テーブル」構造をもつのに対して、ブロックチェーンは「ブロック」単位でデータを保存します。また、データベースは管理者がデータを変更できますが、ブロックチェーンではデータが改ざん不可能です。
ブロックチェーンは銀行に成り代わるのか?
ブロックチェーンは銀行業務を革新する可能性がありますが、完全に置き換わることは考えにくいでしょう。むしろ、多くの銀行がブロックチェーン技術を導入し、サービスの向上を図っています。
ブロックチェーンはクラウドコンピューティングを代替するのか?
いいえ。ブロックチェーンとクラウドコンピューティングは異なる目的で使用されます。ただし、データのセキュリティや透明性の面で補完関係にあります。
ブロックチェーンはハッキングされる可能性があるのか?
ブロックチェーンは分散型で暗号技術を活用しているため高いセキュリティを備えますが、完全に無敵なわけではありません。