ストラテジー社(MSTR)は、優先証券の配当資金を賄うため3,588BTCを2億1,600万ドルで売却したと、2026年7月6日付のForm 8-Kで開示した。この売却は同社史上最大のビットコイン処分であり、配当義務がトレジャリー運営を左右する状況が、これまでで最も明確に表れた。
会長のマイケル・セイラー氏はこの取引についてソーシャルメディアで投稿した。7月5日時点で、同社は843,775BTCの準備金と25.5億ドルの現金を保有していた。セイラー氏によれば、売却代金は4つの優先証券の第2四半期配当と、5つ目の証券の6月分全額に充てられたという。
今回開示された売却は、STRF・STRE・STRK・STRDの四半期配当に充当されたほか、STRCの月次配当にも充てられた。これらの証券は、ストラテジーが「デジタル・クレジット事業」と位置付ける事業の中核を成す。
各証券はそれぞれ異なる配当構造を持つ。最上位に位置するSTRFは、額面100ドルに対し年10%の固定配当を支払う。STREはユーロ建てで、額面100ユーロに対し年10%を支払う。
STRKは8%を支払い、株価が1,000ドルに達すると普通株式に転換される。STRDは10%を支払うが非累積型であり、取締役会が配当の見送りを選択できる余地を残す。
STRCはこれらの中間に位置し、額面100ドル近辺での取引を維持するよう調整される変動利率、年12%前後を支払う。取締役会は最近、STRCの配当を月2回払いに変更した。
JUST IN: Michael Saylor announces Strategy sold 3,588 Bitcoin for $216 million to fund dividends for their digital credit securities 👀 pic.twitter.com/QQl2Jih71A
— Bitcoin Magazine (@BitcoinMagazine) July 6, 2026
なお、これらの優先証券はいずれも同社の保有するビットコインを裏付けとしていない。各証券が持つのは残余資産に対する請求権のみである。
ストラテジーはなぜ売るのか
ストラテジーは企業として世界最大のビットコイン保有者だ。同社は株式や社債の発行を重ねることでトレジャリーを築いてきた。保有するビットコインの取得原価は総額で639億ドル前後、1枚当たりではおよそ75,700ドルに達する。
このモデルは、膨らみ続ける現金負担を生んだ。優先証券の配当はビットコインではなく現金で支払われる。ストラテジーのソフトウェア事業は、それを賄うだけの収益を生み出していない。
グレースケールのリサーチ責任者ザック・パンドル氏は、年間の配当負担を15億ドルと試算する。現金準備が不足すれば、同社は追加の資金調達を行うか、ビットコインを売却するほかない。
セイラー氏は長年、「売却は決してしない」と公言してきた。その姿勢は2026年5月下旬に終わりを迎えた。ストラテジーは優先証券の配当資金として32BTC、約250万ドル相当を売却した。これは2022年以来初めての処分だった。
この動きは自ら掲げてきた誓約を破るものであり、大きな注目を集めた。セイラー氏はこれを、ビットコインからの後退ではなく優先証券保有者へのコミットメントを示すシグナルだと位置づけた。「われわれの目標は、STRCを世界最高のクレジット商品にすることだ」。当時、セイラー氏はそう述べている。
7月の売却は、その最初の一歩をはるかに上回る規模だ。3,588BTC、2億1,600万ドルという金額は、5月の売却のおよそ100倍に達する。
売りながら買う
ストラテジーは売却を続ける一方で、ビットコインの積み増しも継続している。5月の売却の後には1,550BTC、1億130万ドル相当を購入しており、これは売却規模のおよそ50倍にあたる。その後も、5月には約20億ドル、4月には約25.4億ドル規模の購入を実施している。
こうしたパターンからは、保有するビットコインを取り崩して配当を賄いながら、同時に新規の資金調達によって保有量を積み増していく同社の姿が浮かび上がる。
このアプローチは市場へのアクセスの有無に左右される。ストラテジーは新規の優先株や普通株を発行して現金を調達できる。市場環境が良好であれば大規模な売却は避けられるが、資金調達環境が厳しくなれば、ビットコインが資金源となる。
7月の処分は、この四半期において後者の状況が続いていたことを示唆している。
セイラー氏は米国時間の前夜、X上で「ビットコインはデジタルエネルギーである」と投稿し、ストラテジーのオレンジ色のドットで示されるビットコイン取得チャートを添えた。これを受け、新たなビットコイン購入を開示するSEC提出書類が近く出るとの見方が広がった。トレーダーの間では、こうした週末の投稿はストラテジーのビットコイン積み増し発表に先立つ定番のシグナルとして認識されるようになっている。しかし今回発表されたのは、購入ではなく売却だった。
執筆時点で、ストラテジー株は米国市場のプレマーケットで2%下落しており、ビットコイン価格も62,000ドルを下回っている。