ビットコイン価格は過去1週間で5.5%超下落し、7万7,000ドル超から木曜日には約7万2,600ドルへと後退した。リスク回避姿勢の強まりを受けた動きで、5月初旬の8万2,000ドル超からの調整が続いている。スポットETFからの大規模な資金流出と米国・イラン間の緊張の高まりが重なり、週間では6〜7%下落している。
BlackRockのiShares Bitcoin Trust(IBIT)は水曜日に5億2,784万ドルの純流出を記録した。2024年1月の設定来で2番目に大きい単日流出額で、過去最高との差は約50万ドルにとどまった。米国のスポットビットコインETF全体では同日、7億3,343万ドルの純流出となり、1月下旬以来最大の合計日次流出額を記録した。
ただし、数字の文脈は重要だ。IBITの年初来累積フローは依然として20億ドルを超えており、設定来の累積純流入額は640億ドルに達している。全ETFの上位2%に相当する規模だ。水曜日の5億2,800万ドルの流出は、その総額の1%にも満たない。
この流出は孤立した動きではなかった。ビットコイン価格は木曜日のアジア時間の取引中に7万3,000ドルを割り込み、24時間で3.4%下落して7万2,978ドルをつけた。直接的な引き金となったのは、ホルムズ海峡付近のイラン軍施設への米軍の新たな空爆で、市場でいったん後退しつつあった地政学リスクが再燃した形だ。
投資家がETF株式を換金するなか、BlackRockをはじめとする発行体は償還に対応するため保有ビットコインの売却を迫られ、売りと流出が相互に影響し合う展開となった。
IBITのほか、GrayscaleのGBTCが1億476万ドル、FidelityのFBTCが6,030万ドルの流出を同日に記録した。Bitcoin Magazine Proのデータによると、Morgan StanleyのMSBTが430万ドルのプラスフローを示した唯一のスポットビットコインETFだった。
大型ブロックトレードの影響
水曜日の流出額を膨らませた要因のひとつが、火曜日に実施された取引だ。ある投資家が12億9,000万ドル相当のIBIT株式を、ダークプール経由のブロックトレードで売却した。市場への影響を抑えながら大口取引を成立させるための相対取引で、取引時のビットコイン価格は約7万8,000ドルだった。
BlackRockのIBITで、約$1.29B規模のダークプール取引が執行されたとCoinDeskが報道。
過去2週間の米現物BTC ETF純流出は-$2.26Bに達しています。
一方で、BTC価格は取引後も大きく崩れず推移。
ETF後の市場構造をどう見るか、改めて観察される局面になっています。 pic.twitter.com/y1UMxYs6Wh— Bitcoin Magazine Japan (@BitcoinMagJapan) May 28, 2026
BloombergのシニアETFアナリスト、エリック・バルチュナス氏がこの取引を指摘。2,920万株のIBIT株が動き、火曜日のビットコインETF合計出来高を44億ドル(4月17日以来の高水準)に押し上げたと述べた。
ダークプールでの売却は純流出とは異なる。買い手が取引の反対側を引き受けるため、ファンド自体の償還が直ちに発生するわけではない。IBITの火曜日の実際の純流出は1億9,244万ドルで、大きな数字ではあるがブロックトレードとは別の動きだ。ただし両事象を合わせてみると、機関投資家が直接償還または流通市場での売却を通じてビットコインエクスポージャーを縮小しているとの見方が強まる。
この流出データは5月を通じて積み重なってきたトレンドを映している。年初来のETF純購入額は約4,500BTCまで細り、3月・4月に見られた継続的な買いから5月は純流出へ転じた。
ビットコイン価格は5月6日の8万2,000ドル超から7万3,000ドル割れへと下落し、2025年の強気相場を牽引してきたETFチャネルは、ここ数週間は資金流出側へ傾いている。
通貨価値希薄化ヘッジの冷却
JPモルガンは水曜日、パンデミック期に台頭した「通貨価値の希薄化をヘッジするトレード」――ビットコインと金が通貨の目減りに対するヘッジとして機能するとの論拠――が冷却しつつあるとの見方を示した。
同行は、両資産における機関投資家の先物ポジションとETF流出が、実現前の米国・イラン和解を市場が先取りする動きを反映しているとの見解を示した。
IBITはこのサイクルで長期的な流出局面を経験してきたが、マクロ環境が改善するたびに資金は戻ってきた。今回のエピソードが同様の経緯をたどるかどうかは、中東情勢の推移と、暗号資産から株式への資金移動が短期的な動きにとどまるか、あるいは構造的なものとなるかにかかっている。
執筆時点のビットコイン価格は7万2,800ドル付近で推移している。