機関投資家向けの暗号資産カストディとステーブルコインのインフラを手がけるFireblocksは、Visaが同社を約25億ドルで買収する終盤の協議に入っているとの報道を否定した。
同社は米国時間の木曜日、The Blockに対し「VisaによるFireblocksの買収の可能性をめぐるうわさは把握している。当社にとっては初耳であり、現時点では事実ではない」と述べた。
この否定は、Axiosが複数の情報筋の話として、両社が合意に近づいていると報じた数時間後に出た。実現していれば、Visaにとってステーブルコイン分野で初の買収となり、暗号資産の歴史上でも最大級の案件の一つとなるはずだった。これを上回る案件には、2025年のコインベースによるデリビットの29億ドルでの買収と、ネイバーファイナンシャルによるアップビット運営会社ドゥナムの103億ドル規模の買収(手続き中)がある。
報じられた価格は、Fireblocksが2022年1月に付けた80億ドルの評価額から大幅に引き下げられた水準となるはずだった。同社は当時、ベンチャー投資サイクルのピークにシリーズEラウンドで5億5,000万ドルを調達していた。同社は2018年、イスラエルのサイバーセキュリティ業界で経験を積んだマイケル・シャウロフ氏、パベル・ベレンゴルツ氏、イダン・オフラット氏の3人が創業した。銀行や取引所、フィンテック企業がデジタル資産を保有・移転するために使う基盤を提供している。
顧客にはBNYメロン、Worldpay、Revolut、ギャラクシーが名を連ねる。同社によれば、150を超えるブロックチェーンで数兆ドル規模の送金を保護してきたという。
Fireblocksは、FISの機関投資家向けビットコイン取引の基盤を担い、BNPパリバのデジタル資産カストディを支えているほか、ビットコインのサイドチェーン・プロジェクトであるBotanixのフェデレーションの創設メンバーの1社でもある。
暗号資産を めぐる 陣取り合戦
協議の実態がどうであれ、この報道は受け入れられやすい土壌に落ちた。既存の決済大手は2026年に入ってから、ステーブルコインや暗号資産の決済基盤をゼロから自前で構築するのではなく、それを担う企業を買収したり、取り込もうと接近したりしてきた。
Mastercardは、Zerohashとの買収協議が決裂した後、3月にBVNKを最大18億ドルで買収することで合意し、8月に買収を完了した。その過程で、ニューヨーク州のビットライセンスも取得している。
一方のZerohashは、米国の連邦信託銀行(ナショナル・トラスト・バンク)免許の取得を目指している。
Visaは8月にZerohashと提携し、Visa Directにステーブルコインによる資金の拠出と払い出しの機能を加えた。9月には、同社のステーブルコイン決済額が年換算ベースで200億ドルを超え、前年の水準の15倍超に達したと明らかにした。
両カードネットワークはいずれも、ドル建てステーブルコイン「Open USD」を支える140社超の企業連合に加わった。Open USDは、3,000億ドル規模の市場がもたらす経済的利益を、テザーとサークル以外にも行き渡らせることを狙って設計されている。
Fireblocksは2025年9月、サークル、Bridge、Zerohash、Yellow Cardなど40社超が参加する独自のステーブルコイン決済ネットワークを立ち上げた。今年に入ってからは、ネオバンク向けの決済受け入れツールと、AIエージェントを対象とした決済(セトルメント)スイートも投入している。





