Home政治骨太方針2026に「オンチェーン金融の推進」を初明記 政府が描く決済インフラとは

骨太方針2026に「オンチェーン金融の推進」を初明記 政府が描く決済インフラとは

政府は7月21日に閣議決定した「骨太方針2026」で、「オンチェーン金融の推進」を初めて明記した。対象はトークン化預金やステーブルコインを活用し、決済と商流・物流データを連動させる金融インフラである。ビットコインや暗号資産ETF、税制変更を直接扱った方針ではない。

骨太方針に初めて入った「オンチェーン金融」

該当箇所は第2章の(成長を支える資金供給の促進)に置かれた一文で、アセットオーナーの機能向上、家計の安定的な資産形成促進と並べて「オンチェーン金融の推進を図る」と記された。定義は脚注に委ねられ、本文でこの語が現れるのはここだけである。

ブロックチェーンやWeb3に関する記述は、2022年以降の骨太方針にも存在した。ただし置かれていたのはNFTやDAO、分散型のデジタル社会といったデジタル政策の項目で、2025年にはDXとデジタル・ガバメントを扱う段落に収まっていた。2026年に変わったのは、オンチェーン金融が資産運用立国と成長投資の資金供給を扱う文脈に置かれたことである。ブロックチェーン自体の初登場ではなく、「オンチェーン金融」という語と、その政策上の位置付けが新しい。もっとも、記載位置の移動がそのまま政策的な格上げを意味するとまでは言えない。具体策を示した金融戦略では、後述のとおり金融インフラへの投資として位置付けられている。

対象は決済とデータをつなぐ金融インフラ

政府はオンチェーン金融を、トークン化預金やステーブルコイン等による資金決済が、商流・物流等のデータ管理とプログラムによって連動・一体化される金融と定義した。活用例として挙げたのは製造業の受発注や納品に関するデータ管理、貿易実務の書類管理、証券決済で、いずれも、決済と業務データの連動によって効率化が見込まれる領域である。

想定されている前提はAIの普及にある。同日、内閣官房が公表した「成長投資を促進するための金融戦略」は、AIエージェントが自律的に経済活動を遂行する「エージェンティックコマース」の時代には商取引が言語や時差に関係なく行われ、決済もこれに対応することが求められると整理する。国内の決済基盤が対応できなければ「海外決済基盤への依存が強まり、我が国の競争力低下や経済安全保障上のリスクを高めるおそれがある」とも記した。求められる要素として挙げたのは、24時間365日の連続稼働、商流・物流とつながるプログラマビリティ、決済基盤としての安定性・安全性の3つで、既存の金融インフラとの「ベストミックス」が鍵になるとしている。置き換えではなく併存が前提に置かれている。

具体策は同日公表の金融戦略に

骨太方針が参照する金融戦略では、オンチェーン金融が「金融システムを支えるインフラへの投資」の章に置かれた。

具体化の中心的な役割を担うのは金融庁である。2026年夏に「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」を立ち上げ、2027年初に中間整理をまとめる。民間の資金決済全体について主導的役割を果たすため、金融庁自身の組織拡充も検討する。並行して、日本銀行が日銀当座預金のオンチェーン対応について年内に論点整理と道筋をまとめ、財務省が国債等のトークン化と元利払いのオンチェーン決済を、デジタル庁がステーブルコインやトークン化預金の公金給付への活用可能性を検討する。トークン化預金とステーブルコインの実装・普及に向けた環境整備は、2026年度末を目途に結論を得るとされた施策群に含まれる。

金融庁ではすでに、複数銀行によるステーブルコインの共同発行、有価証券の移転とステーブルコイン決済の連動、トークン化預金の銀行間決済を対象とした実証が、決済高度化プロジェクト(PIP)を通じて進んでいる。一方、DeFiやウォレット提供業者、資産のトークン化は、具体的な制度導入ではなく今後の検討対象にとどまる。

国際面では、円建てステーブルコインが海外で用いられるために他通貨建てステーブルコインとの互換性を確保することを課題に挙げ、価値の保全や償還ルールをめぐる各国当局間の対話と、アジアとの官民政策対話の枠組み創設を掲げた。特定国の制度との比較ではなく、相互運用性の確保に軸足がある。

予算面では、骨太方針が新設する『「強く豊かな日本」投資枠』の対象として「金融(オンチェーン決済システムに関するものを含む)」が名指しされた。ただし戦略はその活用を「検討していく」と記すにとどまり、予算措置が決まったわけではない。

こうした論点は、5月に自民党のプロジェクトチームがまとめた提言に先行して示されていた。日銀当座預金のオンチェーン対応、ステーブルコインの行政利用、アジアとの政策対話などが重なる。ただし、政府文書が同提言を直接の根拠として参照しているわけではない。

金商法改正とは別の政策ライン

6日前の7月15日には、改正金融商品取引法が参議院本会議で成立している。暗号資産の売買などを金融商品取引法の規制対象とし、情報公表制度やインサイダー取引規制を整備するものだ。資金決済法からは暗号資産取引に関する規定が削除される一方、ステーブルコイン(電子決済手段)に関する規制は同法に残る。

二つの決定は時期が近いが、直接の相互参照はない。骨太方針と金融戦略が扱うのはトークン化預金やステーブルコインを用いた決済インフラであり、改正法が扱うのは投資対象としての暗号資産の監督である。同じ月に決まったという時系列の近さは、政策上の因果関係を示すものではない。

ビットコイン、ETF、税制変更ではない

骨太方針と金融戦略には、ビットコイン、暗号資産ETF、税制変更に関する記述はない。今回の方針は、暗号資産ETFの承認や税制の変更を決定するものでもない。

今回の政府文書が具体的な決済手段として挙げたのは、トークン化預金と、資金決済法上の電子決済手段に位置付けられるステーブルコインである。いずれも銀行や発行者といった特定の主体を前提とする仕組みであり、発行者も償還請求先も持たないビットコインとは制度上の性質が異なる。共通するのは、ブロックチェーン技術を利用し得るという広い技術的基盤にとどまる。

今回決まったのは制度変更ではなく、オンチェーン金融を成長戦略に組み込む政策方針である。次の焦点は、2026年夏に予定される金融庁のフォーラムと、2027年初の中間整理で、トークン化預金やステーブルコインの実装方針がどこまで具体化されるかにある。令和9年度予算の編成過程では、オンチェーン決済システムが新設の投資枠に実際に載るかどうかも見えてくる。

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  • Bitcoin Magazine Japan

    Bitcoin Magazine Japan編集部。2012年創刊のBitcoin Magazineの日本版として、ビットコインをめぐる国内外のニュース、市場、政策、テクノロジーを取材・発信する。海外版の翻訳記事に加え、日本独自の解説や分析を通じて、変化するビットコインの現在地を伝えている。

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